2024.11.15
小児用医薬品開発や承認のスピードはもっと早くなれる?~私たちの意識でできること
かねてより日本は薬事承認が遅いと言われていますよね。
海外では使われている薬が日本では薬事承認に時間がかかる「ドラッグラグ」、海外の新薬が日本に入ってこない「ドラッグロス」という問題を指す言葉もあるほど。
どちらにせよ日本ではその薬剤を使えないという大変な社会問題にもなっています。
コロナワクチンの承認にもずいぶん時間がかかったような気がしますが、あれはワクチンのため「特例承認」という制度を国が設け、海外で使用されている医薬品について日本国内の承認審査を短縮する特例的な承認制度を使うことで短期間での実用化に漕ぎ着けたというもの。
通常の新薬の承認期間は、そもそも承認を受けるための材料を綿密に揃えなければならなず、どんなに早い場合でも数年は要するため、エンドユーザーな我々もやきもきしてしまうこともあり、「早い」とは言えない状況が続いています。
世界における小児医薬品開発の現状と日本が抱える課題についてのメディアセミナーで話を聞くと、驚くことが多くありました。
小児薬のドラッグラグ、ドラッグロスは一段と顕著
日本イーライリリーの坂口氏によると、このドラッグラグ、ドラッグロスは成人薬と比べ小児薬においては一段と顕著だそう。
世界レベルで見てみても、成人薬と比較すると小児へ向けての承認を取得するためのタイムロスがあり各国とも問題を抱えているとのこと。
ただ、米国やEU圏は成人薬の開発時に小児用への対応検討が法律で義務付けられているそうで小児薬の承認数も多いそう。
一方で日本では法律での縛りは無いため後手に回ってしまうのが現状なのだとか。
子どもが悪化しやすいアトピー性皮膚炎対応の薬においては…
例えば、アトピー性皮膚炎の対応薬でみてみると…治験に協力をしている三重病院・長尾みづほ氏が言うには、アトピー性皮膚炎は幅広い世代に発症するが、重症度は大人より子どもの方が圧倒的に高いそう。
子どもの頃に発症して悪い状態が続くとだと、例えばかぶれが重なり皮膚がゴワゴワになってしまったり、症状を指摘されるのが恥ずかしくて見られたくないという気持ちから内向的になってしまうなどが考えられるそう。
単なる皮膚炎に留まらずメンタルにまで影響が及ぶ可能性も大いにありますね。
だからこそアトピー性皮膚炎は「早期に・適切に」管理することが重要なのだそう。
今までは使いたい薬はあるのに薬事承認が降りないまま、症状が変わらないまま大人になっちゃう人もたくさんいたことでしょうね。
そんな小児用アトピー性皮膚炎治療薬の承認状況を見てみると、2021年~現在までにおいては外用だけにとどまらず経口、注射の薬剤も使えるようになったり、外用では3ヶ月の赤ちゃんから使える薬も承認がなされているようにもなりました。
これは素晴らしいことですね!
ただ小児薬承認までのハードルは未だ数多くあるもよう。
一括りに「小児」と言っても新生児~15歳まで、身長も体重も違えば発育度も違うため幅の広さがそもそもあるうえ、治験が難しいそう。治験に適した患者さん探しはもちろん、日本の場合は特に国民柄なのか「今自分が安定しているからより良い薬は要らない」という考えが強く、治験=実験台という捉え方をされることもあるそう。もしそのような機会があるようであれば適切なスタッフが万全の体勢でサポートするので心配せずに参加して欲しいと長尾氏は語っていました。
もちろん、医者いらずなくらい健康で過ごせるのが理想の生活ではありますが、もし万が一の医療や薬剤により良いものがあるのであればそれを使わない手はありませんよね。
日本イーライリリーの坂口氏が言うには、国による様々な開発支援策や後押しが予定されていて徐々に早まってきているそう。
医薬の未来に繋がる礎を作ることが出来る治験も大切なのだと感じつつ小児医薬品の未来が明るいことを願わずにはいられません。
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わとさ とわ
ライター/プランナー