2016.04.28
知っていますか?「子どもの眼の癌」ワーママ親子で闘った日々
タイトルでびっくりしたかたは多いと思います。子どもの眼の癌、病名は「網膜芽細胞腫」と言います。
網膜芽細胞腫とは?
出生児15,000~20,000人につき1人の割合で発症すると言われています。網膜に腫瘍ができると視力が低下しますが、乳幼児はまだ「見える、見えない」という状態がよくわからず、その状態を伝えられないことから、発見されたときには進行している場合も少なくありません。
ある程度進行すると、光が腫瘍に反射して夜のネコの眼のように白く光って見えたり(白色瞳孔=キャッツアイとも言う)、斜視になったりします。その他、まぶたの腫れが見られることもあります。残念ながら予防法はありませんが、早く治療が行われれば生命に関わることは少なく、治癒させることができます。
今回お話をうかがったのは、Oさん(建築関係、36歳、お子さん2歳の女の子)。病気のことが分かってから、記憶がないくらいのショックと混乱と忙しさだったそうです。
子どもが大きな病気になったからこそ、同じ立場のママに伝えたいことがたくさんあると語ってくれたOさんのメッセージとは。
病気が分かるまで
なんとなく右目の黒目の真ん中が白くてガラスっぽくなってる? というのが最初の気づきでした。でも、私も私の母もしばらくは「気のせいじゃない?」と何もしないでいました。
誕生日の日にフラッシュをたいて撮った写真の眼が明らかに違ったので、眼科を受診することに。「もう右目は見えてないと思います。網膜が剥離しています。それが腫瘍かどうかわからない」という衝撃的な診断。
とりあえず大きな病院の受診を薦められました。私自身一緒にいて気づかなかったし、保育園でもなにも言われていなかったのに…この子はずっと片目で生活していたんだ、と…お風呂の中で、声を上げて泣きました。しかも大きな病院受診まで1ヶ月かかると言われ、その間は本当にいろいろ考えたり、ネットで調べまくってしまいましたね。心配は増大するだけなのに…
別の小児眼科に行き、「1ヶ月も待って大丈夫なものなのか」と確認したりもしました。「たとえ網膜芽細胞腫でも、進行が早いものではないので、それは大丈夫」と言われつつも、やはり悶々としていました。
結果として、娘は転移もなく取り切れたのですが、もし1ヶ月待ったことで進行が進んでいたら、一生自分を責め続けていたと思います。
分かった時点で、どうか一刻も早く大きな病院を受診してほしいと思います!
働きながらの母子入院生活
大きな病院を受診すると、やはり「網膜芽細胞腫」でした。手術で眼球を摘出することに・・・。なんとなく覚悟していたことですが、改めて宣告されると倒れそうなショックに襲われました。
でも、1ヶ月間考えたり夫婦で話し合う時間があったので、いろいろな葛藤はあったものの、「娘の命を守る。眼球は摘出する」という決心はできていました。
そして、即入院生活スタート。手術も無事終わり、転移も見られず本当にホッとしました。とにかく子どもが私べったりで、トイレに行くにもオムツを捨てに行くにも「ママ、ママ」と泣く。トイレや自分のご飯は娘が寝ている間だけ。トイレをがまんしているうちに、ついに自分が血尿沙汰になってしまったんです。
もちろん夜も付添いだったので、病院から職場に行ったりしてましたね。
このまま仕事を辞めなきゃいけないかな…という考えも頭をよぎりましたが、溜まっていた有休を消化したり、平日1日だけパパと交代したり、私の母に来てもらったりして、なんとか乗り越えることができました。
働いていたからこそ乗り越えられた
入院生活は本当に大変でしたが、病気が分かってからの1ヶ月間、そして入院中、現在も、仕事をしていたからこそ乗り越えられたのかもしれないと思っています。
仕事とはいえ、少しでも子どものことから気持ちが離れたし、気が休まりました。もし家の中で一日中娘と一緒だったら、病気のことやこれからのことで頭がいっぱいになり、自分を責め続けてしまったと思うんです。
娘の付添いをしながら仕事をする、特に病院、職場の往復などでかなり身体の疲労は溜まっていましたが、精神的にはつくづく働いていて良かったと思います。
働き方を見直すきっかけに
この3月で前の職場が契約満期だったので、いずれにせよ転職する予定ではいました。娘の病気が分かる前は、前職と同じような条件(前職は契約社員で9:00〜17:30)のところを考えていました。
しかし、娘の病気が分かって、条件がかなり変わりましたね。少しでも娘と一緒にいてあげたい、それが一番の条件でした。そして正社員や契約社員のように自分でないと分からないあるいは自分にしかできない仕事は避けたいと思いましたね。
結果的に、時間給のパートタイム勤務を選択しました。残業もまったくなく、毎日18:30までにはお迎えに行けます。
前の会社で契約社員だったときは、基本残業はないものの、正社員と同じ業務量をこなしたり、1年に4回ほどの繁忙期は遅くまで残業する日も少なくありませんでした。
今、年収は大幅に減りましたが、娘といられる時間が増えた分、気持ちも生活バランスも安定しています。
ささいなことでも気付いたら受診を!
子どもは小さければ小さいほど自分の身体のことは伝えられないもの。
「これって何だろう? でも、まあ気のせいかも」「忙しいし病院に行く時間がない」ではなく、気付いたときに夜間診療でも何でもいいから受診してほしいと思います。
早期発見は進行を防げるし、早い段階で治療もできる。
やっぱり子どものことを一番良く分かっているのはママだと思うんです。どうか「ん? なんかいつもと違う?」という勘を信じてください。時間を作って病院に行って、そして、疑問を残すことなく、お医者さんに食いついてでも納得いくまで聞いてほしいと思います。
娘の場合、町医者では「1ヶ月待っても大丈夫」と言われましたが、大きな病院では「なぜ1ヶ月も来なかったんですか?」というようなことを言われました。
重複してしまうかも知れませんが、大丈夫と言われても疑問が残るようであれば、ぜひ次のアクションを起こしてほしいと思います!
向き合って前を向ける日が必ず来る!
時に目に涙をにじませながら、そして時に笑顔を浮かべながらゆっくりとそして丁寧に語ってくれたOさん。そこに、計り知れない苦労と苦悩を感じましたが、でも、お子さんが病気になってみて初めて気づけたことや見えてきたこともあったとおっしゃっていました。
今の悩みは、周りから義眼のことを言われ始めたら、あるいは子ども自身が気づき始めたらどう伝えるか・思春期などにどうケアしてあげられるか。そして、一番の救いはお子さんが痛がりも嫌がりもせず、毎日元気いっぱい楽しく過ごしてくれていることだそうです。
子どもが重い病気になってしまったとき、ママは必ず自分を責めてしまいます。「あのときもっと早く気づいていれば」「私がいつも一緒にいてあげられれば…」。でも、いつか落ち着いて親子で病に向き合える日が必ず来ます。
どうか自分を責めすぎないで、でも、子どもの小さな変化があったらどうか何かしら行動を起こしてほしいと思います。
大切な子どもの命を救えるのは、やっぱりママなんです。
田崎美穂子
mamaライター