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2020.02.27

「夫からのモラハラ体験談」夫に教育され支配下に置かれた女性の言葉



モラハラの体験というのは、本人も自覚がなかったり、混乱して、よくわからない状態というケースが少なくありません。モラハラを受けているという女性に電話取材をしても、最初のうちは口が重く、なかなか「どんな状況か」を語ってもらえないことが多かったです。

実際に会って話ができた女性はひとりだけで、すでに彼女は夫のモラハラから抜け出し、その経験談を周囲の友人に話をしていました。そのため、わたしと会うことも話をすることも承知してくれたのです。

彼女は「モラハラは、されている真っ最中は、そもそも、これはモラハラだってわかっていないことも多いんです。モラハラぎみの夫のことなら話せるでしょうけど・・・。本当にひどいことをされていても、夫を悪く言うことができないんです。夫は悪いのではない、自分が悪いからだって思ってるから」最初にこう言って、だから、取材は難しいと思いますよと言われました。

その彼女が語ってくれたことは、次の通りです。文末には、公的機関の相談窓口も紹介しています。

何もできない自分を導いてくれる夫と思っていた


今思うと、教育されていたんだと感じます。いろいろあって、結局離婚して、いまは全く、元夫とは会っていません。

夫の両親は、父親は小学校の校長先生だった人、母親は中学の保健体育の先生でした。夫も教職を目指していたようなのですが、理由はわかりませんが途中であきらめたらしいです。大学卒業後は、大手メーカーに就職、営業職に就きました。

わたしが高校中退してカフェでバイトしている時、営業の途中で何度もくる夫と話をするようになり、交際となって結婚したんです。夫の家庭はみな、何かしら教育に携わっており、夫だって大手メーカー勤務なんだから、なにも負い目を感じることないのに、やはり、何かあったんですかね。
なんでも自分の言うことをきき、思い通りに教育できる人間を無意識に探していたのだと思います。わたしが高校中退しちゃって、と打ち明けた時はとても優しい感じで「大丈夫だよ、大学出たって遊んでばかりのヤツだっている、学歴じゃなくて、学ぼうという気持ちさえあれば、変われるよ」と言われました。

当時、高校を中退し、親には泣かれるし、将来の展望もないし、周囲も冷たいなと勝手に感じていたので、大人の男性である彼から、いろいろとアドバイスを貰ったり、真剣に相談にのってくれたりすることが、とても頼りがいがあると感じたし、素晴らしい人だなと思ったんですね。
結婚当初から、指導されてる感はありましたが、わたしは年下でしたし、自分は夫とくらべて「知らないことばかり」と思っていたので、言われるままにしてました。

それから、少しずつ歯車が狂ってきた感じで、だんだんと「指導」「指示」がエスカレートしてきたんです。もうなんでもかんでも、わたしに指図するようになりました。

朝、家を出るまえに「今日やるべきこと」のリストを渡され、おわったらマーカーで消していくように言われました。数時間おきに報告のLINEをして、例えば洗濯物にアイロンをかけて畳んだものを写メして送りました。終わってないことがあったり、言われたとおりにきちんとできていないと、帰宅してから、夫に「これから説教をするけど、お前のためだ。ちゃんと聞けよ」と言われて・・・最初は30分程度だったのに、最後のほうは2時間とか3時間とか。

私は正座をし、夫はソファーに座って、わたしに向かってエンエンと「こうするべき」「ここが間違っている」と指摘し、わたしが「はい、そうします」「これから気をつけます」と答えていました。「じゃ、どう具体的に改善するのか明日の朝までに書いておけ」と反省文みたいのを書かされたりもしました。

外面が良い夫とダメな妻という図式


不思議なのは、そうされても、自分は何もわからないから、夫がこうして教えてくれてるから世間で生きていけるのだと思っていたこと。うまく言えないんですが、わたしは未熟だから、夫にこうして教えてもらわないとダメなんだって、なんか思い込んでいたんですね。

反省文を書いて夫にだし、夫が赤鉛筆で添削して返してくるんですよ。今思うと、絶対に変。おかしい。この辺りが実際に経験してない人にはわかってもらえないと思うのですが、夫ではなく、自分の感覚も狂ってきちゃってるんです。だから、わからない、気付かない。やっている本人、夫もモラハラどころか、「妻のために教育してやっている」と、良い事をしてやっているぐらいに思っているんです。

子どもが生まれて、ママ友ができて、ちょっと世界が広がりました。そして、いろいろな人の話を聞いているうちに、夫はおかしいのではないかと初めて疑うようになりました。

夫はなんていうか世間的にはとても良い人だし、営業成績も良くて、人あたりも良いんですね。周囲から見ると、とても「良い人」だから、おかしいかも?と思いはじめても、なかなか誰かに言い出せませんでした。わたしの言うことより、夫の言うことを信じるだろうし、まだその時点では実際に自分自身も「ちょっとあれだけど、でも、やっぱり夫がわたしをここまで育ててくれた、みんなに素敵な家庭と言われるようなウチを作ってくれた、夫の言うとおりにしていればいいのだ」と半分は思ってもいました。

ママ友たちからも、「優しい旦那でいいわね」とよく言われましたし。うちの親戚の集まりとかも必ず出てくれて、そういう時は私の母を気遣ったり、親戚の子ども達とゲームで遊んでくれたり。一家の中では、わたしは落ちこぼれでしたから、母も含め周囲から「よくあんたみたい子を、あんな出来のいい、エリート男性がもらってくれたねぇ」などと言われてました。

モラハラに気付いてから、再び自分の人生を取り戻すまで


ただ、ちょっと姉だけが、私と夫の関係が少しおかしいと感じていたみたいです。「なんでそんなに夫の顔色ばかり気にしてるの?」と聞かれました。はじめは「そっかな~、別にそうでもないけど」とあいまいに答えていましたが、私自身も「これはおかしい、このままじゃダメな気がする」と思い始めて、それで、おそるおそるというか、「こういうことされてるんだけど、おかしいと思う?」と姉に相談しました。

姉は即座に「モラハラだよ! あんた、何やってんの」と。そこからは正直に言うと、わたしというより、うちの実家が出てきて、話し合いをして、って感じで、最初のうちはわたしは他人ごとみたいな風に思えました。あれよあれよと引き離された感じ。引き離されて、最初は逆に「わたしひとりじゃムリ、やっぱりいろいろ言われても夫のもとのほうがいいのではないか」と何度も思って、子どもを連れて実家を出ようとしたことはあります。

でも、落ち着いて考えたり、母親や姉と話していると、やっぱり元夫がおかしい、精神的におかしいのだから、もう夫婦の関係はきっぱりと切って、子どもとふたりで頑張ろうって思えるようになりました。

心がフラットというか、何かに動くことがなくなってて、夫の命令にしか反応しなくなっていたのが、少しずつ、また針が動き出して、時間がまわりはじめた、という感じでした。

今になって、あれがモラハラなんだなぁと思うけど、本当にマインドコントロールされてしまった風になると、わからなくなっちゃうんですね。

▼三鈴さん(仮名)44歳談

モラハラかなと思ったら「ひとりで抱えこまないこと」


今回、モラハラについて様々な人のお話を伺いました。

・最初はそれほどひどくない
・モラハラを受けている自覚もない
・子どもの為や生活などを考え我慢してしまう
・夫の嫌がらせや暴言がエスカレートしていく
・反論すると徹底的にやり込められるので黙認するようになる
・次第に自分の気持ちがわからなくなり日常的にモラハラを受ける状況になる

モラハラはある日突然爆発的におきることは少なく(ないわけではありません)、次第にエスカレートし、継続的な言葉の暴力や無視されるといった態度を受け、結果的に痛めつけられている感覚さえもわからなくなるケースが多く見受けられます。

夫婦の関係は他人が立ち入りにくく、夫婦間でしかわからないことも実際にあります。

モラハラの一番怖いところは、「わたしがいけないんだ」「わたしがダメなんだ」と被害者である側が自分を責めてしまうこと、加害者である人が悪いと思っていないこと、ではないでしょうか。

わたしは専門家ではありませんから、対処法というのを具体的にお話できませんが、過去にパワハラ・モラハラに詳しい株式会社マモル代表のくまゆうこ(隈有子)さんに取材した記事「これってモラハラ?夫から受けるモラハラ問題について専門家に聞いてみた!」があるので、参考にして頂ければと思います。

悩んだり迷ったりしたら、身内や親しい友人にまずは打ち明けてみましょう。あるいは下記のような公的機関に相談することもできます。

「ひとりで抱えこまないこと」声にだして、話をしてみることが、モラハラかもしれない不安から抜け出す第一歩です。

・配偶者暴力相談支援センター
内閣府男女共同参画局による、配偶者からの暴力(モラハラも含みます)に関する相談窓口一覧

・婦人相談所 全国の婦人相談所一覧
厚生労働省による、女性向けの相談窓口です。各都道府県に置かれています。電話での相談もできます。

・日本司法支援センター(法テラス)
主に法律的な面から相談にのってくれます。

大橋 礼

大橋 礼

年の差15歳兄弟の母。DTP会社勤務後、フリーで恋愛・料理・育児コンテンツを執筆中。今や社会人長男のママ仲間とは「姑と呼ばれる日」に戦々恐々しつつ、次男の小学校では若いママ友とPTAも参戦中。飲めば壮快・読めばご機嫌!本とお酒があればよし。


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