2015.11.02
妊娠できる?できない?まずは卵巣年齢を知るAMH検査から!
戸田さと美の Woman Life “Care” Planning Vol.1
働く女性にとって、妊娠・出産をいつするか?どう産むか?どう育てるか? は、キャリアに大きく影響します。
そして、2人目以降では特に、不妊治療という道を選ぶ必要がある場合も増えてきます。
1人目にしろ、2人目以降にしろ、妊娠できるかどうかを知ることは、時期を考える上でも必要なことですよね。
連載初回の今回は、女性の”妊娠力”とイコールでないまでも、大きく影響している卵巣年齢を測定するAMH検査についてお話を伺ってきました。
伺ったのは、AMH検査をいち早く取り入れ、検診に組み入れることを推奨している浜松町ハマサイトクリニック院長の吉形玲美先生です。
卵子の数は生まれたときに決まっている?!
戸田さと美(以下:戸田)ずっと気になっていたのですが、AMH検査とはどのような検査ですか?
吉形先生:簡単に説明すると、卵巣年齢を調べる検査といえます。卵巣年齢というのは、実年齢に比例するわけではなく、個人によって差があります。実年齢と卵巣年齢の差を調べることができる検査ともいえると思います。
AMHとは、卵巣の中の発育卵胞から分泌されるホルモン“アンチミューラリアンホルモン”の略で、この血中ホルモン値がこれから排卵される卵子の数に相関していると考えられ、卵巣内にどれくらいの卵子が残っているかの目安となるのです。
戸田:血中ホルモン値からわかるのですね!では、卵巣年齢の評価の基準は何ですか?
吉形先生:女性は胎児のときすでに卵巣で卵子を作っています。実はそのとき卵子の数が最も多いんですね。生まれてから卵子はどんどん減っていくのですが、減るスピードが早くなるのがだいたい40歳前後といわれています。
ただ人によっては、30歳で急激に減ったりする方もいます。AMH検査で得られる卵巣年齢の評価基準は卵子の数を指標としています。
AMH検査は専門的な用語を使うと”卵巣予備能検査”といわれています。
よく勘違いされるのですが、卵巣機能=排卵や生理の周期を整える機能を調べる検査とは違うんです。
卵子が0になると閉経をしてしまうので、自分の卵巣年齢は今何歳くらいで、卵子が急に減りやすくなっているかという状況を把握することができる検査です。
30歳になった、40歳になった、節目で卵巣年齢も検査
戸田:私もそろそろ30半ばになるし、もう一人くらい子どもを産みたいと思っています。いつまで子どもが産める身体なのかが気になります…
吉形先生:それならやっておいて損はないと思います。AMH検査をされる方には、妊娠を希望しているけれどもなかなか上手くいかないという方が多く受けられますが、独身の方でも、30代になったとか、40代になったという節目に、自分が妊娠できる可能性があるかを知っておきたいという方も多いですね。
最近の妊活ブームや不妊による悩みがメディアで取り上げられるようになったことから、近い将来妊娠を希望する予定がない20代の方でも、将来のライフプランの参考にと検査を希望される方も増えてきました。
40代くらいの方は、ご自分の妊娠タイムリミットを知る目的で、20代の方は健康診断のひとつとして検査されるようです。
ここ数年で気軽に受けられるように
戸田:WEBや雑誌でもよく見かけるようになった“女性ホルモン”。実はメディアで卵巣年齢なるものがあると知りました。AMH検査を知ったのは最近なのですが、昔からあったものですか?
吉形先生:当クリニックでは、5年前から導入している検査なのですが、その頃はまだ一般的ではありませんでした。当時は不妊治療の中のひとつの検査として扱われることが多かったです。費用も高く、健康診断などで気軽にできるようなものでもなかったですね。
戸田:どうりで、最近になってよく耳にすると思っていました
吉形先生:そうですよね。この検査が一般の方に広まるのはとても早かったです。女性誌などが女性ホルモンなどについて取り上げるようになったことで、あっという間に広がり、すぐに費用も気軽に受けられる金額になりました。
10年くらい前は研究や生殖補助医療など限られた現場で行われていましたし、もっと費用が高くて気軽に受けられる検査ではありませんでした。
今でも研究で使用する高感度に数値を出す検査は高額ですが、そこまでの検査をしなくても、通常のAMH検査で十分卵巣年齢の目安を知ることは可能です。
戸田:私も最初に知ったのは雑誌の特集で『これは気になる!』と思って受けに来ました。いつまで産めるのかすごく気になります。不妊や少子化は社会問題ですよね
吉形先生:経済的にも社会的にも気になることだと思いますよね。”2人目の壁”というのもありますし。
生まれながらにしてその人が持っている卵子の数は決まってしまっているのです。例えば卵巣が小さい人と大きな人では、卵巣の中にある卵子の数には、差があるということにもなり、初潮が早かったから閉経も早いとか、初潮が遅かったから閉経が遅いというわけでもありません。
多くても少なくても、潜む病気に要注意!
戸田:検査の手順はどんなものですか?
吉形先生:採血で簡単に検査ができます。卵巣の機能については、生理中に受けるのがよいのですが、この検査は生理周期などに結果が影響されるものではないので、健康診断のついでに受けられてもいいと思います。
当クリニックでは、外来で自費診療としても受けていただくこともできます。
来院していただき、問診票に記入をした後採血をします。
結果は後日出ますので、クリニックにいらしていただくと、医師が検査結果からわかることをお伝えいたします。
戸田:検査結果はどのように捉えればよいものですか?
吉形先生:検査結果は0〜10の数値で出てきます。年齢に対しての平均値がありますので、それを参考にお話をします。
戸田さんの場合、34歳ですから標準値は3.5前後ですので、それよりも高い数値なのか、低い数値なのかで卵巣年齢がどれくらいなのかを判断します。
出典:浜松町ハマサイトクリニック
戸田:例えば、検査結果の数値が高すぎるということで何かわかることはあるんでしょうか?
吉形先生:平均値から大幅に高い場合は、卵が多すぎるということになります。実は、卵が多ければ多いほどいいというものではないんですね。
異常高値のような場合は、排卵障害や生理不順、病気の名前でいうと、多嚢胞性卵巣などの、排卵がスムーズにできなくて生理不順になるという病気が隠れていることがあるので、生理不順や無月経ではないかを伺ったり、卵巣のエコーをおすすめしたりしています。自由診療なので、患者様のご意向を伺った上で、診療を行っています。
戸田:では、低すぎる場合でわかることはありますか?
吉形先生:みなさん低い場合の方を気にされることが多いですね。
AMH数値が2を切ると、今後卵子の数の減るスピードが早まる可能性があるので、妊娠可能期間が短くなることが予想されます。
とはいえ、数値が0に限りなく近いという場合でなければ、自然妊娠の可能性は十分にありますので、生理が順調で子宮や卵巣に病気がなければ心配することはありません。
数値が低い場合で、妊娠を考えている方でしたら、基礎体温を測る、卵巣機能自体のホルモン検査を行うなど、しっかりと妊娠できる状態であるかを調べることをおすすめしています。
次回も、検査をうける重要性についてなど、吉形先生のお話が続きます!
吉形玲美先生 プロフィール
東京都出身・1997 年東京女子医科大学医学部卒業。同大学産婦人科の 臨床の現場で婦人科腫瘍手術をはじめ、産婦人科一般診療を手掛ける 傍ら、女性医療・更年期医療の様々な臨床研究に携わる。東京女子医 科大学准講師を経て 2010 年より同大学非常勤講師。女性予防医療を広 めたいという思いから、同年 7 月より浜松町ハマサイトクリニック院 長に就任。 更年期、妊活、生理不順など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意 とする。40 代以降の女性の健康の鍵を握る成分として注目される「エクオール」において は、世の中に広く認知される以前からその臨床研究をリードしており、エクオール検査を 日本の医療機関として初めて導入するなど、更年期医療に注力している。2015年10月に行われた学会で「エクオール」に関しての研究が学会賞を受賞。
戸田さと美 プロフィール
PETAGO(株)代表取締役。Woman Life Planning代表。
シングルマザーとして、そして女性として、従来の枠にとらわれない自身の価値観を独自の視点で発信し続ける。自身の経験も含め、女性の素敵な生活提案を行っており、ライフワークとして始めたセルフプロデュースが口コミで広まり、講演も多数行っている。
また、女性特有のココロとカラダのバランスを見つめなおし、より良いライフプランの設計・行動に移すための第一歩を見つけるプロジェクトとして「Woman Life Planning」を立ち上げ、代表を務めている。
【記事まとめ】Woman Life ”Care” Planning
鬼石 有紀
美容ライター、妊活コンサルタント