2017.12.05
向ける矛先が違う!?【育休迷惑論】に対し、私が思うこと
先日、「育休の肩代わり 過剰負担では」という投書がある全国紙に掲載され、インターネット上で意見が飛び交いました内容をまとめると、以下のようになります。
投稿者は40歳の主婦。夫の職場の女性が育休を取得中。
夫の会社で女性社員が育休を取得し、穴埋めを任された夫が過労状態となり体調を崩している。そんな中、女性社員が育休を延長。夫は楽しみにしていた子どもの入学式に出席できなかった。私は出産を機に仕事を辞めた。何かを得れば何かを失うのは当然だからだ。育休の陰で、負担を感じている男性社員やその家族がいることに気づいてほしい。
投稿者が怒りを感じるのは無理もありませんが、向ける矛先が間違っているように感じます。
仮に投稿者の理想通りに産休・育休が廃止され、子育て中の女性の就業が禁止されたらどうなるでしょうか。
身近なところでいえば、スーパーの店員が激減してレジは長蛇の列。さらに商品の製造や物流に関わる企業のママ社員がいなくなり、陳列棚がガラガラになって日用品すら揃わなくなります。
社員数が少ない会社は、人手不足で倒産するかもしれません。
国や市区町村単位で考えれば税収が減り、公的サービスの質も量も低下します。
4月になれば20歳前後の若者がわらわら入社してくる時代はとっくに終わりました。
少子高齢化により労働力が不足し、ママを含めた女性も働かなければ社会が成り立たなくなっています。育休は子持ちの女性の問題ではなく、日本全体の労働問題として考えなければなりません。
「女性の活躍」ではなく「労働力確保」という視点が必要
働くママに関することは、管理職への登用などへの視点で語られがちです。
でも現実的には、それ以前に純粋な労働力や税収源として必要不可欠な存在。
そのことに気づけば、「育休は迷惑」なんて考えがいかに的外れかがわかります。ママを完全に労働市場から閉め出せば、社会が回らなくなるのですから。
今必要なのは、「育休で欠員が出ても業務を回すためにどうすればいいのか」と発想を変え、建設的な議論をして具体的な対策を会社や国に訴えていくこと。新聞に恨みつらみを投稿しても何も変わりません。
「仕事100%」から脱落するリスクを誰もが抱えている
「自分の意思で子どもを生んだのだから、配慮を求めるのはおかしい。会社は慈善事業ではない」という声もあります。こういう正論が好きな人は、今の生活がずっと続く保証はどこにもないことに気づいているのでしょうか。
たとえば、家族や自分の病気。
ある日、突然親が倒れ、仕事と介護を両立せざるをえなくなるかもしれません。
さんざん「育休は迷惑」と言っていた社員が、いそいそと介護休業を申請する……、なんてことも充分ありえます。
仕事に100%の力を注げなくても働き続けられる社会をつくっておくことは、まわりまわって自分にもプラスになる。
このことが理解され、短絡的な育休バッシングがなくなることを願っています。
平田けいこ
ライター