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2020.02.21

夏休みの『読書感想文』簡単&上手に書ける方法!ドリルを使ってみよう


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夏休みの自由研究と読書感想文。この二つは小学生の子を持つワーママにとって、頭が痛い二大課題だと思います。何からやればいいのかわからない、どうすれば楽しんでできるのか、自分も苦手だったので良いアドバイスができない…。そんな悩めるワーママに強い味方が!その名も「読書感想文 書き方ドリル2018」。
著者は思想家である大竹稽先生。「読書感想文は、色々な切り口で物事を見ることができ、それを適切に分析する、まさにクリティカルシンキングだ!」と、2014年から出版していらっしゃいます。小学低学年から高学年向けの課題図書を完全網羅し、基本の“型”となる「7つの質問」をそれぞれドリル形式で展開しています。
オリジナリティあふれる感想文に導くためのヒントが見つかるドリルですので、しっかり自分で考える力が養われます。ただ、読書感想文が苦手な子供にドリルと課題図書を渡せば、子供が一人で上手に書けるか、というと決してそうではありません。親がどのようにか関わるかも大切なポイントのです。そこで著者である大竹先生に読書感想文とこのドリルの活用方法について伺いました。

子供たちは読者感想文のどこにつまずく?

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編集部:そもそも子供たちは読書感想文を書くにあたって、どこにつまずくのでしょうか?

大竹稽先生(以下、敬称略):まず、本を読みたがらない子が多いですよね。その場合は「ただ本を与えて読ませる」ではなく、「親子で一緒に楽しむ」というスタンスを取った方が良いと思います。課題図書って大人でも楽しめる内容になっているので、ぜひお母さんも一緒に読んでほしいです。子どもを“本好きにしたい”と思うなら、まずはお母さん自身が本を読む、というのが近道かと思います。

編集部:確かに。日々の生活の中で、家でゆっくり読書をする機会は本当に減りました…。夏休みは親子で一緒に読書をする機会にしても良いかもしれませんね。では無事に本が読めた! その次の段階でつまずくのは?

大竹:一回読んで、すぐに書こうとするのもつまずきポイントです。「早く終わらせたい」という気持ちの表れですよね、全く楽しんでいません。楽しむためには、じっくり時間をかけて味わうこと。1回目はまだ何を書きたいかが雑然としていますが、2回目、3回目…と繰り返し読むと、自分が気になっていることモヤモヤが見えてきます。これができれば後は早い。お母さんたちはここまでじっくり見守ってあげれば大丈夫です。

編集部:すぐに書こうとすると書くことがなくなり、字数稼ぎをして、結局、大変なことになります…。やっつけ仕事になりますものね。

大竹:そうなのです。何ごとにも下ごしらえが一番大事です。ここさえ導いてあげれば、あとは流れるように書けますよ!

下ごしらえ=本を読み返すことと、親子で対話をすること

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編集部:本を読み返す時は、どんなことを意識すれば良いのでしょうか?

大竹:気になったところにどんどん付箋を貼っていくと良いです。1回目は好きなだけチェックしてもいい。2回目読んだときは、そこからどんどん絞っていきます。そうすれば3回目は…もうテーマはほぼ見えてくるはず。

編集部:高学年なら自分で付箋も貼っていけると思いますが、低学年の場合は最後に「どこが気になった?」と問いかけながら、一緒に付箋を貼る感じでしょうか?

大竹:そうですね。この作業は少し手間がかかりますが、ここが重要。お母さん自身が“宿題”だと思っていると、苦行でしかありません。そうではなく、一つの本をきっかけに「子どもと一緒に対話をする」機会と捉え直して欲しいのです。

編集部:対話ですか?

大竹:私はお寺で哲学教室も開いているのですが、子どもと話をするときに、相手を否定して自分を肯定するようなディスカッション(討論)はしません。ダイアログ(対話)です。まず他人の意見を受け入れる、否定せず自分の意見と融合し、そしてさらにもう一段階、意見を昇華させます。このダイアログを進めるポイントは、とにかく子どもの言うことを褒めることです。「すごく良いこと言うね!」「その発想、びっくりしたよ!」と合いの手を入れていくと、どんどん子ども自身の気持ちが乗ってきて、いろんな意見を言い始めます。
こうした子どもの雑然とした自由な発想を、整理して道筋を立ててあげる作業が大人の出番かと。

編集部:それならできそうです!

大竹:あとは、お母さん自身が楽しむことです。例えば、低学年向けの課題図書『きみ、なにがすき?』は「モノを贈ること」の難しさをテーマにしています。そこで一緒に話をしながら考え、実際に家族間でモノを贈りあってみるなど、家族のイベントとしてやってみる。そうすれば、しっかりとテーマが見えて、書きたいことが見えてきますよ。

編集部:なるほど! 何事も楽しむことって大事ですものね!

読書感想文をうまく書くポイントは?

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編集部:では、本を2〜3回読み込んで、気になるところをチェックして…子どもが書きたいテーマが見えてきた! 実際に書くとなると、どうすれば良いでしょうか?

大竹:これまで母さんと対話しているし、体験もしている。この段階に来れば、これまでのことを素直に書けばオリジナリティ溢れる作品になっていると思います。もし賞を狙うレベルにまで持っていきたいなら、わかりやすくするための“型”が必要ですね。空手にも型があるのと同じように、感想文にも基本の型から教える必要があるかと。

<ポイント1>「7つの質問」について考えてみよう
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大竹:『読書感想文書き方ドリル」ではその“型”について、下記の「7つの質問」に答える形式になっています。そして各作品の解説を交えながら、しっかりとした感想文が書ける仕組みになっているのです。

Q1. この本のあらすじは?どんな話だった?
Q2. 注目したところは?発言や場面を挙げてみよう。
Q3. 日本昔ばなしや寓話と比べてみよう
Q4. この本のテーマは何だと思う?
Q5. この本を読んで、問題提起をしてみよう
Q6. 3であげた話を比較しながら5の問題提起について考えよう
Q7. 5で書いた問題に対して、どんな答えを出す?

これらは子どもに一人でやらせる、というよりは、子どもたちの考えを対話しながらうまく引き出すための “お母さんへのヒント集”と思ってもらえれば良いかと!

編集部:そう考えればいいのですね!

大竹:声かけのヒントになれば良いな、と思っています。対話をしながら、素直な子どもの意見を引き出すための手段に使ってほしいですね。

<ポイント2>子どもが素直に感じたことを、素直に楽しもう
編集部:子どもの素直な思いを引き出す方法ってあるのでしょうか?

大竹:大人が常識的な正解で押しつぶすのではなく、素直に子どもが感じたその感覚を大事にしていくことです。そうすれば、時として、大人を超えるものが生まれるのです。その素晴らしい瞬間をお母さんにぜひ味わって欲しいです。

編集部:そうした子どもの素直な発想にも上手く反応できず、終わってしまっていることも多々あります。

大竹:ただ驚いて感動するだけでいのです。私も教室では「へー! すごい!」しか言っていません(笑)。大人にはない素質が備わっていますから、子どもの発想の素晴らしさにいつも感動します。ただ、賞をとるためにはある程度の論理性も必要ですが、たとえ論理性がなくても、大人からは出てこないような着眼点が出れば感動させられる。その時点で勝ちですね。

編集部:子供の言ってくる発想を単純に楽しめば良い、と?

大竹:そうなのです。素敵なものを作ろうとか、評価を気にするというよりは、子どもの素晴らしさに気づいて楽しんでいくことが大事です。「聞いてくれる大人がいる」というだけで、子どもたちは意見をどんどん言ってきます。それは、素直な気持ちを吐露できる貴重な機会にもなります。

<ポイント3>寓話や昔ばなしから引用する
編集部:どうして寓話から引用するのですか?

大竹:寓話っていろんな角度から話し合いできるので本当にオススメです。ただ、大人が “答え” を教えるのをどれだけ抑えて、子どもから素直に引き出すかにかかってきます。例えば浦島太郎の「玉手箱の中身は何だった?」という問いに対して、「時間」という答えはまぁ出るのですが、「許し」と答えた子がいました。竜宮城で過ごした時間は罰だったわけです。自分だけ楽しい思いをしたからと言うのです。

編集部:ものすごく深いですね…! こんな意見を言われた日には、見る目も変わりそうですね!

大竹:哲学教室に通っているお母さんの感想を聞くと、「うちの子ってこんなすごいこと考えていたんですね」と驚かれる方が多いです。そう言う子に限って、ふだんは学校や家で自分の意見を言ってこないので、お母さんがハッとさせられて、そこでその子の才能に気づくということが本当によくあります。

子ども自身が考え、素直に表現できるチカラを

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大竹:「できるだけ時間をかけずに簡単に、そして良いものを」と求める方にはなかなか応えられないと思いますが、単純に子どもの発想を楽しんであげてほしいと思います。思いも寄らない球を投げてくるときもありますし、それが大暴投であっても受け止めてあげる。「うちの子、天才!」と思って。

編集部:課題と思わないで楽しむのが大きなポイントなんですね。子どもって私たちが思っている以上に、答えのない問いについても考えるのが好きですよね。そういう「問い」をこっちが用意できていないだけで。

大竹:素直な、素朴な疑問で良いのです。昔ばなしの「かさこ地蔵」だったら、「どうしてお地蔵さんたちは夜に持ってきたのだろう」とか。

編集部:そうか、難しくなくていいのですね。それなら日々の読み聞かせからもどんどん答えのない問いを出せそうです。

大竹:これを続けていくと常識にとらわれず、気持ちの裏にある何か、気づきを引っ張り出してあげることができます。

編集部:読書感想文ってこうしてでき上がるのですね。考えたこともありませんでした。

大竹:価値ある課題図書が選ばれていますので、これをきっかけに、日々子どもたちと対話してもらえれば、と。後は、大切な時間や家族イベントを演出するためのツールとして使ってもらえれば。高学年の課題図書に「こんぴら狗」という本がありますが、「じゃあ実際に金比羅さんにお参りしてみようか!」と。すると夏の旅行にもなりますし、実際にお参りしてから読み直すとまた、感じ方も変わると思います。

自ら進んで読書する子に育てるには

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編集部:これをきっかけに本好きになってくれるといいですね。

大竹:そうですね。今は我々の子ども時代と違って、遊びの選択肢が本当に増えています。一方で、働くお母さんは時間的に余裕がない。そんな中でも、お母さん自身が好きな本を読み、その本に対して子どもに話をする。そんな楽しい時間を作って欲しいです。
この課題を良い機会だと思って「本を読む」ということに、おうちの皆さんで取り組んでほしいです。子どもとの限られた時間も濃密になりますよ。

編集部:入門しやすい本選びの基準などはありますか?

大竹:本好きの子を持つご家庭を何組も見てきましたが、皆さん子どもが読みたがる本を好き勝手に選ばせていますね。お母さんは環境づくりだけで、内容まで指示する必要はないと思います。
最初は「かいけつゾロリ」とか「ハリーポッター」とか…シリーズものが入りやすいと思います。好奇心の方向は素直に伸ばしてあげて、毎日少しずつでも続けていくことが大事です。

最初は子供一人でドリルに書いていけばでき上がるのかと思っていましたが、そうではなく、親が積極的に関わるためのきっかけ、ヒント集だったのですね。それに、読書感想文が対話をするきっかけとなり、家族イベントのきっかけとなり、そして子供が本好きになるきっかけにもなるなんて…! 何事も課題と思わないで、楽しむ姿勢が大事だな、と思いました。

【PROFILE】
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大竹稽 思想家、教育家、作家。
1970年愛知県生まれ。旭丘高校から東京大学理科三類に入学するも、医学に疑問を感じ退学。その後、私塾を始める。現場で授かった問題を錬磨するために、再度、東大に入学し、そこでフランス現代思想を研究しながら、禅の実践を始める。お寺で哲学教室を開きながら、著作や連載を通じて、道徳と死の問題に挑んでいる。「お寺で哲学」は港区三田龍源寺、目黒区五百羅漢寺、江東区深川慧然寺、渋谷区広尾香林院、鎌倉正統院ほかで開催中。https://kei-ohtake.com

※この記事は2018年8月に公開された記事です。

飯田りえ

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