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2023.10.13

発達障害と向き合い、子育てをラクにするヒントを作業療法士が伝授!


他人の話を聞かない、忘れものが多い、不器用、衝動的などなど。「うちの子は大丈夫?」と、不安を感じることはありませんか。

たまに気になる我が子の行動や発達。しかし、これはきちんと見える化ができていないことや、対処の仕方も分からないことが大きな要因。漠然とした不安によって、心配がより大きく掻き立てられてしまうものです。

そこで、文京学院大学保健医療技術学部の神作 一実(かみさく ひとみ)教授が行った「作業療法士が教える発達障害との向き合い方~子どもの発達を促す子育てのヒント~」のセミナーに参加し、よりよい子どもとの接し方や困った時の動き方について話を聞いてきました。

 

発達障害はシロかクロではない

2022年の文科省統計によると、通常学級に在籍する小中学生の8.8%もの子どもが学習面や行動面で著しい困難を示す、つまり発達障害の可能性がある…との調査結果が出ています。ただし、神作先生が言うには、そもそも障害は一概に「ある/なし」ではなく、障害の性質も、障害で伴う困難さの程度 もグラデーション様となっているほか、子どもは発展途上でもあるため成長過程に伴うゆらぎも大きいそう。たしかに、記憶力がやたら良い・着眼点が面白い・いろいろあるけどいいやつ、など個性的な人間は沢山います。

なので、子育てにおいては親目線ではなく「その子どもが困っていること」を改善すべきとのことでした。では一体どうしたらよいのでしょうか?

作業療法からのアプローチ

人の体と心を分けずに一人の人間としてアプローチする作業療法」があります。障害が影響して日常生活に困難が生じると予想される対象者に対し、「その人らしい生活や社会生活」の獲得へ向けてアプローチしていくというもの。理学療法が体の動きを中心にアプローチするのに対し、作業療法は「心と体を分けずに考える」ところが大きく違う点です。

日本での作業療法は、現在は高齢者や身体障害者、精神障害者のリハビリとして病院などで主に行われていますが、「発達障害領域」へのアプローチもあるとのことなのです。

 

感覚統合機能を育むために

人は成長するにつれ、触覚・味覚などの五感をはじめとした感覚を処理したりまとめたりする「感覚統合機能」というものが培われます。おおよそが小学校入学する前に完成するそうですが、発達障害を持つ子どもの多くが、この成長プロセスにおける問題によって、日常生活の困難度がより高まってしまっているとのこと。そこで作業療法士が介入し「感覚調整」面でのアプローチを行うことで、遊びが豊かになり、日常生活や社会生活の困難さが軽減されるそうです。

セミナーでは、わずか数品目しか食べないという激しい偏食を持つ4歳児の症例が紹介されました。作業療法士が観察をしたところ、その子どもは食事に限らずべとべとしたものが苦手など「触覚が過敏」であることがわかり、食べ物からの刺激にも敏感で多くの品目に挑戦しにくい状態だったそう。そこで本人が好んでいる「揺れの感覚」を活用しながら触覚の発達も促していくケアで偏食が改善した、ということでした。

このように作業療法士の着眼点も子育てにとって一助になる力を持っています。

子ども自身は、それが普通なのか、困難なのかの判断がつきにくいものなので、そこを親の目線から見て「なにか、子どもが困っているな、不便そうにしているな。」と思った時は作業療法士に相談してみるのも一つの選択肢となりそうです。作業療法士へ相談をしてみたい場合は各自治体の保健センターや保健所、発達相談の窓口などで受け付けているそうです。

 

神作先生から 子育てする保護者へメッセージいただけますでしょうか。

子育ての心配ごとはつきません。親にとってもとても大変なことだと思います。そして、これでいいのかな?きちんと育っているのかな?必要なことができるようになっているのかな?など、一つ一つが心配ごとの種になってしまいがちです。

でも、子どもは発達する力を持っています。できないことや親の思い通りにならないことに着目するのではなく、子どもの成長、笑顔、見て!という共感を求めたときのキラキラした瞳、うれしそうな表情など、今ここにいる子どものありのままの姿に注目してみてはどうでしょうか?

子どもが楽しそうに遊んでいるときが一番成長していると、アメリカの作業療法士Ayersは言っています。作業療法でも、たくさん楽しく遊べるようになることが、身辺自律や学習の基礎になっていると考え、多様な遊びができるよう、治療的介入を行っています。そして、自己肯定感の高い子が優しい子に成長し、幸せを感じる子になっていきます。このような子は、愛されて育った子ども達です。自分の不安が大人によって軽減され、困ったときにしっかりと守られた、子ども達です。

是非、大人が不安になっているその気持ちではなく、子どものありのままをしっかりと受け止めてみませんか?きっとすてきな子どもに育っていくと思います。

 

 

わとさ とわ

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