2016.08.10
子育てにイライラする気持ちがわからない!? 「エセ」イクメンに私が思うこと
先日、ある男性が世の母親に対してこんな趣旨のことをつぶやいていました。
子どもにイライラするなんて馬鹿げている。もっと時間に余裕をもって行動すればいいだけ。そうすれば自分の時間が持てるはずだ。
イライラしませんか?
この人は仕事が忙しく残業や出張も多いそうですが、休日は子どもと過ごすのが楽しいそう。はたから見れば、イクメンでしょう。
でもワーママから見れば、典型的なエセイクメン! 平日は仕事三昧で、育児は“お手伝い”程度。セブンイレブンのアルバイト学生がセブンアンドアイホールディングスの代表に向かって「そのやり方、違くないっすか?」と意見するようなものです。
今回は、このエセイクメン君へのお説教をしたいと思います。
5分前行動は、育児には通用しない
私たちは、小学生のときから「5分前行動」を刷り込まれていますよね。
早め早めに行動するのが大事だと。
でも、これを育児に100%応用するのは不可能です。
たとえば私の場合、保育園の登園時間が9時なので、家を出る理想的な時間は8時55分。エセイクメン君のアドバイスに従えば、8時45分くらいから家を出る準備をすればよいのでしょう。
しかし!
子どもは超気分屋さん。声をかけた瞬間に「行く」と素直に動くこともあれば、「イヤ!」と10分以上ねばることも。さらに、ちょうどいい時間に出ても、途中で虫の観察に夢中になって9時を過ぎたり、逆にアスリート並みのダッシュで早く着きすぎたり。9時前の登園は延長料金がかかるので時間をつぶそうとしても「せんせいのところいく!」と駄々をこねられ手を焼くのがお約束です。
エセイクメン君の言うように、早く行動すれば解決するほど単純な問題ではありません。
ささいな言動に、“しょせんお手伝い感”がにじみ出ていますね。
「自分の時間がない」は本質的な問題ではない
次に、「がんばれば自分の時間を持てる」という主張ですが、これも微妙。たぶんエセイクメン君は、自由時間が長ければママはリフレッシュできると考えています。休日に美容院にでも行けばそれでチャラだと。その間子どもを見ている俺ってイクメンだろ~的な。
確かに、リフレッシュするのは楽しいし大切です。
でも!
そのときリフレッシュしても、数日、早いと数時間経つと元通りになっちゃうんですよね。
その理由をよくよく考えてみたら、ママは子どもの時間軸に合わせて生活しているから疲れるんだと気づきました。
たとえば、美容院にいる間も「帰りにスーパー寄らなきゃ。あ~、夕飯何にしよう」。仕事中も「お迎えがあるから残業できないのに、全然終わらないよ……」。
子どもから解放されているように見えて、実は制約が山ほどあるのです。
一方、残業も出張もこなすエセイクメン君の時間軸は仕事。
オンとオフの切り替えがキッチリできるのが当たり前だから、その感覚で「母親も工夫して自分の時間を持て」と主張しているのでしょう。
ママは、完全にオフモードになるのが難しい。
これに対する無理解が、エセイクメン君へのイラつきを生んでいます。
「仕事と育児どっちが大変」論争は、不毛すぎる
こうした話題は、「仕事だって大変なんだ!」「育児するのがそんなにエライのか!」という批判を生みがちですが、どちらが大変かなんて決められません。
スポーツにたとえるなら、「柔道とバスケットボールはどちらが難しいか」を議論するくらい、ばかげています。優劣をつけられる問題ではありません。
ただひとつ言えるのは、仕事の感覚で育児の大変さをジャッジするのは間違いだということ。
「時間通り進める」「オンとオフのメリハリをつける」という仕事では当たり前のことが、育児には通用しません。
私たちもただ「大変なの!」と言うだけでなく、大変な理由をロジカルに説明する努力が必要ではないでしょうか。
平田けいこ
ライター