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2020.02.25

不妊治療の検査内容と費用など「不妊治療の基礎」を知ろう!


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不妊治療と聞いて、みなさんはどんなイメージを抱くでしょうか。「時間がかかる」「お金がかかる」「痛みや不調を我慢しなければならない」など、怖いイメージがある方もいるでしょう。確かに人によっては時間がかかり、お金もかかりますし、痛みをともなう治療もあります。

でも不妊治療には段階があり、すべての治療が高額なものというわけではありません。さらに助成金などもあり、社会の理解も進んできています。今回は不妊治療についての詳しい知識と、それを乗り越えるための夫婦の協力の仕方などをご紹介します。

不妊治療の基本について詳しく知ろう


不妊治療の第一歩は、夫婦で検査を受けることです。検査を受けなければ不妊の原因は分かりません。検査を受けることで原因がわかることもありますし、検査自体が女性の卵管の詰まりなどを改善し、それだけで妊娠可能になることもあります。基礎体温を付け始めることで排卵の時期がわかるようになり、妊娠しやすいタイミングがつかめるようになることもあります。

不妊検査はまず基本的な6大検査というものを受けることが多いでしょう。

・基礎体温…朝一番、動く前に毎日体温を測る家庭での検査
・子宮卵管造影検査…子宮から卵管へ造影剤を通すレントゲン検査
・子宮頚管粘液検査…精子の運動を助ける子宮頚管粘液の検査
・経腟超音波検査…特殊な経腟検査機器で子宮や卵巣の状態を診るエコー検査
・フーナーテスト…性交後の精子の動きを見る検査
・精液検査…マスターベーションで採取した精液中の精子の様子をみる検査

男性側の検査はひとつだけですが、女性側は5つあり、バイオリズムに合わせて検査する必要があるため1ヶ月以上はかかります。タイミングによっては2~3ヶ月かかってしまうこともあります。さらに詳しい状態を知るために、血液検査やホルモンの検査、感染症や性病などの検査も行われます。

検査で女性器や男性器にかかわる病気、ホルモン異常などが見つかった場合や、問診で性交困難などが発見された場合は、それらの治療からスタートします。女性の子宮筋腫や卵巣嚢腫などの病気や、男性の精索静脈瘤、EDなどの病気は不妊症の原因になることがあります。それらの病気の治療を行うことで、妊娠しやすくなるケースもあります。

またタイミング法を試してみることも多いでしょう。排卵の時期を正確に測り、そのタイミングに合わせて性交を行うという方法です。何度かタイミングを合わせても妊娠しづらい場合は、排卵誘発剤など薬の力を借りることもあります。この段階で妊娠するカップルもいます。

しかし、治療が完了しても女性側が妊娠しづらかったり、男性側の精子の状態が良くならなかったりすることもあります。その場合、最初に行われるのは「人工授精」という方法です。

人工授精
人工授精は、採取された夫の精液の中から、運動率の良い成熟した精子を回収し、女性の排卵後、妊娠しやすい時期にチューブなどを用いて女性の子宮内に送り込む方法です。ほとんど自然妊娠と変わらない方法とされています。この方法で妊娠したカップルのうち8割は、7回目以内に妊娠するというデータがあります。平均的には3~5回で妊娠することが多いようです。

人工授精でも赤ちゃんが授からなかった場合は、生殖補助医療と呼ばれる「体外受精」「顕微授精」へと移行していきます。

体外受精
採卵手術を行って排卵前の卵子を取り出し、やはり採取した精子を体外で受精させ、2~5日ほどかけてある程度発育し、「胚」という状態になったら、女性の胎内に移植します。すでに世界で400万人以上の子どもが体外受精で誕生しており、珍しい治療ではなくなっています。

顕微授精
体外受精を行っても受精しない場合、顕微授精に移行します。状態の良い精子と卵子を選び、精子をガラス管の先に入れて、卵子の中に注入する方法です。実はこの方法でも受精率は5割から7割とされています。かなり高度で特殊な不妊治療と言えます。

不妊治療専門の神谷レディースクリニックによれば、生殖補助医療によって年間4万人以上の赤ちゃんが生まれています。成功率だけを見ればそんなに高くないと感じるかもしれませんが、実際に多くのカップルが我が子を胸に抱く喜びを手に入れているのです。

不妊治療が有効なのは何歳くらいまでなの?
生殖補助医療とされる体外受精や顕微授精を何度行っても、受精しなかったり、移植した胚が育たなかったりして、妊娠できないことも少なくありません。その原因のひとつは、精子と卵子の質の低下です。そしてその大きな要因のひとつが、加齢です。精子も卵子も、加齢によって老化するのです。

精子も卵子も非常に細胞分裂が盛んな細胞です。そのため健康で元気な精子と卵子を得るためには、細胞の新陳代謝やDNAのコピーなどが正常に行われる必要があります。しかし活性酸素や糖化などによって、人の身体は傷つきダメージを受け続けます。それが老化です。新陳代謝は時間がかかるようになり、DNAのコピーにもキズがつくなどさまざまなトラブルが起こり始めます。

女性は30歳を過ぎると、卵子が老化し始めます。男性も35歳を過ぎると精子に老化がみられるようになります。そしてどちらも40歳を過ぎると、卵子・精子・そして受精卵を育てる身体自体が老化し、妊娠しづらくなってしまいます。どんなに医療が発達しても、卵子と精子に「受精する力」「受精させる力」がなければ妊娠は成立しないのです。

そのため、不妊治療にはタイムリミットがあります。だいたい40歳を過ぎると成功率はかなり低くなってきます。日本生殖医学会によると、体外受精・顕微授精を行っても45歳以上になると妊娠の可能性はほとんどなくなってきます。つまり、不妊治療のタイムリミットは45歳までと言えるでしょう。

それでもトライし続ける人はいます。しかし不妊治療にはお金がかかり、体力も精神力も大きくそがれます。今度こそ赤ちゃんが授かっていますように、という願いが砕かれる瞬間は、どんな女性でも胸を引き裂かれるような思いを味わうのではないでしょうか。何度もトライするということは、この胸の痛みを何度も味わうということです。

不妊治療のなかでも生殖補助医療と呼ばれる体外受精や顕微授精は、非常に高額です。そのため、近年は条件付きですが助成金が出るようになりました。大きな条件のひとつが、「年齢」です。女性の年齢によって、助成金が受けられるかどうかが決まります。そのため、助成金を受けることができる年齢をタイムリミットと考える夫婦も少なくありません。次項では、不妊治療にかかるお金と助成金について詳しく見ていきましょう。

不妊治療にかかるお金と助成金について
不妊治療にかかるお金は自費診療が多く、クリニックによっても治療内容によっても大きな違いが出ます。ここでご紹介するのは、ごく一部の例に過ぎません。目安にして、通っているクリニックにあらかじめ料金を訊いておくと安心して治療を受けることができます。

人工授精…15000円前後~55000円前後
体外受精…10万~30万程度
顕微授精…45万~ 55万円前後

こうした不妊治療には、助成金が出るケースがあります。人工授精に関しては、東京都など多くの都道府県・市町村で、不妊検査・人工授精までの一般不妊治療に対して1回に限り、5万円までの助成金が出ます。

さらに体外受精と顕微授精に関しては、やはり多くの都道府県・市町村で助成金が出ます。
・東京都の場合…初回の助成上限30万円
・宇都宮市の場合…初回の助成上限45万円

不妊に関する特定治療支援は各都道府県・市町村によって限度額や適用される治療が異なります。男性不妊に関する手術に適用される場合もあるので、お住いの地域の官庁・役所の窓口で詳しく説明を聞いてみてくださいね。

また、多くの場合夫婦の年収や助成される回数・女性の年齢に制限があります。特に女性の年齢制限は「タイムリミット」と大きく関係します。多くが40歳~45歳の間にリミットが設定されているため、不妊治療は一刻も早くスタートすることをおすすめします。

不妊治療を早くスタートするためには、不妊検査を一刻も早く受ける必要があります。不妊検査を受けるタイミングには「早すぎる」ということはありません。結婚前にブライダルチェックという形で受ける人もいますし、30歳前後で不妊に不安をおぼえて検査を受ける人もいます。

検査の結果、子宮内膜症や子宮筋腫・卵巣嚢腫といった女性特有の疾患や、男性の精索静脈瘤などの病気が見つかった場合、まずその治療に時間がかかります。完治してからの不妊治療や妊活になるため、一日でも早く検査を受け、妊娠に向けて動き出すことはとても重要なことなのです。

今赤ちゃんが欲しいと思っていなくても、いずれ「欲しい」と感じる時がくるかもしれません。また、子宮頸がんなど思わぬ病気がひそんでいることもあります。夫婦互いの健康のためにも、まだ見ぬ未来の可能性のためにも、少しでも早く検査を受けましょう。

不妊治療の限界と妊活中止を決める時…二人で今後を話し合う

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不妊治療をやめるとき
不妊治療や妊活をやめるとき、私の知人は夫婦でよく話し合ったそうです。そしてお互い仕事との両立が難しい、このままでは二人とも共倒れになってしまうということで、不妊治療をストップしたそうです。

不妊治療を「やめよう」と感じる瞬間は、カップルによって、そして男女それぞれによって違ってくるでしょう。男性が妻のつらい様子を見続けることに耐えられなくなって「やめないか」と持ち掛けることも、女性が更年期障害と不妊治療のダブルの重荷に押しつぶされそうになって「もう限界かも」と泣き出してしまうこともあるのではないでしょうか。

不妊治療をやめる「時期」は、夫婦が決めることです。もちろん夫婦で決断できないときは、主治医や両家の両親など、夫婦のことを考えてくれる信頼できる人に助言をお願いしても良いでしょう。どうしても思いきれないなら、身体と心、資金に限界がくるまで続けても構わないのではないでしょうか。いずれにしても、他人が「もうやめなさい」と止めることではありません。

最も悲しいのは、不妊治療に関することで夫婦の関係が崩れたり、両家の意見が割れたりして、夫婦が互いに愛情を失ってしまうことです。愛情の証として我が子が欲しかったはずなのに、そのための努力に疲れていつしか愛情を感じられなくなってしまったら、意味がありませんよね。

不妊治療に迷いを感じたり、不安や疑問、相手や医師への不信感を覚えたり、両家の両親からのプレッシャーなど、とにかく「つらい」と感じることがあったら、二人でたくさん話しましょう。答えが出ず、愚痴の言い合いで終わってしまっても、慰め合って終わっても良いのではないでしょうか。ひとり溜め込んで、大好きだった人への愛情を失うくらいなら、どんどん話して互いの思いをもっと理解しましょう。

「諦める」のではなく「二人で生きる」選択
不妊治療は「諦める」のではありません。諦めるのではなく、「今後の人生を、二人で生きていく」選択をすることです。
子はかすがいだけれど、愛情が無い夫婦をつなぎとめることは難しい
不妊治療を続けるうちに仲違いが続き、愛情を感じなくなってしまったけれど子どもだけは欲しい……そんなカップルもいます。でも、子どもが欲しいからという理由で、愛情のまったくない二人が性交渉だけを行い、赤ちゃんを授かったとしても、冷戦状態が続いていたら赤ちゃんにとって幸せな家庭とは言えません。

赤ちゃんさえ生まれれば夫婦の仲は元に戻ると考えている方がいるのなら、それは間違いです。赤ちゃんが生まれた後に、夫の育児への協力不足などが原因で夫婦仲の悪化が急速に進む「産後クライシス」も問題となっています。夫婦仲は夫婦で愛情を育てようと気持ちをひとつにし、互いに歩み寄る努力がなければ修復できません。赤ちゃんを産んだからといって、すべてが丸く収まるわけではないのです。

だからこそ夫婦でたくさん話し合い、触れ合うことをやめずに愛情を育て続けることがとても大切です。そのうえで赤ちゃんを授かることができれば、ラブラブで互いを尊重し合う両親がいる家庭は、赤ちゃんにとってとても素敵で幸せなゆりかごとなるでしょう。全身に愛情を浴びて成長し、安心して巣立ちの日を迎えることでしょう。

そして、もし不妊治療をやめると二人で決める日が来た時、夫婦の間の愛情が大きく育っているのであれば、「不妊治療をやめる」決断はそのまま、「二人の人生を生きていく」決断となります。

妊活を「二人の幸せ長生き活動」へ
そして不妊治療をやめて夫婦二人で生きていく決断をしたとしても、妊活をやめてしまう必要はありません。妊活は、栄養バランスのよい食べ物を三食きちんと食べたり、夫婦で軽い運動習慣をつけたり、タバコやお酒をつつしむなど、健康に良い事ばかりです。また夫婦で触れ合う機会を増やすなど、夫婦の愛情を育てることにもつながります。

不妊治療をストップし、妊活の必要性を感じなくなったら、今度は「二人で幸せに長生きする活動」として続けてみてはいかがでしょうか。二人の幸活のはじまりです。夫婦二人で生きていくとき、互いの健康状態は何よりも大切なことです。そして、健康な身体と冷めることのない愛情を維持していれば、もしかして近い未来に思わぬ奇跡が起きるかもしれません。ヒトの身体には、不思議なことが起きるものです。

そんな奇跡が起きても起きなくても、愛する人とずっと一緒に仲良く暮らす人生はとても幸せで穏やかなものではないでしょうか。この夫婦で生きていくと決めたなら、どうすれば健康に、優しい気持ちで生きていくことができるのかを、夫婦でたくさん話し合ってみませんか。

※この記事は2018年6月に公開されたものです。


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