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2015.08.27

新学期が始まる前にしっかり考えたい、いじめについて


元中学校教諭が薦める
凄惨ないじめ文学
「ヘヴン」
川上未映子著

 

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夏の終わり、いじめについて考える

夏休み前には毎日のように報道されていた「いじめ」と「自殺」のニュース。そして先日BRAVAにアップされた、子どもの自殺の記事(こちら)。この記事によると、夏休みなどの長期休暇が明ける前後に子どもの自殺が急増するという調査報告が明らかになったそうです。

子どもたちがみんな、楽しい夏休みを過ごしていると思ったら大間違い。そのことに気がついたときに、どうしようもなく居たたまれない気持ちになりました。

教職時代に、生徒に「いじめ、と、からかう、の違いって何?」と聞かれたことがあります。そのときに、この本を薦めました。ひとつの事柄でも、受け取る人によってその感じ方はさまざま。そして、自分が想像するよりももっと、人は人を傷つけて生きているのだということを知ってほしかったのです。

本著は、芥川賞作家である川上未映子さんが、14歳の男女を取り巻くいじめを描いた長編小説。目を背けたいような凄惨な描写のなかで、いじめる側・いじめられる側・いじめを見ている側、そのどこにも加担していない独特な空気感があります。それが、それぞれの孤独を理解しているようで、いじめの本質を深く考えさせられるのです。

いじめられっ子の胸のうちを知る

あああ

いじめられた側がどんな気持ちなのか文章からよく伝わります。

主人公の「僕」は、いじめられっ子。斜視であることに悩んでいます。ある日僕に届いたのは、同じくいじめられっ子の女子生徒、コジマからの手紙。ふたりはひそかに交流を続け、寄り添いながら自分たちの置かれた境遇について消化しようとします。手紙の交換から始まり、いつしかふたりで出かけるように。

ずっと孤独だったふたりから溢れるとめどもない話が、胸を突きます。

ふたりは同じいじめられっ子でも、考えは違います

「自分が弱い」からいじめられると考える僕と、「いじめを受け入れている自分は強い」と考えるコジマ。どちらもいじめを考え抜き、語り合うことで、自分たちを救おうと必死なのです

いじめられっ子の心のなかを深くまで覗いた小説は、ほかにないのではないでしょうか。

子どもの生活に介入し、想像力を持つ

いじめが我が子に関係する可能性はないとは言えません。だからこそ、子どものしっかり

いじめはどんな子どもでも起きうることです。だからこそ、親は子どもの変化や気持ちには敏感でいなければなりません。

陰鬱な気持ちで夏休みを過ごす、僕の心の変化も描かれています

「学校がないと誰にも会わないですむし見られないですむから、僕の生活は家具みたいに静かだった。誰の目にも映らないでいられることは、僕に言いようのない安心を与えてくれた

「学校が始まる九月一日が近づくにつれて、僕の身体はところどころ変調をきたすようになった。なにを見ていても、なにを考えていても、そこにあるはずの質感というものをうまく感じとることができなかった」

心の安寧は長くは続かず、夏休み明けに近づくと鈍化していく思考と身体。学校に行きたくない、だけどいじめられていることを親や学校に伝えられないというジレンマが痛いほど響いてきます

親として、大人として、子どもたちの置かれている状況には常に想像力を働かせなければいけない。つい1ヶ月前に報道されていた、いじめを苦に自殺した中2男子の事件で、連絡ノートで相談を持ちかけていたのにもかかわらず、担任教諭がしっかりとした対応ができなかったのではないか、というニュースを思い起こしました。

子どもたちは、大人が思っているほど弱くありません。自分たちで必死に困難に立ち向かっています。いじめている子もいじめられている子も、それぞれ考えがあり、その都度悩んだり耐えたりしています。でも、限界まで、子どもたちに我慢させなくてよいのです

子どものSOSに、しっかりと気付けるのだろうか。そして、それにどのように対応していったらよいのか。もはや子どもたちだけの問題ではない「いじめ」。

子どもを持つすべての親、大人たちに、いじめについての想像力を養い、そしていじめをなくすためにはどうしたら良いのか、もう一度考えてほしいと思います。

そして、中高生のお子さんを持つママさんは、ぜひこの夏休みの最後に、お子さんにも本著を薦めてみてほしいです

 

《お薦めしてくれたワーママ》
M.Hさん。元中学・養護教諭で、現在は第2・3子となる双子の育休中。旦那さまが転勤族なので、子供たちの教育環境や友達付き合いについて考えることが多いという。だからなおさら、「学校なんて日本中どこにでもあるんだから、いやならそこはヤメればいい!」と強く訴えてくれました。

「ヘヴン」

川上未映子著

講談社文庫

522円(税別)

ISBN:978-4-06-277246-4

【記事まとめ】ワーママBook Shelf

浦和ツナ子

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