2016.04.21
「情けない母親でもいい!」肩の力が抜けるような,本音まるだしエッセイ
ママだって不器用だし、落ち込むこともある
フリーランスカメラマンの著者が語る
育児と仕事、愛についてのエッセイ
「かなわない/植本一子著」
子どもと向かい合いたくない日もある
先日熊本県で発生した、平成28年熊本地震。被災地では未だ余震が続くなか、どうしても5年前の東日本大震災を重ねてしまいます。 震災後すぐ、わたしは結婚・妊娠・出産を経験しました。未曾有の災害で日本中がふわふわと落ち着かないなか、小さな子どもを抱えて漠然とした不安の渦にいる毎日。
生活もけっして安定しているとは言えない状況で、目の前の子供のこと、働くことのバランスがうまくとれずに緊張した日々を送っていました。 そんなときに出会ったのが本書の前身となる植本一子さんのエッセイ「働けECD」。
育児に対する赤裸々な日常が語られており、「そうか、お母さんだって不安だし、子どもがかわいくない日もあるって言っていいんだ…」と救われた気分に。不安がったら、手抜きをしたら、母親失格と烙印を押されてしまうんじゃないかと怯えていた時期に、ふっと肩の荷がおりました。
同じような思いを抱えながら育児をしている植本さんの文は、とても刺激的でした。
「情けない母親」でもいい!
本書は2011年以降、植本さんが発表してきたブログや散文をまとめたもの。前作に続き、しんどい毎日をこれでもか、とさらけ出してきます。
子どもはかわいいけれどでも仕事だってもっと自由にこなしたい、好きな男のひとができたから夫と離婚したい…。
赤裸々すぎて、何もそんなにオープンに書かなくても…と思うことも。でもそれが、彼女の「自分と向き合い続ける」という姿勢。 はたしてわたしは、こんな風にさらけ出してまっすぐ生きて行くことができるだろうか、自分をつまらない型にはめ込んでいるのは自分自身なのかも、と思い直します。
情けない自分をさらけ出す勇気に、どうしようもなく惹かれてしまうのです。
母親になる前の自分への未練
育児と仕事の両立、そこに自分の趣味や付き合いも増えて、なかなかバランスが取れない。どうしても家族を疎ましくおもってしまう日がある。そんな自分に嫌気がさす。
堂々巡りのしんどい日々には、何もかもがいやになる。植本さんの感情は不安定で、いつも惑っています。
私自身もフリーランスで働いているので、どうしても育児で身動きが取れないときがあります。そんなとき「子どもがいなければもっと働けるのにな」と、どうしても思ってしまう。同時に「仕事をしているから子どもにきちんと寄り添えてないのではないか」と、申し訳なく思う気持ちもあるのだけれど…。
『子どもを産んだら「お母さん」になれるんだと思ったらそうじゃなかった。(中略)お母さんであり女であり少女であり私なのだった。「お母さん」だけになれたら、こんなに苦しい思いをすることもなかったのだろう。私はいろんなものに未練がある』
子どもを産んで得たかけがえのないものはたくさんあります。でも、子どもが産まれたことで手放したり諦めたりしたことだって、たくさんある。わたしも、ママじゃないときのわたしにまだ未練があります。
しかし本書では、力強く「私は放棄しない」と語られています。理想のお母さん像なんてない。自分は自分であって良いのだ。全部の感情や出来事ひっくるめて自分。わたしも、自分のなかのいろいろな感情をひとまとめに受け止めて、ひたむきに自分と向き合い続けようと思いました。
<おすすめしてくれたワーママ>
2011年、フリーランスに転身し、妊娠と出産を経験。出産後は在宅で原稿を書いたり、子連れで取材へ行ったり。ワーママというと保育園に子どもを預けて…のような働き方をする人が多いなか、「働いているのに日中は子どもの相手をする」という状況をしんどいと感じることも。同じような環境で子育てをする著者の日記に共感し、そのまっすぐな言葉に励まされました。
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浦和ツナ子
ライター/編集