2017.02.17
発達障害である息子への禁句「早くしなさい」に変わる魔法のアクションって?
前回、こちらの記事でご紹介しました、ADHD(注意欠陥多動性障害)である我が家の息子。何事においてもマイペースで、自分のペースを乱されることを嫌います。
しかし、働いている私は、自分が家を出る時間の都合もあり、息子を学校へ送り出す際にどうしても言いたくなってしまう一言、「早くしなさい」という言葉。着替えや朝食、なにかにつけて、途中で横道にそれてしまうので、どうしても言いたくなってしまうのです。
息子曰く、「人には人のペースっていうものがあるんだよ!」と、ひどくご立腹。う〜む、確かにごもっともな意見。そこで、月2回通っているソーシャルスキルトレーニングで、臨床心理士の先生にアドバイスをいただいた、「早くしなさい」という禁句に変わる魔法のアクションをご紹介します。
母が思う「言語優位者」の特性
発達障害とは、「認知特性」の偏りといわれることがあります。「認知特性」とは一体何のことを指すのでしょうか。小児精神科領域の権威とされる本田真美医師の著書「医師のつくった『頭のよさ』テスト〜認知特性から見た6つのパターン〜」(光文社刊)を読み、”認知特性”という言葉の意味を知りました。
認知特性とは、「見たこと」「聞いたこと」「読んだこと」などの行動を頭のなかで理解・整理・記憶・表現する方法のことを指します。人それぞれ、いろんな趣味があるのと同様、考え方、いわゆる「思考」にも多種、好き好きがあるということです。
この認知特性は、おおまかに、視覚的な情報を処理するのが得意な「視覚優位者」、文字からの情報を処理するのが得意な「言語優位者」、聴覚的な情報を処理するのが得意な「聴覚優位者」とこの3つに分けられます。
うちの息子は、言語理解の値が高いこともあり、日頃からものごとを冷静かつ理論的に伝えると理解しやすいようです。もちろん、何らかの理由で興奮していたり、怒りの感情がある場合は、クールダウンしてからでないと、この方法はまったくもって通用しません。
そのため、私自身、息子の認知特性は「言語優位」だと思っていました。しかし、認知特性はどれか1つにカテゴライズされるわけではなく、なにかとなにかをあわせもっていることも少なくないそうです。
たしかに、言語優位な部分もある息子ですが、国語の授業で教科書を縦読みすることを非常に嫌いますし、理解力も一気に劣ります。その場合、言語を画像へとビジュアル化、つまり視覚優位な要素を取り入れることで、理解を深めることができるのです。
てっきり、息子は「言語優位者」だとばかり思っていた私ですが、それだけでうまく理解できないときには、視覚など、その他の特性を認知して取り入れる必要があったのです。
言語優位でもダイレクトな表現はアウト
いくら言語理解が高いとはいえ、息子にとってダイレクトな表現は厳禁だったようです。私も働いていることから、朝の支度は時間との戦い。そのため、息子の着替えや朝食を摂るペースが遅いと、つい「早くしなさい」「なんでやらないの?」と少しきつめな言葉を発してしまいがち。
すると息子はたちまち、ギャーッとパニックになって怒っては泣き、しばらく再起不能状態となります。そう、まさに私は自爆状態……。
自らの発した言葉の選択ミスで、自分の首を絞め、ますます迫りくる時間に追い詰められます。しかし、働くママとして、ここで負けるわけにはいきません。
手を替え品を替え、時には、「仕事の帰りにおいしいお菓子を買ってくるから」と、物でつる反則技までくり出す始末。私ってずるいな……と思いながらも、息子のモチベーションアップに努めないと、私も息子も、家から出かけることができないのです。
月2回のSST(ソーシャルスキルトレーニング)で教わった魔法のアクション
息子は、月に2回、臨床心理士の先生のもとで、ソーシャルスキルトレーニングをおこなっています。ソーシャルスキルトレーニングの内容は、体感を鍛える体操や知育玩具を用いたゲームなど、その子どもにあわせた様々なトレーニング内容で、臨床心理士の先生と1対1でおこないます。
毎回トレーニングの最後には、臨床心理士の先生と私が、最近の様子や今後の目標などを共有するのですが、ある日、「朝の支度がうまくいかずに、今朝も息子と喧嘩しながら見送りました」ということを、先生に相談しました。
冷静になれば、理論的に説明してわかってくれるはずだから、夜の落ちついたときにゆっくり話すと、次の日はきっとうまくいくだろうと楽観視していた私。しかし、それよりももっと息子に適した方法があったのです。
先生は、息子に対しこう問いました。
「〇〇くん、朝の支度をするときにお母さんと喧嘩しちゃうんだって? なんで喧嘩しちゃうの?」
すると息子は、
「だって、おれだって頑張ってやっているのに、お母さんは『早くして』とかいろいろ言ってくるから、いやな気持ちになるんだもん。」と答えました。
私も、わかっているつもりでした。息子は、常に全力で頑張っている、だけど……。その「だけど……」が喧嘩の引き金になるのです。
先生は、続けてこう言いました。
「じゃあ、『早くして』っていうのを言葉じゃなくて、合図で決めてみるのはどう?」
息子は、
「う〜ん……、じゃあ、ほっぺたをツンツンってしてほしい。」と答えました。
先生が、
「ですって〜お母さん!」と。なるほど、言葉がダメなら、何かしらのアクションか……と、目から鱗が落ちた瞬間でした。早速、翌朝から実践。起きて着替えをしている最中、フリーズしてしまった息子。
思わず、「早く着替えなさい!」と言ってしまいたい気持ちをグッとこらえ、私は、全身全霊で息子のほっぺたを無言でツンツンしてみました。
するとどうでしょう。息子は、たちまち笑顔になって、ルンルンで着替えを再開。間髪入れずに、「えらいじゃ〜ん!お着替えすごい早い!さっすが〜!」とベタ褒め作戦に。
それ以降、先生から教わった魔法のアクションを用いることで、朝の支度で喧嘩することなく、今はスムーズに支度を進めることができています。
自分だけで考えず本人にどうしてほしいか聞くのが1番早かった
息子の認知特性を意識するあまり、こうすればうまくいく!と勝手に頭のなかで設計図を組み立てていた私。しかし、どうやったらうまくいくか、息子はどうしてほしいのか、最も大切なことは、私の頭のなかだけで済ませるのではなく、息子自身に聞いてみるのが1番早かったのです。
先々にものごとを考えすぎて、次はこれ、その次はこれ……と、頭でっかちになりすぎていましたが、マイペースな息子とうまく過ごしていく方法は、私が先々を考えるだけではなく、息子に寄り添って、ともに方法を相談しながら、ものごとを進めていくことが必要なのだと実感しました。
ひょっとしたら、母親である私よりも、息子の方がよっぽど冷静なのかもしれません(笑)
【参考】
※ 医師のつくった「頭のよさ」テスト~認知特性から見た6つのパターン~ (光文社新書)
黒木絵里
美容家