2019.08.07
ゲームには子供にとって良い効果がたくさんある!?その理由は?
保育園の年長くらいから、徐々に興味を持ち始める「デジタルゲーム」。
「休日の日はほぼ一日中やっている」「お友達と公園に遊びに行くのに、なぜかゲーム機を持っていく」「家で決めたルールを破ってパパにゲームを隠された」など、子供たちの熱中ぶりに、日々の生活や勉強に支障をきたさないよう管理するママたちの悩みも多いのが現状です。
果たして、ゲームは子供にとって悪いことばかりなのでしょうか?
「そんな疑問を解決すべく、「子どもとデジタルゲームの上手な付き合い方」セミナーに参加してきました。
そこでの話をもとに今回は視点を変えて「ゲームの良いところ」を紹介したいと思います。
ママたちは子供のデジタルゲーム使用に困っている
まずは自宅にデジタルゲームがある家庭のママたちに、子供とゲームの関わり方で困っている、悩んでいることを聞いてみました。
夏休みはゲーム→Youtubeのローテーション
学童も行かなくなった息子(小4)をひとり自宅で留守番させるのも色々心配なので、夏休みの長期休暇は近所の実家に預けています。自宅にいるときは長時間ゲームをやると父親に叱られるので、「そろそろやめなさいよ」と言われたらすぐにやめるのですが、祖父母だと言うことを聞かず、暑くて外に出れない、やることがない・・・などを理由に、勉強もせずとにかくずっとゲームをしているようです。ここ最近、成績も下がっているので勉強をさせたいのですが、なかなかやる気にもなってくれず困っています。(Tさん・子供小4)
そのソフト、対象年齢外だけど大丈夫?
周りの友達がみんな持っていてオンライン対戦しているから僕も欲しい!とせがまれて、購入許可をしたゲーム。先日、私の妹(息子のおばさん)が来た際に、「その、人を撃つゲーム、対象年齢が15歳以上になっているけど、やらせて平気なの?」と聞かれて、驚きました。しっかり見ないで購入許可をしたことを反省。「対象年齢外だからやってはいけない」と息子に注意すると、「友達みんなやっていて仲間に入れない」と半泣き。みんなが持っているものを持ってないと仲間に入れないなんて・・・そんな状況にどうしたらよいものかと悩み中です。(Rさん・子供小5)
移動中もずっとゲーム!
うちの小3息子は、家だけではなく、車での移動中やちょっとした待ち時間さえも、ゲームをしています。そのゲームもササっと終了できるものばかりではなく、セーブポイントじゃないと保存ができないものもあるようで、人を待たせることもしばしば。そのたびかなり怒るのですがやめる気配も直す気配もなし。また、充電がなくなりゲームができなくなると泣いて怒ります。このままだと協調性がなくなり、人とのコミュニケーションもうまくいかないのではないかと不安になります。(Yさん・子供小3)
ゲームは悪いところばかりじゃない!良い効果って?
先日「子どもとデジタルゲームの上手の付き合い方」セミナーに参加してきました。そこで登壇された、ゲーム学習論・オンライン教育・教授システム学が専門で、著書に「ゲームと教育・学習」「シリアスゲーム」などがある東京大学 大学総合研究センター 藤本徹先生。
テレビでも大活躍!幼少期よりゲーム大好きな、東大生 謎解きクリエーター 松丸亮吾さん。おふたりのお話のなかでとても興味深いものがあったので紹介します。
藤本先生曰く「“ゲームをやりすぎている”とあまり心配する必要はない、ほかの遊びとゲームを区別しすぎてゲームは良くないと思わず大人も一緒に楽しんでほしい」とのこと。その理由として、ゲームには子どもにとって良い側面がたくさんあるという研究結果がでているそうです。その効果は上記写真の3点。藤本先生が説明してくださいました。
「ゲームもとても幅があるのですが、非常に研究が進んでいて、ここ10年でゲームの効能について様々なデータがでています。
まずは、「交流を促す」という効果があります。シンガポールの大学で行われている研究では、Wiiのボーリングゲームを老人と大学生が一緒にプレイをした結果、非常に仲良くなったんです。また、シニア世代と大学生世代とで、世代自体にもイメージが良くなったという事例があります。
ゲームをすることで普段会話が弾まない関係であっても一緒に楽しむことで交流ができるということです。
アクションゲームやパズルゲームは気分が晴れたり、ストレスが解消されたりといった「心に効く」という良さがあります。それから、大きな要素として「学びの入り口」になるという点。歴史のゲームをやって歴史に関心を持ったり、eスポーツのチーム戦ではチームで勝つためのトレーニングや作戦をたてて戦略的に戦うにはどうするかを考えることにつながったりします。単純に怖いだけだと思われるホラーゲームは恐怖心やプレッシャーが高い状態で自分の感情をコントロールするといった効果が期待できます」
実際、幼少期ゲーム三昧だった東大生 松丸さんもゲームの良い効果について話してくれました。
「僕はストラテジーゲーム(勝利のために熟考し計画を練ることに焦点をおいたゲーム)をよくやっていたのですが、このジャンルのゲームは自主性が養われると思っています。例えば、学校の算数には公式があって、そこに当てはめてひたすら反復して身につけていくっていう形だと思うのですが、それは自分で発見して身につけていくというよりは教えられていることを覚えてこなすという作業に近いですよね。
それはそれで必要なことだと思うのですが、大人になった後は、自主的に考えて、いま目の前にある問題をどうやったら解決できるのか?いままでの公式で当てはまらないものを自分で問題点を洗い出し、試行錯誤していかなきゃいけない。その自主性を教わったのがストラテジーゲームだったんです。
ストラテジーゲームは教えてくれないし、必勝法がないんです。自分で必勝法を生み出せば、その裏をかいた作戦がでてくる・・・その繰り返しが、考える力を養ってくれたなと思います。」
藤本先生も、東大の学生と話していると受験とか試験にゲームで養ったような力を生かしている、世の中のことをゲームと見立てて乗り越えているスキルが高いと感じるとおっしゃっていました。
家庭での勉強とゲームバランスはどうするべき?
子どものゲーム時間、各家庭で様々なルールがあると思います。東大に行かれた松丸さんのお母さんは、子供時代、松丸さんに特殊なルールを設けていたそうです。
「一般的にゲームの時間を1時間といったようにゲーム時間を制限されている家庭が多いと思います。でも僕の家ではその逆で小学生のときは勉強を3時間やるように言われていました。勉強を3時間するまではゲーム機に触らせてもらえなかったんです。
「ゲームがしたい!いますぐにでも遊びたい!でも勉強を3時間やらなきゃできない」ということで、最初のころは仕方なく勉強をするようになりました。
これは自分の性格を親がよくわかっていて、ゲームを取りあげたら、もうすべてのことにやる気をなくなるし、勉強どころじゃなくなるということを見越して、この方法にしたようです。だからといって、すぐには勉強の成績も伸びないんですよ。でも3時間の勉強を繰り返していくうちに、少しずつですが確実にできるようになってくる。できるようになってくると楽しくなってくるんですよね。
「できない→楽しくない→やらない」というサイクルがあるならば、「強制的にやらなきゃならないからやるようになった→やるようになったらできるようになった→できるから楽しくなった→楽しいからやるようになった」というサイクルができて、その後は自分から勉強するようになりました。」
親御さんが子どもの性格を見て、「こう言ったらダメだろう」「この子はこういうところに興味を持つからこうしていこう」といったルール作りも面白がってやれるといいと藤本先生は言います。
ゲーム時間を制限したほうがうまくいく子ども、1時間勉強やったら何十分ゲームをやってよいという繰り返しシステムにしたほうがいい子ども、子どもによってやり方はたくさんあります。こうしたほうが・・・と言った正解はなく、それぞれの家庭で子どもの興味や性格を見て考えていくことが大切だと話していました。
ゲームといえば、「勉強をしない」「生活が乱れる」「人とコミュニケーションが取れなくなる」とネガティブな印象もあったと思いますが、先生たちのお話を聞いてそんなに神経質になることもないんだなと少々安心しました。
子どもの能力をたくさん伸ばせるゲーム、いつもは「もういい加減にしなさーい」と怒鳴りまくりのママたちも、この夏休み、一緒に楽しんでみるのはいかがでしょうか。