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2019.03.07

【専門家に聞く】発達障害グレーゾーンの子と「いじめ」の不安、現状と対処法はある?


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発達障害とグレーゾーンの子ども支援の活動を幅広く行っている野添絹子先生へのインタビュー最終回(1回目はこちらの記事、2回目はこちらの記事を参照)は「いじめと発達障害グレーゾーン」についてです。

個性が際立ってしまい、どうしても周囲と軋轢が多くなりがちなのが発達障害グレーゾーンのお子さんたちです。保育園や幼稚園から小学校という「社会に属する」ようになると、今度は周囲とうまくやっていけるかどうか、さらにはイジメられるのではないかという不安が生まれてきます。

そこで今回は、BRAVAのいじめ記事でも企画協力をしていただいている株式会社マモルの代表齋藤さんと野添先生が「いじめ」について対談するとのことで、編集部もお邪魔させていただきました!

発達生涯グレーゾーンといじめについての不安

BRAVA対談齋藤:野添先生は実際にグレーゾーンのお子さんがイジメの対象になったという話を聞いたり相談に乗ったりというご経験はありますか?

野添:非常に残念なことですが、グレーゾーン≒いじめ問題という構図があるように思います。相談に乗らせていただいた回数は、けっこうなものです。グレーゾーンのお子さんは、コミュニケーションがうまくとれなかったり、周囲からすれば唐突に思える行動などが年齢があがるにつれて目立ってくるケースが多いです。それで、ひどくからかわれたからカッとなってケンカになったとか、あるいは仲間はずれにされたというような話をよく聞きます。

齋藤:私のまわりでもお子さんが発達障害でいじめに対する不安があるというご相談は多いです。実はうちの息子もいま年長なんですが、グレーゾーンと言われています。最初は、これから成長するに従って、いじめられないかととても不安だったんですね。でも逆に、今思っているのは、本人は悪気はなくても主張を通そうとしたり、盛り上がりすぎてやり過ぎてしまうところがあって、つまりイジメているように思われるのではないか、イジメのつもりはないのに、いじめる側のように思われてしまうのではないかという不安が大きくなっているんですけど・・・。

野添:相手の気持ちに気づかずに、自分の考えをおしつけてしまったりすることで、そのように思われてしまうことがあるかもしれませんね。悪気はないのに、場にそぐわない発言や行動があったり、思ったままを口にしたり、順番を待てなかったりして、相手を不愉快な気持ちにさせてしまうということはありえます。
見たままを口にすること、例えばですが、太っている子に「太ってるねぇ!おデブちゃんだねぇ!」と悪気はなくても言葉にしてしまう。そうなると、小学校ならトラブルになるでしょうね。言われた方は傷ついたと感じ、男の子同士なら取っ組み合いのケンカになったりもします。相手の親からすれば、原因は、「デブと言われたから」となります。
ことばに関することは、教えることである程度直すことができます。さらに、大人になってからは、思ったことをストレートに口に出してトラブルにつながるケースは減ります。経験して学んだ結果、口に出してはいけないことを理解するようになり、感情や行動をコントロールできるようになってくることが多いからです。

親子で書き出して「原因と結果」を理解させる方法

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齋藤:具体的にどう学ばせていけばいいのでしょう? やっぱりその場で怒ったほうがいいんでしょうか。

野添紙に書いて理解させる方法をお勧めしています。時系列に書き出して、何を話したか、そしてその原因とか理由を一緒に考えます。紙に書き出すことでトラブルになった「原因と結果」が明確になれば、子どもに理解させやすくなるからです。先ほどの例で言うと、「太っている、デブだ」と言った。「太っていると言われた相手はどう感じたと思う?」と聞きながら、書き出していく。

発達障害グレーゾーンのお子さんによっては、なんで急に相手が怒り出したのか、その時点ではわからないことが多いのです。相手に失礼なことばだとわからずに発してしまっていたり、ワーキングメモリの小ささから、自分が言ったことを忘れてしまったりしていることが原因として考えられます。
そのため、相手が先にぶってきたからやり返した、僕のどこが悪いの?と首をかしげてしまう。そこで、もしこういうトラブルがあったら、親子で一緒に紙に書き出して「太っていると言われたら、体のここがヘンだよって言われたみたいで怒ったのかもしれない」と子どもが考えられるように導き、「デブって言葉はキツイよね、いきなりそう言われたら、どんな気持ちになるかな?もしあなたが言われたら、どう思う?」と相手の気持ちを思いやる必要があることに気付かせてあげます。

書くことで考えが整理されるし、親もカッカしながら、「そんなだから嫌われるのよ!」なんていう最悪な怒り方をしなくてすみます。
ちなみにこういう怒り方は、子どもの自己肯定感を育てない悪い例です。このことは、後でもう少し詳しくお話ししますね。
ともかく紙に書き出してみることで、落ち着いて相手の気持ちを考えるきっかけになります。この言葉が原因であの子は怒ったと、子どもが自ら理解していくことが大切なんですね。

それから子どもはどうしても一方的に自分の視点で話しますから、(そのほとんどが自分は悪くないという見解)相手の親やお子さんの話も聞けるなら、聞いたほうがいいですね。そしてトラブルになったお子さんの立場でモノを考えること、これを繰り返し教えるのです。
ただし、相手の方にも非がある場合があるので、はじめから一方的にどちらが悪い、みたいな言い方はしない方が良いです。大事なのは、ケンカの原因を正しく理解させることです。

ケンカの原因を理解させるために、親子で話しながら事実を順番に書き出していく方法以外に、会話しながら逆向きに、つまり結果の方から事実をたどっていく方法もあります。お子さんによっては、こちらの方がうまく記憶をたどれていいという場合があります。いずれにしても、一通り話を聞いたら、それを一覧表にします。
次の表の枠の中に、起こった順番でお子さんに番号を入れてもらいます。言葉、行動、気持ちを目で見て一度に確認できるので、三つの関係性を理解しやすいです。
もし一つのマスにいくつか記入する内容があったら、番号を入れる枠をその分だけ増やします。

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齋藤:紙にこうして書き出すと、確かにわかりやすいですね。子どもにも説明しやすいし、私も落ち着いて話せるかもしれないです。

周囲の理解を求めつつ、脳が成熟する時期までゆっくり歩もう

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野添:状況とか場合によってですが、お子さんの資質について周囲の理解を得られるように話しておくという方法があります。もしトラブルになったら、相手のご両親にウチの子は・・・と話す。クラスの先生には事前に相談しておく。これは脳のクセなんだと話して、乱暴な子だと思われることがないように、こういう特性があって、コミュニケーションがうまくとれない部分があるとわかってもらうのも、親としてお子さんを守れる手段のひとつです。
ちなみに、乱暴だと思われるお子さんの多くは、ことばの力が育っていなくて、うまく自分の気持ちを表せないから、イラっとして手足が出てしまうのです。自分の気持ちや状況をうまく説明できるようになったら、乱暴さが減ったということをよく聞きます。

齋藤:話すのは・・・自分の子が悪者にされてしまうんじゃないかという不安もあるようですね。あの子ってやっぱり、そーいうタイプだからみたいに見られてしまうとか。

野添:わかります。そうですね、先ほどお話したように、状況と場合によります。小学校の低学年くらいまでは大人の言うことをよく聞きますから、先に先生に相談して、先生がクラスに〝だから、優しくしようね〟と話せば〝はい!〟と他の子たちも答える。そのくらいの年齢なら、周囲に話して理解してもらう方法もありかもしれません。でも高学年になると自我が目覚めてくるし、先生がそう話したところであまり影響力がなかったりします。実際、グレーゾーンの子に対するイジメが多くなるのは、やはり高学年になってからです。

齋藤:友達がなかなか出来ないというのはしょうがないかな、とは思うし、ひとりで生きていくことができるならいいんです。でも、イジメられるのだけは避けたいのですが・・・。

野添:ここはやはり担任の先生の役割が一番大きいです。理解があって味方になってくれれば、いろいろ助けてくれると思います。ただ、先生も忙しかったり、あまり理解がない先生もいたりして、十分な対応を望めないことがあります。
イジメを受けるのを避けるために、というより、やはり本人が生きやすいように、親御さんが小さいうちからうまく導いてあげるといいと思います。

先ほども言ったように、紙に書き出してみることですね。あと、5W1Hをちゃんと把握させることも大切です。これは、自分が先に原因を作ったと理解させることにつながるからです。こうすることで、この前はこうだった、だから今回はこうした、と振り返りながらトラブルを減らしていけます。
でも繰り返し申し上げているように、これは脳のクセですから、治るとか治らないということではない以上、学校にいけば大なり小なりのトラブルはあるでしょう。子どもは、実際の社会生活の中で大事なこと、必要なことを覚えていくのです。学ぶことはとても多いので、いじめられるのではないか、ということだけにとらわれすぎずに、お子さんのためにできることを考えて頂けたらと思います。

脳の前頭葉は、個人差はありますが、だいたい25歳くらいで完全に成熟を迎えます。これは、発達障害グレーゾーンのお子さんだけではなく、全員がそうなんですよ。だから、小中高時代はみんながかなり未熟なわけです。それでも、18歳くらいになれば、経験知の蓄積と共に脳がだいぶ成熟してくるので、トラブルはだいぶおさまってくることがよくあります。当人も周囲も大人になってくるということです。だから、あまりお母さん、お父さんは、悲観的になりすぎないことも大事です。

「自己肯定感」へと導く子どもへの叱り方とは

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齋藤:では実際問題として、グレーゾーンの子が小学校くらいの年齢でうまくやっていくというのは難しいということでしょうか。

野添:程度というか、もちろん軽ければうまくやっていけると思います。それでも、大変なことはあります。一人ずつ状況は違いますから、ここで〝こうしたらトラブルは避けられる、問題はなくなる〟とは断言できません。ケースバイケースで、私はそれぞれの状態を見て、エビデンスによってアドバイスをします。そういう意味でも、専門家によるフォローや、場合によっては特別支援学級等で対応してもらうということも選択肢のひとつになりますね。

齋藤:子どもの叱り方はどうしたらいいでしょうか? つい大声をあげてしまったり、あとはこういう性格だから、可哀想と思ったり、あまり怒りすぎるのはよくないのかなと迷ったりで・・・。

野添:親御さんが子どものことを考えて叱り方を気にするということ、すごく良いと思います。そういう心配をされる親御さんなら、バランスの良さを持っているということです。
私が心配するのは、過保護というか、行き過ぎるほどに子どもを守ろうとするのは逆効果ということでしょうか。なんでも〝いいよ、いいよ〟と、不憫に思ってその子に合わせてしまうケースです。すると子どもは間違った学習をしてしまいます。親とか周囲は自分に合わせてくれると思い込んでしまうんですね。守られすぎると、いつでも人は自分に従ってくれるものだと思ってしまうんです。

特にASDの診断を受けていたり、その傾向が強いお子さんの場合はマイルールがあるので、自分の考え通りにいかないと我慢できなくなります。こうなると、社会の中でうまくやっていくことはできなくなります。他者には、親のような優しさや配慮を望めないからです。世間はけっこう厳しいですよ。

齋藤:では実際問題として、グレーゾーンの子が小学校くらいでうまくやっていくというのは難しいということでしょうか。:そういう面はあるかもしれません。可哀想とか、守ってあげようとか思ってしまいますし、でも、やり過ぎは逆にダメなんですね。

野添:バランス良く接することですね。子どもにとって居場所がある、お母さんやお父さんといった、自分の味方をいつもしてくれる信頼できる人がいることはとても大事です。だから、それは正しいんです。
でも、なんでもかんでも子どもの言いなりになってしまうのとは違います。間違ってしまったら、叱ったり、何が間違っているのかを教えてあげないと学んでいけません。学ばないままでは経験知が上がらず、結局、年齢が上がれば上がるほど、余計に大変になってしまいます。

齋藤:なるほど、そうですね。

野添:さきほど、齋藤さんはお母さんとして〝友達がいなくてもいい、でもイジメの対象にならないように願っている〟とおっしゃっていました。そこなんですが、友達がいなくてもいい、ひとりでも強く生きていけるようになる、という事。実はこれ、ASDや、そのグレーゾーンのお子さんにとって、とても大切なことなのです。

自己肯定感が重要なポイントになります。
「だから、あなたはダメなのよ!」と曖昧な否定の言葉を投げかけない。お友達とトラブルになり、相手から苦情があったら、きちんと相手の気持ちを理解させるのと同時に、「あなたのこういう優しいところが好きよ」、「この前は、〇〇についてすごく頑張ったよね」と話す。叱った後で必ず良い面について褒めてあげる、それが自己肯定感につながっていきます。
大人になったときに、親がずっとサポートできるわけではないです。会社ですごく嫌なことがあって、めちゃくちゃ落ち込んでしまうことがあっても、それでも、自分は価値のある人間なんだという思いがあれば、ひとりでもきちんと生きていけるわけです。自己肯定感を育てるための言葉かけがとても大切なんです。
小学生のうちは、叱る、そうしたらぎゅっと抱きしめてあげる。そして、褒める、です。一方的に叱るばっかり、あるいは褒めたり、守ることばっかりではなく、バランス良く導いてあげることが大切だと思います。

齋藤:最後に、グレーゾーンのお子さんを持つお母さん・お父さんたちにエールというか、励ましやアドバイスがあればお願いします。

野添:子どものことを一番よくわかっているのは親です。それでも、子どもの言うことだけを信じ切ってしまい、何があってもウチの子に限って、と思ってはダメです。
トラブルが起こった時は、可能な限り正確な情報を集めること、お子さんの特性についてよく知ること、それによってお子さんの一番の理解者であり続けてほしいと思います。深い愛情を持ちながらも、お子さんを客観的に見る目を持ってください。

さっきお話ししたように、トラブルがあったら、紙に書き出すようなことで、一緒に振り返りながら、こうするといいかもね、と少しずつ少しずつ教えていくこと。こうして経験を積み重ねていけば、お子さんは楽になります。そして、親は、叱ったら褒める、叱りっぱなしにはしない、これを心掛けてください。

あと、先ほども言いましたが、お子さんにことばの力をつけさせることも大事です。自分の感情や状況を周囲にわかるように説明できなければ、味方はつくれません。要領を得ない話し方では、何も伝わらないのです。
グレーゾーンの症状や状況は100人いれば100人違いますから、すべてはケースバイケースです。でも、お父さんお母さんの心配はよくわかります。ひとりで抱え込まず、時には専門家の手を借りて、より楽に、楽しく生きられる方法を一緒に見つけていきましょう!と伝えたいです。

<専門家PROFILE>
アミクス 代表 野添絹子さん

野添絹

野添 絹子(のぞえ きぬこ)
教育学・神経心理学・認知心理学・英語教育を専門とし、発達障害の子どもとグレーゾーンの子ども支援活動を幅広く行う。また、相模女子大、国立看護大学校、国立病院機構、放送大学非常勤講師でもあり、「発達障害・グレーゾーン」のお子さんたちとその両親へのサポートを行う「アミクス発達支援プログラム教室」の代表でもある。著書に『子どもの才能チェックBOOK』(小学館)他。

【企画協力】
いじめのサインを見逃さない こどもをマモルサービス
株式会社マモル

大橋 礼

大橋 礼

年の差15歳兄弟の母。DTP会社勤務後、フリーで恋愛・料理・育児コンテンツを執筆中。今や社会人長男のママ仲間とは「姑と呼ばれる日」に戦々恐々しつつ、次男の小学校では若いママ友とPTAも参戦中。飲めば壮快・読めばご機嫌!本とお酒があればよし。


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