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2017.08.19

低体重児のための母子手帳が発行?増えている「低体重児」、その現状とは?


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低体重児のための母子手帳

低出生体重児のための母子手帳 18年春改訂、発行へ 静岡県」というニュースが8月1日に静岡新聞より報じられました。

この記事によると、2018年3月に静岡県が低体重児のための母子手帳を改訂・発行することになったとのこと。元になっているのは、静岡市の母親団体「ポコアポコ」(小林さとみ代表)が2011年に作製した「リトルベビーハンドブック」。低出生体重児と母親のために作られており、低出生体重児用の成長記録欄があるほか、県立こども病院の医師や理学療法士など専門家による解説、先輩ママたちの体験談がまとめられています。

このハンドブックをベースにして、低出生体重児向けの成長曲線や医療機関側の記入欄なども設け、従来の母子手帳と併用して使うものになるようです。製作・発行は5000部です。

さて、従来の母子手帳は、標準値以下の体重で生まれた子どもの成長は記録しづらい形になっているとのことでしたので、早速確認してみたところ、グラフは体重2kg~、身長40cm~となっていました。

記録しづらいというよりも、むしろ「できない」が正解ですね。ここの書き込もうとするたびに、「私のせいでこんなに小さく生まれてしまった」「ウチの子は普通じゃないんだ」と思ってしまっても不思議はありません。

きっと、首の座りや寝返りなど、「この月齢になったらできること」という成長面も違ってくるでしょうし、退院する時期も異なるため予防接種のスケジュールも変わってくるでしょう。

実際、「リトルベビーハンドブック」を利用しているママは、「小さく生まれたことによる発達の見通しが書かれ、わが子の成長に希望を持てた」と振り返っているほか、この手帳を受け取った切迫早産で946グラムの女児を出産した女性は「産後すぐ病院で受け取り、先輩ママの言葉に励まされた」と話しているそう。

低体重児は増えている!?

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さて、この低体重児ですが、一体どれくらいのサイズで生まれた赤ちゃんを指すのでしょうか。

1000グラム未満………………超低出生体重児

1500グラム未満………………極低出生体重児

2500グラム未満………………低出生体重児

2500~4000グラム未満……正出生体重児

4000グラム以上………………高出生体重児

そして、調べてみると、低体重児は昭和55年以降増えていることがわかりました。

2500グラム未満で生まれた赤ちゃんは、昭和55年には5.2%。しかし、平成2年になると、6.3%隣、10年後の平成12年には8.6%、さらに10年後の平成22年には9.6%となっています。

その原因として、吉田穂波氏(※1)は「早産の増加、妊娠期間の短縮、多胎児の増加、メディアの影響や自己肯定観低下による女性の痩身願望、出産年齢の高齢化(図1)など様々な要因が挙げられます」と述べています。

同時に、「乳児死亡率が低いなど医療レベルが高く、経済的に発展しているにもかかわらず低出生体重児が増加しているというのは海外にはあまり見られない現象」だともいうことです。

様々な原因が絡み合って、低体重児が増加していると考えられますが、今や10人に1人が低体重児で生まれる時代。もはや、珍しいことではないにも拘らず、これまで低体重児が利用できる母子手帳がなかったということの方が不思議だともいえるでしょう。

何はともあれヨカッタ、ヨカッタ。

でも、ところで、静岡県が発行するということは、他の都道府県では利用できないってコト? そんな疑問も浮かんできます。

低体重児用の母子手帳は全国区に広がる可能性も

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他の自治体では、熊本県、長崎県で、低体重児をフォローする手帳が配布されています。

熊本県:リトルエンジェル支援事業(極低出生体重児支援事業)

極低出生体重児の保護者に専用の育児支援手帳「リトルエンジェル手帳」を交付

長野県極低出生体重児フォローアップ手帳 「たいせつなきみ」はここでダウンロード可能

ですが、きっと静岡県の取り組みは全国レベルになっていく予感も!

9月には、第1回検討会を開き、総合周産期母子医療センターなど県内の医療関係者、行政、ポコアポコら支援団体が集まり、具体的な記載内容、配布方法などを検討するそうですが、おそらくここには日本中の行政から関係者が見学に来るのではないでしょうか。

実際、新聞記事の中で、国内外の母子手帳に詳しい国際母子手帳委員会の板東あけみ事務局長は、「県の取り組みは今後、全国のモデルになる。情報誌でなく、保護者目線の要素をしっかり盛り込んでほしい」と話しています。

低体重児の増加は、働くママが増えたこととも無縁ではないと個人的に感じています。この取り組みが全国規模に広がって、ママと赤ちゃんに笑顔が広がりますように!

 

《参考》

(※1)「進化する『母子手帳2.0』 最近の母子保健疫学から見える新たな母子健康手帳のありかた」参照

出生数及び出生時体重2,500g未満の出生割合の推移 

厚生労働省 低出生体重児保険指導マニュアル

【記事まとめ】ママニュー7Days

中山美里

中山美里

ライター、編集


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