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2020.02.19

これってモラハラ?夫から受けるモラハラ問題について専門家に聞いてみた!



「これってモラハラなの?」
度重なる夫の暴言やバカにするような態度に、「モラハラ」という言葉が頭をよぎることはありませんか?

モラハラとは「言葉や態度で、人格や尊厳を傷つける虐待行為を繰り返すこと」です。「パワハラ」は地位や権力があるといった優位性を利用し、精神的、身体的に相手を威圧し追い込むことですが、モラハラは職場の上司と部下といった、立場的な上下は関係なく、夫婦、友人、親子でも起こりうることです。

ただ、モラハラ行為と判断するには、かなりあいまいなところがあって、当人同士にしか理解しにくい面があるのが特徴です。
特に夫婦間のモラハラは、プライベートなことに関わり、複雑です。「復職してから夫はずっと不満げで、文句ばかり言う」「時にはひどい言葉で私を罵倒する」人には言いづらい、こんな悩みを持っている人は、たぶん、思っている以上に多く、そして「でも、これがモラハラなのかわからない、モラハラだとして、どう対処したらいいのかもわからない」ことが多いと思います。

今回は、いじめ問題やパワハラ・モラハラについて詳しい株式会社マモルの代表・くまゆうこ(隈有子)さんに夫婦間のモラハラと対処法について伺いました。

どんなことがモラハラにあたるの?


たとえば「うちの奥さんは何もしない」「なにもできない」といったことを外で言いふらしたり、ことさら大げさな話にして「うちの妻はどうしようもない」などと身内や近しい人に言うのも、モラハラの一種と言えます。

夫が職場の飲み会でちょっと妻の愚痴を言うのならいいのですが、妻のネットワーク内で「こきおろす」のはひどい行為です。

洗濯もまともにしない、ウチのはご飯なんて作れませんよ、女とは思えません、どうしようもないダメ女です、なんてことを言う。冗談で口にするレベルではなく、悪意があって、しかも継続的に行う言葉の暴力や妻を貶めるような行為は、モラハラと言えます。特に共働きで多いのは、このパターン。
逆に専業主婦やパートタイムだと、夫が上から目線で「お前は稼いでないのに文句を言うな」というスタンスからくるモラハラが多いです。稼いでいない、能力がない、ダメな女だ、と決めつけるのです。

モラハラでは、何を言っても否定するケースも目立ちます。歯ブラシの並び方ひとつにもケチをつけ、夕飯にハンバーグをだせば「なんでハンバーグなんだよ」と言い、焼き魚を出せば「なんでハンバーグじゃないんだよ」と言う。もはやなんでもいいんです、あれこれと文句をつけ、最終的に妻のことを全否定する。

こんな夫には何を言ってもムダで、結局、妻は口をつぐみます。それをいいことに、夫の言葉はさらに激しくなり、完全なモラハラ状態に陥るわけです。

実はどれも同じパターンなんですね。最終的に「お前はダメな人間だ」と貶め、自尊心を崩そうとする。言葉の暴力は侮れません。

夫からモラハラを受け続けるとどうなるのか


「お前はダメだな」「最低だな」と毎日、一番身近にいる夫に言われ続けるストレスは想像以上のものです。最初のうちはケンカをしたり、言い返したりもするでしょうが、そのうちに黙って聞いてしまうようになり、無意識のうちに(わたしはダメなんだ、夫がいるおかげで暮らせていける、だから夫にたてついてはダメなんだ)と自分自身を強く否定するようになってしまうのです。一種の洗脳に近い状態ですね。

ひどいモラハラを受けている女性は、夫の顔を見るだけで恐怖感を覚え、帰宅して玄関があく音に動悸が高まり息苦しくなる。夫の前に出ると言葉がでない、声が出なくなってしまうという人もいます。

やがて夜眠れなくなったり、めまいがしたり、体調不良も出てくる。それをまた、夫は「だらけている、なまけている」「どうしようもない」とまくしたてる。ますます妻はおびえ、傷は深くなり、痛みさえも感じなくなってしまい、日常的な言葉の暴力をただただ受けて、心も体もボロボロになってしまう・・・そんな悲惨なことも実際にあります。

エスカレートするモラハラと依存という問題


モラハラの問題は、エスカレートしていく怖さですね。わたしは子どものいじめに関する問題にも取り組んでいますが、非常に似たものを感じます。
つまり、最初はちょっとした八つ当たりだったかもしれないこと。きつい冗談だったかもしれないこと。発端は小さい、火種も小さい。しかし、それでおさまらずにエスカレートしていくと、深刻化したモラハラになっていきます。

いじめの問題でも、最初は「からかっていただけ」が、だんだんとエスカレートしていくことはよく見られます。この話をすると、皆さん「なぜ、やめてと言わないんだ」と言うのですが、こうした言葉の攻撃をずっと受けていると、なかなか反論できなくなってしまうんです。
「お前はオレ以外とは結婚できないな」「お前みたいなヤツは最低だ、オレがいるから何とかなっているんだ」毎日言われ続けると、(そうだ、わたしはどうしようもない人間で夫がいないと生きていけない)こんな風に思えてきて、夫に依存してしまう。モラハラは段階が進むにつれ、依存という問題も生まれてきます。

夫に依存して生きている妻、という自分から逃れられないから、夫がいなくなったら生きていけない=夫の言うとおりにしなくてはいけない、と考え、反論したり、やめてくれと言えなくなってしまうのです。

加えて、夫婦間のモラハラでは、他にも「イヤと言えない」「他の人に相談できない」理由があります。
自分が虐げられていると誰かに打ち明けるのはとても難しいことですし、また、子どもの父親でもある夫、一見おだやかに見える家庭を自ら「こんなヒドイ環境なんです」と外に言い出すことができない。モラハラ系の夫は、案外と外では「良い夫」であり、子煩悩であったり、周囲から「優しい旦那さんでいいわね」なんて言われて、妻は家庭内にある闇の部分を口にできない状況に追い込まれてしまいます。

夫婦間のモラハラは、なかなか外に出てこない。そのために、事態は余計に深刻化してしまう。悪循環です。

モラハラへの対処法は?


まず、一番いいのは「相手に言う」ことです。もっとも、これが難しいのがモラハラなのですが、ただ最初のうちであれば、夫自身も相手を傷つけていることに無自覚という場合もあります。とにかく「イヤだ」「とても傷ついた」と伝えることですね。

しかし、実際にはそれができないケースが多く、またモラハラをするような夫は、少々言い返されたところで、それ以上に畳みかけるように言葉や態度で相手を屈しようとさせるタイプが多いのも事実です。勇気を出して口にしてみたけれど、徹底的にやり込められて、それ以降、プツリと黙ってしまうケースは少なくありません。

こうした状況では、とにかく「誰かに話すこと」がとても大切です。たとえば「わたしのこと、夫が何かとバカにするの、耐えられないわ」なんて話をすると、他のママ友も「ウチもそうよ!」なんて感じで、共感をもって受け入れられ、互いに打ち明け話になることもよくあります。

モラハラの状況は千差万別ですが、比較的軽い段階であれば、こうして誰かに訴えることで、解決の糸口を見つけられる場合もあります。自分を徹底的に否定する方向に落ちてしまう前に、「夫のほうがおかしいんだわ!」「みんなもそう感じてるのね」と自分の考え方を立て直すことができるのです。
信頼できる友人や、ママ友に「こんな風に言われちゃったの」と少しずつでも話せれば、「もっと怒らなくちゃダメよ!」とアドバイスされ、ハッと目が覚めるように「自分が受けている理不尽な扱い」に気付くパターンもありますから、納得がいかない夫の言葉を、誰かに話してみることはとても大切です。

もし、夫に対して話してみようという気持ちになれたら、なるべく理詰めで話すとうまくいきやすいようです。あなたはこう言うけど、わたしはこう思う、なぜなら、といったようにです。あるいは、「バカと簡単に口にしないで欲しい」と具体的にやめてほしい言葉を指摘することです。
モラハラする夫婦関係では、実は奥さんがひとりで家事も育児も仕事もしている、いわゆるワンオペ状態のことが多いのです。そんなに頑張っている妻に、夫はひどい言葉を投げかけ、お前はできない女だと断定する。それに対しては「1ヵ月、仕事から帰宅して、今わたしがやっていることを全部あなたがやれるのか、やってみてから言ってほしい」とストレートに言ってもいいのです。

モラハラをする夫に向かって話す、信頼できる友人や身内に話す。ひとりで抱えこまないことが大切だと思います。

専門家に相談する方法もある


それから、やはり専門家に相談するのもひとつの選択肢だと思います。「これってモラハラなのかしら」と自分で判断しきれず、ずるずると言葉の暴力を受け続け、気付いた時には深い傷をうけて立ち直るのに時間を要することも多いのですが、もし少しでも「これってどうなの?」と思ったら、相談することで早い解決につながることは多く見られます。

ネットで検索すれば自治体が行っている相談会などが見つかります。DVや言葉の暴力を含めて、相談員が話を聞いてくれます。第三者に話すことで気持ちが整理できるメリットもありますね。

弁護士に相談する方法もありますが、こちらは少しハードルが高いかもしれません。深刻化している場合には、今すぐにでもモラハラやパワハラに強い弁護士の先生に相談するのがベストですが、なかなかそこまで行動できない状態になっているのが実情です。ですから、最初は誰かに話して、その人が「そこまでいくとおかしいよ! ちゃんとしたところで相談したほうがいい」と背中を押してくれるとか、「ウチでも似たようなことあるよ、ハッキリ夫に言い返したほうがいいよ」とアドバイスしてくれることで、どうしても内へ内へと落ち込んでいきがちなモラハラ被害者が、「あなたは間違っている、わたしは頑張っている」と自己否定から肯定感へと少しずつ意識を変えていけることはありますね。

わかりづらい「モラハラの実態」

とにかく、モラハラはわかりづらいのです。すべてにおいて、です。

どこからがモラハラなのかがわかりづらい。
自分が受けているのはモラハラなのか判断できない。
モラハラしている夫もモラハラしているとわかっていない。
言葉の暴力の範囲がわからない。
継続的というが、どの程度続いたら「継続的」なのかがわからない。

わからない、あいまいなことだらけなので、本来は対処しやすい初期の段階で、戸惑ったまま、つい状況を受け入れてしまいます。しかし、ずっと否定され罵倒され傷つけられれば、自尊心そのものが薄れていき、感覚が鈍ってしまい、そうなると、モラハラから抜け出すきっかけがつかめなくなってしまいます。

いじめもモラハラも、なるべく早い段階で「ちょっと、これはダメじゃない?」と自分に問いかけ、相手にも言葉にして伝えることが大事なのだと思います。それをするには勇気がいる、だから、支えてくれたり的確なアドバイスをくれる友人や第三者を必要とするのです。

取材協力/株式会社マモル

大橋 礼

大橋 礼

年の差15歳兄弟の母。DTP会社勤務後、フリーで恋愛・料理・育児コンテンツを執筆中。今や社会人長男のママ仲間とは「姑と呼ばれる日」に戦々恐々しつつ、次男の小学校では若いママ友とPTAも参戦中。飲めば壮快・読めばご機嫌!本とお酒があればよし。


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