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2018.08.02

【専門家に聞く】子供がよく「つまづく」「転ぶ」原因や対策とは?


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「ウチの子、よく転ぶな」「平らな道なのにつまづくことがある」、こんなことが気になっているママ、意外に多いようです。実はそこにはさまざまな理由や原因がありました。
今回は、療育センターでたくさんのお子さんの歩行を見ているPT(Physical Therapistの略、理学療法士のこと:けが、高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人に対し、運動機能の維持・改善を目的に運動療法を行う)の先生3名に、詳しくお話をうかがいました。歩行だけでなく、お子さんの体力をつけたい、動ける身体を作りたいと思っている方も必見です!

近年、子供がよくつまづいたり転んだりする理由って?

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つまづきやすい、転びやすい。それは、足そのものに問題があるというより、体幹にあるそうです。もちろん、足に何かしら問題があるケースもありますが、今の子どもたちはなぜ体幹が弱いのか、現代の環境や子どもたちの遊び方・体の動かし方などにフォーカスしながら、「つまづきやすい、転びやすい」にどうつながるのか、うかがいました。

〈すべては体幹に通ずる!〉
歩くって足だけでじゃなく、手も使うし、身体全体に関わってくること。体幹がしっかりしていないと、歩いていても、バランスが悪く、左右に揺れたり、どうしてもつまづきやすく、転びやすくなります。

〈足が低緊張気味だとぎこちない歩き方に〉
たまにあるのですが、筋肉の緊張が弱いお子さんがいます。筋緊張低下症といって、自分の体を支えるための筋肉の張りが弱い状態のこと。発達とともに改善されるケースも多いですが、何らかの疾患や障害があるケースもあります。低緊張の場合、足がぐにゃっとして力が入りにくいため、歩き方もぎこちなくなってしまい、つまづきやすかったり転びやすかったりします。

〈足の形も変わってきている〉
かつては、甲高段広で安定感のある足の子が多かったのですが、最近の子はすごく足幅がスリムというか、狭くなっている気がします。足も長くなって、特にひざ下が長い!下駄を履いたり裸足で生活することが少なくなったことも関係していると思います。
要は、昔より安定感がない足というか…安定しているほうが、物理的にふんばりやすいんです。たとえば和式トイレもどんどんなくなっているので、日常生活の中で「足でふんばる」ということをしなくなってきている。それも、つまづきやすい・転びやすいにつながっているのかなと思います。

〈昔のような外遊びをしない〉
「足を使って」遊ばなくなったことも影響していると思います。家庭の中でテレビやゲームという遊びが中心になっている。保育園などに行っているお子さんはいいかもしれませんが、それでも「外で遊ぶ」という機会がすごく減っているように思います。
今は変な事件も多いし、夏は暑すぎて光化学スモッグなどもひどい。そういう社会的背景や気候などが子どもが自由に外に遊びに行くという機会を減らしている気がします。公園を駆け回って缶蹴りしたり木登りしたりという、身体全部を使った遊びをしない。缶蹴りしてる子どもなんて見たことないですもんね(苦笑)

〈「安全面に気を使いすぎ」も影響している?〉
公園にも、昔みたいにグルングルン回るような原始的な遊具って見なくなりましたよね。ケガしないよう、ものすごく考慮されたおしゃれな遊具ばかり。「何歳から遊べます」とか、「こういうことができるようになってから、遊びましょう」みたいな注意書きが多い。
組体操をしない学校も増えてきたし、逆立ちすらできない子が多くてびっくりしています。自らケガしないよう、自分で「ここをこう動かしたら、こう動く」と考えながら遊ぶ・動くことをしなくなってきているように思います。

〈子どもの縦社会は「身体づくり」に向いていた?〉
小さい子が大きい子たちに連れられて、みんなで群れて遊ぶという姿も見なくなりました。兄弟だったり、隣の子だったり。自分より大きい子に一生懸命ついていくって、すごく身体を使うし、考えて動くんです。そういう環境もあまりないですよね。

よくつまづく、転ぶ原因は〇〇だった!?

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次に、つまづいたり転んだりしやすい原因について、もう少し具体的に詳しくうかがってみました。「あー、ウチの子まさにこれだ」と思い当たることがあるのでは…

〈「歩くこと」に対して注意が行かない〉
まだ小さいから仕方がないのですが、他に注意が行ってしまってちゃんと足元を見れてないこともつまづきやすい、転びやすいにつながっています。
または、「早くあそこに行きたい!」「あれを見に行きたい!」という気持ちに足が追い付かなくて転んでしまう、ということもよくあります。

〈歩く経験が少ない、という環境〉
歩かなくなった、大人が歩かせなくなったという環境も大きいと思います。たとえば、道やスーパーなどで「歩かない!」とグズル子どもを泣かせてまで歩かせるお母さんが少なくなった。周りに迷惑だからと、すぐに抱っこしてしまうんです。周りの大人が寛容でなくなった、ということもあるかもしれませんが…だから、運動量が少なくなって、たくさん歩いて自ら「転ぶ」という経験が少なくなっていくのかな、と。

〈バリアフリーも大きな原因!?〉
今はどこもかしこもバリアフリーなので、どこにでもベビーカーで行けます。確かに子どもが寝てしまったりしたらとても便利ですが、子どもは歩かないですよね(笑)かつては、下の子を抱っこして、上の子の手を引いて、車内で寝ちゃったら起こして歩かせて、という感じでした。バリアフリーが、「歩かなくなる」というバリアを作ってしまっているのかもしれません。

〈身長が伸びてボディーバランスが保ちにくくなる〉
身長が伸びて、自分のボディーイメージが持ちにくくなって、バランスが取りにくくなるということも考えられます。

〈体の使い方のイメージができていない〉
たくさん歩いて、段差やでこぼこ道などを経験すれば、子ども自身でも「つまづきやすい、転びやすい」をうまいこと処理できそうですが、明らかに歩いたり遊ぶ量が減っている。つまづいでも、次の足を出せば転ばないなど体の使い方のイメージがうまく持てていないことも原因のひとつだと思います。

〈内またやO脚は意外に転びやすい〉
専門的にいうと「内旋歩行」というのですが、股関節が内側に入っている感じで、内またで足が開かない状態で歩行していると、足が上がりにくいのでつまづきやすかったり転びやすかったりします。
本来は、ヒールストライクといってかかとから地面に足を着き、足底を地面に接地して、つまさきから上がるということを繰り返して歩行します。でも、つまづく・転ぶということは、つま先から行ってるということ。内またやO脚だと、つま先から行きやすくなりがちです。

親ができる、子供が転ばないためのトレーニング法は?

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「歩く経験をたくさん積む」ことが大切ですが、親子で楽しくできるトレーニングやストレッチなどはあるのでしょうか。身体が柔らかいと、関節がしっかり動いて、身体全体を動かしやすくなり、「つまずきにくい、転びにくい」身体づくりにつながるそうです。毎日の生活の中に少しでも取り入れて、運動することの楽しさを子どもに伝えたいですね。

〈短時間でも、親子で楽しく身体を使って遊ぶ〉
スクワット…ただやるだけでは、小さい子は続かないので、ボールをしゃがんで取るなど、遊び感覚でやってみては。
ぎっこんばったん…地べたに親子向かい合って長座して、その状態で手を繋いで交互に引っ張り合います。
飛行機ブーン…文字通り、うつぶせに寝て、両手両足を伸ばして飛行機のポーズ!
相撲…押す・ふんばるの動き

〈しゃがんで遊ぶ〉
しゃがまないで、すぐに地面にペタッと座ってしまう子が多いように思います。しゃがむことで、身体がバランスを保とうとするし、足腰も強くなってくるので体幹がよくなっていきます。足首が固い子はしゃがむのが難しいですが、習慣をつけることで少しずつ足首が柔らかくなり、転びにくくなっていくと思います。

〈荷物を持って歩かせる〉
バランスを保つ練習にもなるし、筋力をつけるという意味でも有効です。

〈あえて転ぶ経験をさせる〉
足場の悪いところや坂道を歩かせたりして、「こうしたら、こう転ぶんだ」という経験をさせると、次に「こうしたら転ばなくなる」という動きに変わっていきます。どうしても親の方が「危ない!」と思ってしまうので、難しいですが…(苦笑)

〈「あまりにも転んでケガをする」と心配なときにできるチェック方法とは?〉
あまりにもつまづく・転ぶということは、バランス力がかなり悪いということ。もし以下のことに当てはまれば、専門家に診てもらったほうがいいケースもあります。
・両足で立っていられない…止まっていられず、すぐフラフラする・歩き出す。
・ジャンプができない…2歳でできるようになるといわれています。
・片足で立っていられない…3歳でできるようになるといわれています。
・ケンケンができない…4歳でできるようになるといわれています。

子どもの靴選び、履かせるときのポイントとは?

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正しい歩行をするためにはもちろん、足の形をきれいにする意味でも、靴選びはとても大切だそう。きちんと合った靴で、足をちゃんとした位置に置くことで、本来の位置で正しく筋肉が発達することにもつながるそうです。靴選びのポイントや、履くときに気をつけることなどを紹介します。

〈選ぶときは靴を履かせるのではなく、中敷きで合わせる〉
「足のサイズをきちんと合わせる」これがとにかく大切です。靴にはほぼ必ず中敷きがあるので、それを取り出して子どもの足に合わせてください。靴を履かせてしまうと、靴の中で子どもがちゃんと足を伸ばせているか見えないんです。つま先余裕が0.5~1センチあるのが理想的です。
メーカーによって、または同じメーカーの中でもサイズ表示が同じでも微妙に大きさが違うことがあるので、必ずお子さんの足に合わせてから買ってください。

〈大きすぎても小さすぎてもダメ!!〉
すぐに大きくなるから少し大きめを買おう、これはNGです。靴が足より大きいと、靴の中で足が滑ってしまい、それを止めるために足指を曲げて固定しようとするんです。また、小さすぎても足指を曲げて履いてしまう。タコができるなどの、足のトラブルにつながってしまいます。

〈かかと部分が固くしっかりしたものを選ぶ〉
歩くときはかかとから地面に着くことから、かかと部分が固くしっかりしたものを選んでください。名のあるメーカーさんは割としっかりしていますね。もし足首があまりしっかりしていないお子さんには、ハイカットの靴がいいかもしれません。

〈履き方もとても大切!〉
子どもって、靴を履いたらつま先をトントンってしてフィットさせますよね。そうではなく、かかとにしっかり合わせて、トントンするならかかとでしてください。
そして、靴のテープをなるべくギューッとしっかりしめ、動かないようにします(足首部分を遊ばせない)。日本人って脱いだり履いたりが多いので、どうしても脱ぎやすいスリッポンのような靴を選んでしまいがちですが、それは足にとってよくないんです。

いかがでしたか。「あ、けっこう思い当たる…」という理由や原因、「そうなんだ!」と目からうろこの靴選びなどもあったのでは。たくさんのお子さんの歩行を見てきている専門家のお話は、うなずけるもの、参考になるものばかりでした。
とにかく便利な世の中、買い物に行かずとも自宅でネットショッピングができる、楽しいこともゲームなど家でできる。親子で外に出かける機会もかなり少なくなってきています。「つまづく、転びやすい」ことの原因はたくさんありますが、大切なのは「自らの足で歩いて経験を積むこと」。これがつまづきにくい、転びにくい足・身体を作っていくのだと思います。もちろん、気になることや「あれ?」と思うことがあったら、整形外科や専門家などに診てもらうことをおススメします。

田崎美穂子

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