2019.10.23
他人事ではない「乳がん」大事な知識を持っておこう!
女性のがんで最も罹患率が高いのが「乳がん」って知っていましたか?有名人が乳がんであることを公表するニュースもちらほら見られ、少しずつ身近なものに感じ始めているしょうか。
国は40歳から2年に1回マンモグラフィーの検診を受けることを推奨していますが、30~39歳の若い世代でも乳がんは罹患数の22%と最も高い割合をしめていて(国立がん研究センター「がん登録・統計」より)、働くママたちにとってけっして他人事ではないようです。
今回は乳がんについての知識をいつもと違う目線からみなさんにご紹介したいと思います。どうぞ最後まで読んでくださいね。
乳がん予防の本当のところ
牛乳をたくさん飲んだら乳がんが予防できる!イソフラボンをたくさん摂ったら乳がんが予防できる!など、がんの予防のために○○が効くというワードを数多と聞きます。実際のところはどうなのか、というのは気になるところですよね。
医学的な情報を読むときは、必ずそれが信頼のできるところから出された信頼のできる情報なのか、というのを見極めなくてはなりません。
たくさんの報道やネットはたくさんの尾ひれ~がつけられていて、ある1人の意見がまるでたくさんの人を代表しているかのように書かれています。
さて、国立がん研究センターの社会と健康研究センターが「科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」に取り組んでいます。研究班の専用サイトでは予防効果が本当にあるのかエビデンス(根拠)評価をしているページがあります。
乳がんと発生と関係があると根拠が出ているものは下にあるものです。
(乳がんになる可能性が高いと考えられているもの)
・喫煙や飲酒
・閉経前の肥満(BMI:30以上)
(確実に乳がんと関係があるもの)
・閉経後の肥満
(乳がんのリスクを下げる可能性があるもの)
・運動
・授乳
・大豆の摂取(イソフラボンの摂取)
イソフラボンはサプリメントで摂ることでのリスクの低下は知られていませんので、通常の大豆食品からの摂取を心掛けるといいとされています。飲酒は1日に日本酒1合、ビールなら中ジョッキ1杯、ワインならグラス2杯くらいが適量と言われています。
明日からお豆腐と運動はかかせませんね。
最近よく聞く「デンスプレスト」ってなに?検診はエコーも一緒に!
乳がんの検診ではマンモグラフィ(乳がんX線検査単独法)が国の対策型検診として行われています。その他の方法である視触診単独や超音波検査単独は死亡率を減少させる証拠が十分ではなく、国としての施策では実施されていないのです。
ただし!「デンスブレスト=高濃度乳房」と呼ばれる特徴の胸を持つ方はマンモグラフィだけでは乳がんが疑われる部位を見つけることが難しい場合があります。
乳腺濃度が高い胸ですのでマンモグラフィを撮ると全体的に「白く」うつってしまい、がんと疑われる部分が見つけにくくなるのです。
デンスブレストの方は乳がんの発症リスクが高いと言われています。欧米人よりも日本人に多いことが知られているため、自分自身の乳腺濃度がどれくらいなのか、特徴を知っておくことが大切です。医師に聞いてみましょう。
デンスブレストの方は超音波検査を合わせて行うことが勧められます。超音波検査では乳腺が白く、がんと疑われる部分は黒く映し出されるのです。
ただし超音波検査では見つけなくてもいい腫瘍(良性の腫瘍)を見つけてしまう可能性が高いことも指摘されています。マンモグラフィや超音波検査などのスクリーニング目的の画像の検査はある異常を見つけても「がん」と断定することは難しいため、過度に不安になりすぎないことも必要です。
もっとも大切なのは自己検診です。お風呂に入っているとき、脇の下から乳房全体にかけてしこりや皮膚のつれ、へこみがないかを確認しましょう。パートナーにもそういう変化があればすぐに教えてほしいことを伝えておきましょう。
乳がんの治療で妊娠できなくなる…?
乳がんと診断され、がんが大きくなっていたり、手術でがんが進展していたことが分かったりすると抗がん剤の治療をすすめられることがあります。
これは手術の前に抗がん剤をすることでがんの大きさを小さくする目的があったり、すでに血液やリンパの流れに乗っている微小ながんをたたき再発を防ぐ目的があるからです。
乳がんでは再発予防率が高いと研究結果で示されている組み合わせがいくつかあり、FEC療法、(5-FU、エピルビシン、エンドキサン)、AC療法(ドキソルビシン、シクロホスファミド)、CMF療法(エンドキサン、メトトレキサート、フルオロウラシル)、パクリタキセル・ドセタキセル単剤などがあります。
抗がん剤の副作用として、気持ち悪くなる、脱毛する(薬によって異なります)白血球が下がるといった可能性があることはご存知だと思います。しかし「卵巣の機能がさがる」可能性があることを知っていましたでしょうか。
「卵巣の機能が下がる」副作用が起こりやすいのは“エンドキサン(シクロホスファミド)”という名前のお薬です。抗がん剤中70%以上の確率で生理がこなくなり、その後も生理が戻らない可能性が高くなるのです。これはつまり排卵ができず妊娠が難しい体になってしまうことを指します。
また乳がんではホルモン受容体が発現しているタイプのがんに対してホルモンの分泌を抑えるホルモン療法がおこなわれることがあります。これは5~10年単位で行われる長い治療です。
ホルモン療法で使用する薬で卵巣の機能が下がることはありませんがこの治療が終わるまでは妊娠してはいけないため(催奇形性が高まる)年齢的な問題で、妊娠が難しくなることがあります。
妊娠できる可能性を残すために最近では胚凍結や卵子凍結などの方法が積極的にとられます。しかし乳がんの治療でまさか卵巣の機能が下がるなんて!と知らずに治療を受け始めてしまう人も時折いらっしゃいます。ぜひ知っておいてほしい知識です。
乳がんについての情報収集に使える情報源をご紹介!
一般の方が乳がんのことについて学べる信頼できる情報源をご紹介します。
目指せヘルスリテラシーが高いワーママ!
●がん情報サービス(乳がん)
●日本乳癌学会(市民の皆様向け)
●日本医師会(乳がんとは)
●乳がん治療にあたり将来の出産をご希望の患者さんへ:
乳がんについて知っておくことはママとしての大きな力になる!
まさか私ががんになるわけない!と思ってしまう気持ちは誰しもあります。しかしあらかじめ勉強をしていて活用できる人とそうでない人の違いはいざというときに歴然です。
ママがいなければ家庭は成り立ちません。正しい情報を持って自分の健康に十分気を遣い、それを子どもにも伝えていっていただけると嬉しいなと思います。
【参考HP】
・がん情報サービス 最新がん統計 (2019年10月12日閲覧)
・国立がん研究センター社会と健康研究センター 予防研究グループ(2019年10月12日閲覧)
宮本さよ
ライター/看護師