2018.04.25
昭和5年の古本【共働きの心得】からわかる家事分担の極意とは?
先日、知り合いと話した時に「結婚心得帖」という古本の存在を知りました。本好きの彼女はネット上で知り、興味本位で軽く見たところ「昭和5年の本なのにね、よく読むとスゴイこと書いてあんのよ~」とハマったらしく、国会図書館デジタルコレクション*で読めることも教えてくれました。
モニタ上ではかなり読みづらいのが難点ですが、それを上回る内容の濃さに驚きました。なんといってもビックリしたのは「共働き夫婦の心得十一ヶ条」という項目があったことです。
以下、抜粋ですが、なかなか面白いので紹介します(読みやすいように現代文に勝手に直しています)。
共働き夫婦の心得「家事分担」は今も昔も・・・
3条 家事に手を貸せ・口出すな
妻より先に帰宅したら時計を睨んで待っている間に、火鉢の火くらいはおこしておくこと。それはしないで口先ばかりではいつか不平が爆発するのは知れきった話
おおおお!いきなり共働き夫婦の核心に迫る話題が。今から80年以上前ですよ、それが夫に「口先ばかりではいつか不平が爆発するのは知れきった話」と断言。火鉢の火くらいおこしておけ、とは時代を感じますが、今なら「ごはんをといでスイッチくらい入れておけ」「洗濯機くらい回しておけ」ですかね? それにしても「時計を睨んで待っている間に」なんて表現も最高! いるいる、そーいう夫。あ、いや、ウチですが(汗)
今も昔も家事分担って、不平不満のもとなんですね・・・。
4条 自分の事なら自分でせよ
痩せても枯れても亭主だぞ、などと夫の沽券を振り回さず、自分で出来ることは自分ですること。働く妻への思いやりが大切。
「自分のことは自分でする」って共働きの基本ではありませんか。私はあなたのことまで手が回らない!っていうのが働く妻の本音だし、まして働く母となれば「子どもの世話までしているのに!」とモヤモヤはエスカレートしていくもの・・・。
「自分のことは自分ですること」それは当たり前であり、働く妻に対する思いやりでもあるなんて、いいコト言ってますね~。
共働き夫婦の「愛の危機」まで予言!?
8条 家庭へ職業意識を持ち込むな
いかに職業熱心からだとはいえ、家庭へ帰ってからも職業意識に支配されては夫はやりきれません。妻の心に夫が皆無だと知ったら、自然、女の優しみを他に求めたくなるでしょう。夫を寂しがらせぬ妻であること
こちらは妻である女性に向けての心得です。むむむ、と思った人もいたりして。心に刻んでおきましょう。常に仕事、仕事で夫をないがしろにしていると「自然、他の女に優しさを求める」と浮気の原因になるよ~と忠告しています。
ま、実際問題として妻の立場で言えば、仕事と家事と子育てに全力投球、とても夫に構ってる時間なんてありません。
でも。
だから〝共働きの夫婦なんだから当然〟と、手伝ってくれたことに「ありがとう」のひとつも言わず、それどころか終始不機嫌で
「あなたと違って私は成果を出さないと会社にいられないの!保育園の子がいて休んでばかりって言われないように大変なんだから」
いや、言いたくなる気持ちはわかるし、時には爆発してもいいと思ったりするんです。でも、毎日この調子では、いい加減夫も「オレだって仕事してるっつーの」・・・いつか夫が別の女性に優しさを求めて走る。なんていう浮気、ありなのか!? いや、アリなのかもしれません。
6条 妻の貞操は信頼の鎖でつなげ
家庭内では妻であっても外へ出れば公人です。他の異性と言葉を交わす場合もあろうし、執務上の用件から帰宅が遅れる場合もあるでしょう。それをいちいち立腹したり、邪推の目で見られたのでは、気持ちよく働ける道理はありません。自然ウソをつくことになるでしょう。瓢箪から駒が出て、本当に秘密をつくることとなるでしょう。理解と信頼の目に見えぬ鎖で、妻の貞操をつなぐ心得が必要です。
こ、これ、リアルすぎて怖い。
妻の働き方に無意識かもしれませんが、あれこれ口をはさむ夫いますね。「なんでこんなに遅いんだ、本当に残業かよ」なんてつぶやかれたら「残業だって証拠でも出せっていうの!?」くらいは言い返したくもなります。
いちいち何をしていたのか問いただし仕事の内容まで聞き出そうとされると、面倒くさくなって時には当たり障りのないウソをついて、丸くおさめてしまえ、という場面もあるかもしれません。小さい嘘が続くうちに「瓢箪から駒が出て」本当に秘密を作っちゃうかもよ?なんて、いや~、あり得なくもない、と、けっこう説得力あるなぁと思いましたよ。
妻の貞操という言葉になんとも古めかしい印象はぬぐえませんが、「貞操をつなぐには理解と信頼の目に見えぬ鎖」が必要とは、脱帽です。貞操を守るためだけとは思いませんが、理解と信頼の鎖、共働き夫婦をつなぐ心の結びつきの重要さには納得です。
共働き夫婦の形がすべてに認められる日まで
専業主婦世帯と共働き世帯の数は平成に入ってから差が縮まり、平成11年くらいに数が逆転しています*。昭和5年にどれほどの共働き家庭があったのかはわかりませんが、現在で言うところの「夫婦共に企業でフルタイム勤務」はごくわずかだったことでしょう。
でも、例えば農業や水産業を営む家、家業がある場合、夫婦どころか家族総出で働くのが当たり前の家も多かったはずです。また、今もその状況は一緒ですし、忘れがちですが同じように共働き世帯です。
昭和5年といえば、90年近く前のことです。職種に限定はあったかもしれませんし、男女平等という観点からはかけ離れていたとしても、共働き夫婦は当時からうまくやるには「お互いに気をつけるべきこと」があったのです。
読み方にもよるでしょうが、例えは古くても内容は「今も同じ」と思えるところが沢山ありました。横を見れば、やはり共働きのカップルは大なり小なり問題を抱えたり、不満を持ちながら頑張っている。縦軸で見ても、外での作業や仕事を終えて大急ぎで帰り、割烹着をつけてあわてて台所に立つ働く母の姿がある。
昭和5年の働く母たち、その当時から家事分担という認識はあったんですね。ではこの先、100年後はどうなるのでしょう。イクメンという言葉はなくなり「企業も社会も理解をし、夫婦で協力して働き、子育てをする」環境になっているのでしょうか。
共働きの心得「こんな当たり前のこと」と誰もが古めかしく思える時代がくるのかもしれない、と期待を持ちたいと思います。
ちなみに・・・この結婚心得帖「夫婦喧嘩七ヶ条」では「過ぎ去ったケンカは忘れよ」「ふたりのケンカはふたりでおさめよ」「喧嘩の後の微笑」(この喧嘩後仲直りの微笑こそ愛と理解を深めるもの、雨降って地固まる、となっている)。うーむ、深い。
*引用:結婚心得帖 婦女界社編集部編国立国会図書館デジタルコレクション
大橋 礼
ライター
年の差15歳兄弟の母。DTP会社勤務後、フリーで恋愛・料理・育児コンテンツを執筆中。今や社会人長男のママ仲間とは「姑と呼ばれる日」に戦々恐々しつつ、次男の小学校では若いママ友とPTAも参戦中。飲めば壮快・読めばご機嫌!本とお酒があればよし。