2016.02.10
「しからない育児?」「ほめない育児?」いろいろ言われて現場は混乱ですヨ!
多くの情報が溢れ「どうしたらいいんだろう?」と思えば、携帯でちょちょちょっと調べられる今の時代。
子育ての情報も困っているキーワードを検索窓に入れると、パッとレスポンスがありますよね。
なんて便利。しかしあまりにも多すぎる情報に混乱したり「えっ?聞いてた話しと違うよ」ということはありませんか?私は結構あります。
そのようなあふれる育児情報の中で究極的に「これってどっちなのよ?」と思ったのが【しからない育児】推奨派と【ほめない育児】推奨派です。
字面だけ見ると、まったく対照的にも思えるこの二つの育児方法。
いったいどういうことなんでしょう?
今回はそこを紐解くべく人気の2冊の本をご紹介します。
ひとつは尾木直樹先生の「尾木ママの 叱らない子育て論」。もうひとつは岸英光先生の「ほめない子育てで子どもは伸びる」です。
みんな知ってる超有名教育評論家、尾木ママの著書その内容は?
尾木先生の「叱らない育児」で提唱しているのは「子育てのポイントは叱る代わりに“ほめる”」ということです。
「早くしなさい」は自発的な成長を妨げることになる。「ダメ、やめなさい」は子どもの成長を抑え込んでいる。と先生は言います。
たとえば育児の現場ではよくある、お出かけ前に子どもを急かしてしまうシーンについては
子どもは、あらゆることに関心を寄せて、想像力をふくらませて楽しみながら、じっくり、ゆっくり遊びながら心豊かに育っているの。
そのための時間なんだから、たっぷり使わせてあげましょ。
靴が早くはけなくたって、地球がひっくり返るわけじゃないんだから。(参考 p104)
と言っています。
親が「早くしなさい」と言ってしまうのは集団生活における、効率主義的、競争主義的な考え方で「なにグズグズしているの!早くしなさい!」のひとことで、子どもの好奇心も自発性も失われる。というのです。
また、怒りたくなった時の解決法としては「怒鳴りたくなったら深呼吸して無理矢理にでもほめる」。
気持ちが落ち着いたら「どうしたの?」と聞く。
そうやってキチンと子どもの話を聞いてみると、100%完全に子供が悪いということはないの。
その中の数%でも正しかったところ、いいところを見つけたら、そこをしっかりほめてあげるの(参考 p169)
なるほど。子どもの好奇心と自発性を失わないために「叱らない」で「ほめる」育児をしましょう、というのがこの本の内容でした。
しかし、なかなかこれが「そうは思うけどできないのよー」というのが母たちの本音かもしれません。
特に働いている母たちとしては、バスも電車も仕事も待ってくれない。
どちらかというと「叱らないでも、子どもが早く支度を終わらす方法を教えて!」という気分です。
ちなみにこの本は、とっても読みやすい本です。
尾木ママのテレビそのままの語り口調で書かれた文章はスラスラと読めてしまいます。
また、No1~No30までの項目に分かれておりそれぞれまるまる1ページにその項目の見出しが書かれています。
これが子育てのTipsになっています。
子育てに迷ったときパッと開いて読み返すのにいいかもしれません。
叱らない育児だけではなく学力アップの勉強方法なども載っているのもこの著書が人気の理由かもしれません。
ただ、いくつかの子育て本を読んできた人にとっては既出の内容を多く感じたり、読み応えがないと感じる人もいるかもしれません。
だって「青魚にはDHAが含まれていて脳の発育にいい」って…。
そんなこと、私たち母親みんな知ってますよ~先生!と読みながら突っ込みいれてしまいました。
「ほめない育児」なんて本気ですか!?岸英光さん著書の内容は?
この本の最初の見出しは『親の顔色をうかがう、「いい子症候群」が増えている』というもので始まります。その中で
「私は、子どもをほめて育てるということがさかんにいわれるようになってから、子どもたちがいままでにない壊れ方をするようになっている気がしています。」(参考 p17)
とあります。
いままでよく目にしていてた「ほめる育児」を真っ向から否定するような内容です。
そして
「ほめられることに慣れて育った人は、ほめてくれる人がいない社会におかれたとき、どのようにモチベーションを保つのでしょうか。」(参考 p19)
と疑問と警鐘を鳴らしています。
岸先生はこの本の中で「ほめる」について定義をしています。
「ほめる」とは「評価する」こと。「上手ね」「えらいね」「いい子だね」と「あなた(子育ての場合は子ども)が主語になる声かけ。としています。「あなたはいい子だね」「きみはすごいね」などのことです。
ほめられることをし続けた子は、いつも親や先生、まわりの目を気にし、何かを決めるときも他人の価値基準を優先するようになり、自尊心や自己肯定感を失っていく、と岸先生は言います。
そうやって育てられていると、大人になったときに自分で問題を見つけて解決できない「指示待ち人間」になり、人を妬んだり、人のせいにしたりするようになる。というのです。
それでは、どうすればいいか。
「ほめる」のではなく「認める」ようにする。のだそうです。
「認める」とは、主語が「私」で、気持ちを述べる。
「現実」を認めるもの。としています。
「あなたが素晴らしい」ではなく「あなたがこうしたことを、私(自分)が素晴らしいと思う。」
その例文として
「あなたがお手伝いをしてくれたことで、お母さんは本を読む時間がとれたわ。ほんとうに助かった。ありがとう」(参考 p56)とありました。
こういうふうに伝えることで、子どもは自分の行動が、さまざまな価値につながっていると分かり、やりがいを感じる。というのです。
この「認める」育児を続けることで創造性や自発性、協調性やコミュニケーション能力など、多くを身につけることができると。というのがこの本の内容でした。
ちなみに、この本は4章でなりたっており、1章では「ほめる育児」がいかに悪いかを述べています。
なるほどと思う部分もありますが、それはちょっと極端じゃない?と感じる記述もありました。
2章では「認める」についての説明があり、3章ではその「実践」がレクチャーされています。
4章はこの「認める」ことを大人にも適応できるということが書いていました。
また、この「認める」というのを始めるのは3歳から10歳くらいに徐々に増やしていくものとしています。
2歳までは「大好きだよ」というメッセージをできるだけ与えて、この時期であれば「いい子」「すごいね」とほめることはかまわない、と言っています。
結局何が正しいの?
いかがでしたでしょうか?「叱らない育児」「ほめない育児」共感できるところがありましたか?
タイトルの字面だけでは「??」に感じますが実際にその著書を読むと「なるほどね」と納得できるところもありますし、「それってどうだろう?」と疑問に思うところもあります。
詳しい内容が気になる方はぜひ、二つの本を手に取ってみてください。
私自身の育児で言うと「叱るときは叱るし」「ほめたいと思ったときにほめます」。
全然、育児本を活かせてないじゃーんみたいな、適当っぷりです(笑)。
叱る行為もほめる行為も、人間として、親として自然な行為だと思うので、「叱りすぎる」「ほめすぎる」というように「極端」にならないようには注意しています。
とはいえ、時にはガミガミ言ってしまって、後で反省、なんてことはしょっちゅうですが。
世に出回るさまざまな「子育て方法」だったり「子育てメソッド」「子育て論」と色々ある中で、私たち親子に合っているなぁと思うエッセンスを自分の子育てに活かしたいと思っています。
「誰々という有名な素晴らしい先生が言っているから」という理由でそのすべてを信じ、実践することはありません。
尾木ママの著書で私が一番心に留めたのは、実は叱らない育児そのものではなく以下の一文です。
「あなたなりの感覚、良識で考えていいのよ。理屈や理論じゃなくて子どもを愛してあげたらいい。」(p98)
「絶対的に正しい育児方法」というのが本当にあるのか?と問われると、難しい。
子どもの個性はそれぞれですし、親の個性もそれぞれなのです。
ただ一つだけ言えることはあります。
私以上に私の子どもの幸せを願っている人は世界にいない!!この子たちが独り立ちし、しっかり大人になることをこの世界で一番望んでいるのはこの私だ!ということです。
だって、母なんだもん。
情報がすぐ手に入る現在は幸せとも言えるし、もしかしたら混乱のもとになっているのかもしれない。
でも、その中から自分に合うものを上手に抽出し活用できるといいですね。
今日も「子どもの幸せを願って」時には手を抜きながら、時には本気で子どもと向き合いながら、試行錯誤の子育て中です!
松本尚子
ライター・編集者
2010年生まれの女子、2012年生まれの男子の2児の母。主婦ときどきライター&編集者。女性向けサイトの編集者を経て、リクルートの住宅サイトでweb編集者を経験。酒好き、旅好き、美味しいもの好き。鎌倉在住。