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2016.02.16

「まちの保育園」がめざす”理想の保育園”とは?


小竹向原園ギャラリー

写真提供:まちの保育園

子どもだけじゃない! 大人も輝く保育園の新しいカタチ

~まちの保育園 松本理寿輝(りずき)さんインタビュー~

地域と子どもという視点を中心に新たな取り組みを行っている「まちの保育園」。

前回は、その特徴的な取り組みのいくつかをご紹介しました。ではそうした「まちの保育園」の根幹にある理念は一体どういうものなのでしょう?

引き続き、代表の松本理寿輝さんに語っていただきました。

「三つ子の魂百まで」は脳科学的に正しかった!

0~6歳までの生育環境が大事だということは、昔から語られてきたことでもあります。たとえば日本では『三つ子の魂百まで』ということわざが古くから伝えられていますが、世界各地にも似たような言葉がたくさんあります。近年、その言葉の意味が、脳科学的にみてもそうらしいということがわかってきたようです」と松本さん。

また、ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者でシカゴ大学教授のジェームズ・ヘックマンの研究などによれば、就学前の幼少期の教育が、その後の人生に学力以外の面でも大きな影響を与えることが明らかになりました。

そうした背景などから、未就学時の子どもの教育が、今改めて世界的に注目されています。

「その時期の子どもたちが育つ上で重要なことの1つは、基本的信頼関係。子どもがみんなから愛され、成長を喜ばれながら、信頼関係を築いて育っていくということです。その上で、いかに多様な人格と出会うかということが大事になってきます」

子どもは、出会った人びとの持っているものを全身感覚で見事に吸収していくといいます。

考える癖や行動、表情、喜怒哀楽や好き嫌いまで、あらゆることを敏感に感じ取ることができる

子どもはそうやって、その人が背景として持っている社会モデルを学んでいくといわれています。

脳科学の分野では、脳の形成がされる6歳までの時期に、そうした社会モデルをいかに培っているかどうかが、その後の脳の成長にとって大事だともいわれているそうです。

「そうしたさまざまな研究成果も対話のテーマとしながら、『まちの保育園』の教育理念は育まれています。子どもたちには、いろいろな考えやアイデア、人格、才能を持っている人との出会いの中で、みんなに喜ばれながら育ってほしいというところが第一にあって。それを実現・実践するために、地域ぐるみの保育をやっていこうと考えました」

理想の保育を考え、たどり着いた“まちぐるみの保育”

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松本さんが「まちの保育園」の構想を持ち始めた出発点は、松本さんの学生時代にまでさかのぼります。

乳幼児教育について興味を持った松本さんは、自分が理想とする子どもの環境について考え、一からアイデアを組み立てていったそうです。

「まず子どもたちの生育環境について調査をしました。そのときに都市部で顕著だったのが、家庭と保育園、あるいは幼稚園との往復になっている子どもが多く、出会う人が限られてしまいがちであるといることでした。

昔なら、隣近所の付き合いや地域との関わりがあったと思うんですが、そういったことがだんだん乏しくなってきている現状があって。

また、保育園ではおもに女性職員が従事していることが多く、さらに家庭ではお母さんが育児の中心になっている。

日本の男性の育児参加時間が、現状は少し改善されてきて、1時間近くなってきているんですけども、私が調べた当時は25分だったんです。でも、今も諸外国に比べると著しく短いんですよね。日本の育児は女性によって支えられているわけです。」

そこで松本さんは、今よりも一層多様化していく社会を経験することになる子どもたちに、人との出会いはもとより、さまざまな社会の面白さや文化に出会ってほしいと考えました

「そういうことを実現する保育園って、どんな形態なんだろうと考えていて、こういうことなんじゃないのかなあっていうのが見つかったんですよね。そこで“まちぐるみの保育”というひとつのキーワードを思いついたんです」

「まちぐるみ」という部分は、既存の保育園がなかなか取り組めていなかったことでもあります。

その理由として2つのことがあるのではないかと松本さんは推測しています。

ひとつは、地域交流が希薄化していることについてあまり意識がされていないこと。昔は改めて意識せずとも、自然に地域交流が存在していたということもあります。

もうひとつは、セキュリティの問題です。2001年、大阪教育大学附属池田小学校で発生した凄惨な事件以降、学校や福祉施設は安心・安全を第一にセキュリティを厳しくしてきました。いざ地域の交流を豊かにしていこうとしても、いかに安全を確保するかということが重要な命題になります。

「そうした理由から、私たちは安心や安全を確保しながら、いかに地域やまちに対して開いていくかということを1つのテーマにして、コンセプトや保育園の空間設計、実際の保育について考えを磨いていきました」

保育園の本質的な経営のために必要なこととは?

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2011年4月に最初の園である「まちの保育園 小竹向原」が東京都練馬の地に開園。

その後、2012年12月に「まちの保育園 六本木」、2014年10月に「まちの保育園 吉祥寺」が開園し、現在は3園とも認可園として運営されています。

保育業界に新規参入し、わずか5年の間に3園を開園し、都内でも有名な人気保育園として認知されるなど、はたから見ればとても順調に進んでいるように思えますが、その道のりは決して平坦ではなかったそう。

「認可あるいは東京都の認証保育園の運営主体となる法人は、保育園を現時点で運営しているかどうかが問われるんです。

ということは、新設の法人が新規参入することは本当に難しい。でも、いろいろな縁や運があって、東京都の認証保育所という仕組みでまず小竹向原園を開園することができました。

実際に開園してみると、私たちが考える保育環境を維持していくのは、予算面も含めてとても大変なことだということにあらためて気づきました

でも、質の確保という意味で、なるべく施設規模はこじんまりしたかたちでやりたい。そこで、3園の認可保育所という構想を思いつきました。これで量と質のバランスが取れるぞというのが見えてきたんです」

松本さんはまた「直営する保育園の数はあまり多くしたくない」とも。

その理由として、松本さん自身が、園児1人1人の成長を純粋に喜びとして感じていたい、それがわからなくなってしまうほど規模を大きくすると、保育園としての本質的な経営ができないのではないかと考えたからだそう。

「なるべく子どもや先生たちと、あるいは保護者の人たちと近い距離でいたいんです。

みんなが今どういう気持ちで、どんなことを喜んでいて、どんなことが大変だと思っているか…そういうことをきめ細やかに感じ取って、一緒に共有体験をしていかないといけないと思っていて。

もっと根源的なとこで言えば、私がそもそも子どもが好きだし、こういう環境を作りたいという夢を持ってやってきているので、事業規模を大きくすることよりも、より豊かな環境を作るというほうに興味があります」

「まちの保育園」3園の構想を実行していく中で、「まちの保育園」の保育に興味を持ち、実践してみたいという教育者や保育園の声がちらほら聞かれるようになりました。

そこで、松本さんは「まちの保育園」と同じ理念で保育を深めるパートナーを増やしていこうと考えたそうです。

松本さんはそうしたパートナーシップを“アライアンス”と呼んでいます。

?“アライアンス”で、よりよい保育のあり方を深めていく

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「たとえば一保育者が子どもをとらえるとき、その保育者が見た一面しか見えていないことがあります。でも、その子にはもしかしたら別の大きな可能性があるかもしれない。それは、ほかの人がその子を見つめることによって、見出せたりすることもあるわけですよね。

私たちの考える『まちの保育園』の理念についても同じことが言えると思うんです。この理念を別の法人が見つめて、実践をしていくと、また違った別の可能性が見えてくるかもしれない」

そうした学び合いのネットワークを広げていき、自分たちの考えや理念もさらに深めていきたいという思いから“アライアンス”という考え方が生まれたといいます。

「これは『私たちだからできる』というものではなくて、誰もが真似できるものにしていきたいんです。特殊なものなのではなくて、この考え方を標準化していきたいと考えています」

でも、ここでママとして湧いてくるのが、「まちの保育園」に通っている子たちや、アライアンス関係にある園の子たちはよいとして、今うちの子が入っている園でそれを取り入れてもらえるかどうかはわからないし…という気持ち。

では、私たちワーママは、子どもの教育環境にどんなふうに関わっていけるでしょうか。

次回は松本さんにそのあたりのお話をうかがいます!

 

本宮丈子

本宮丈子

ライター/エディター

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