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2020.07.08

「ADHD」と診断されたママに聞いた!受診のきっかけと「自覚」したことでの変化は?



発達障害のひとつであるADHDは、注意欠陥/多動性障害のことを指します。「注意力に問題が生じる・落ち着きがない」などが特徴で、子どもだけでなく成人の3~4%が該当するともいわれているそうです。誰でもADHDである可能性はあり、笑って済ませられるうちは問題ありません。ですが子育てや仕事に支障が出てくると「私ってダメなママなんだ」「もっとしっかりしなきゃ」と自分を責めてしまう人も出てきます。

今回、医療機関でADHDの診断を受けた2人のママに、ADHDを自覚することで訪れた変化についてお聞きしました。

こんなことない? ママのADHDあるある


「提出物の締め切りが守れたためしがない」

「待ち合わせの時間にまず間に合わない」

「歯医者の予約を3回連続ですっぽかしてしまった」

以上、自分のことかと思った人は、その傾向があるのかもしれません。今回お話を聞いたAさんとHさんは、共にADHDの診断を受けています。

2人に共通しているのは、以下のような点でした。

・時間が守れない
・部屋が片づけられない
・新しいものに飛びついてしまう
・締め切りがあるものを先延ばしにする
・手帳を持っても開く習慣がつかない

こういったことは、仕事や子育ての悩みに直結します。AさんもHさんもADHDを自覚して診断を受けるまでにはさまざまな「やっちまった」を経験してきたそうです。共通点はあるものの、2人が人に与える印象は若干異なります。

Aさんは税理士事務所にお勤めで、ママ友から確定申告の相談を受けたりするなど人から頼られることも多い、しっかり者タイプ。子どもは男の子2人。端からはADHDの特徴にあるようなことが起きているようには見えませんが、本人いわく「隠すのがうまいだけ。ちゃんとした人に見られたいんです(笑)」とのこと。

Hさんはおっとり型。歯医者の予約を3回続けてすっぽかした例を先に出しましたが、これは彼女のこと。忘れ物も多く、しっかり者の夫に助けらえて、介護の仕事をしながら未就学児2人を含む4人の子育てをしています。

仕事面に支障がでていた Aさんのケース


Aさんは勤め先で中間管理職的なポジションになってから、仕事面で明らかな支障が出てきたといいます。

・人に仕事を割り振れず、自分で抱え込んでしまう。
・締め切りが迫っているのに別の仕事に目移りしてしまい、最初の仕事を先延ばししてしまう。
・1日で終わると思った仕事に1週間もかかってしまう。

こういったことが重なり、仕事に行くことができなくなってしまったそうです。当時のAさんは「私なんかがこの仕事をやってはいけなかったんだ」とまで自分を追い詰めていました。そんなときに、大人のADHDのことを知りネットでチェックリストを確認してみました。「片づけられない」「忘れ物が多い」など多項目が自分に当てはまったAさんは、その後心療内科を受診しADHDと診断されました。
Aさんは他の仕事をしているときでも新規の仕事が入ってくると、そちらを優先してしまうという“クセ”がありました。
この「新規のものに飛びつく」性質は、ADHDの人によく見られる「衝動性」の傾向です。場合によっては良い方向にも作用する性質ですが、Aさんの場合、新しいものを優先することで目の前のタスクから逃げることにつながっていたのでした。Aさんは現在、「ストラテラ」というADHDの薬を服用しています。

「劇的に改善はされないけれど、なんとか自分と上手につきあえるようになった感じです。以前は頭のなかがぐちゃぐちゃだったのが、薬を飲むことで“しーん”とした状態になれるように。飲むと眠くなる副作用があるので、夜寝る前に服用しています」

もうひとつの受診のきっかけ


それまで、学校の成績は悪くなかったのと一夜漬けでテストなどをしのいでこられた経験から、Aさんはまさか自分に障害があるとは思っていなかったそうです。そんなAさんが心療内科を受診するきっかけとなったことは、もうひとつあります。それは長男をみていて。複数のやるべきことがあるとすぐにパニックになり、何をしたらいいかわからなくなってしまう息子を見ていて「これは私も同じだな」と思ったそう。

受診するまでは、自分と似た傾向のある長男にイラっとすることもあったというAさんですが、今は「わかる! そういうミス、母ちゃんは40年間してきてるけど、それは直そうと思っても無理なやつだから、上手につきあっていこう。できることはいろいろあるよ」と思うように。

人やアプリに頼れるようになってラクに


それまでのAさんはなかなか人に頼むことができませんでした。ですが、なんでも自分でやろうとせず人に頼ることを覚えたことで、気持ちがだいぶ楽になってきたそうです。たとえば部屋がどうしようもなく片付かないときは、妹にSOSを出して手伝ってもらいます。人だけでなく、タイマーやメモなど活用できるものはなんでも活用するのがおすすめ、とAさん。タスクやスケジュール管理には、タスクペディアというアプリを勧めてくれました。

「以前は、人が決めたスケジュールも自分で決めたのもできませんでした。特に自分で決めたスケジュールの方ができないで落ち込むことが多かったです。“絵に描いたモチ”になってしまうんですよね。それでやっぱりできなくて、“私はなんてダメ人間なんだろう”と自己肯定感下がる・・・その繰り返しでした」

タスクペディアは発達障害の人が開発したアプリで、手帳を書く習慣がつかない人にもおすすめだそう。

「ほとんどのタスク管理のアプリは期限を入れないと登録できないのですが、タスクペディアは入れなくていいのがいいんです。期限を入れると現実に直面してしまうから入れたくない・・・で、タスク自体を入れられなくて先延ばしになっていたのですが、これなら期限は入れても入れなくてもとりあえずそこに放り込んでおけばいいから楽です。無料で使えますし」

学生のころから悩んでいた Hさんのケース

「自分は目には見えないけれど、人とは違う欠陥がある」と学生のときから思っていたというHさん。とある心理学のサイトで、相談してみたところ発達障害の可能性を示唆されたことが、受診にきっかけだったそう。
Hさんは4人の子どものお母さんです。子どもの数が増えていくにつれ、旦那さんの協力が増え、さらに上の2人はある程度自分のことはできるようになってきたため、それほど子育てで悩むことはありませんでした。それでも時々は以下のように悩むことも。

「家の中が片づけられなくて、ものすごいストレスを感じることがあります。旦那や子どもは許容してくれるんだけど自分が突然キレることがあって、これはなんだろうと思っていました。それと、子ども関連の書類を期限までに出すのが苦手です。ひどいときは2,3ヶ月遅れたりすると、さすがに落ち込みます」

急にキレること、忘れ物が多いことはADHDの特徴でもあります。そこで心療内科で診断を受けたところ「発達障害と言っていいでしょう」と言われ、現在はさらに詳しい検査の結果待ちだそうです。

「まだ結果は出ていませんが、ものすごく気が楽になりました。自分の努力ではどうしようもないことだとわかって、霧が晴れたような感じ」

薬には頼りたくないので、当面は様子を見ながら改善の方法を探していくつもりだというHさん。診断の結果によっては市の家事援助サービスが受けられるそうなので、それも念頭に置いているのだとか。Hさんの職場のデスクはメモだらけ。ADHDの人は「視覚でわかること」が大事なケースが多いため、Hさんもなんでも見える化させることでだいぶ困ったことが減ってきたそうです。

受診してみようかなと思ったとき

「自分のミスが死ぬほどつらい」
「なんとなく生きづらさを感じる」

そんな人は自分の個性を知ることにもなりますから、一度受診を検討してみてもいいかもしれません。ですが、どこに相談したらいいか最初は迷う人も多いでしょう。Aさんも「受診を決めるまではすごくハードルが高くて、情報が欲しかった」と言っていました。

参考までに、Aさん、Hさんが実際に利用した情報源や相談窓口を載せておきます。

・住んでいる都道府県のホームページ

・ADHDの薬を出している製薬会社のホームページ

(受診可能な発達障害医療機関リスト掲載)

・住んでいる都道府県の発達障害支援センターの電話相談

「またやってしまった」と思うような、日常の困ったことをすべてなくすことはできないかもしれません。ですが、たとえ困ってもなんとかなるとわかれば、ずいぶん気持ちの面で変わってくるのではないでしょうか。

 

冬木丹花

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