2020.07.10
妊活に必要な男性(夫)側の生活習慣と夫婦2人で取り組んでほしいことは?
男性の妊活はサプリを飲んだり、食生活を改めたりするだけがすべてではありません。確かに食生活習慣を改め、必要な栄養素を不足なく摂取することは授かり体質へと整える基本です。でも、私たち人間の健康は、食事だけで保たれているわけではありませんよね。
今回は男性に知っておいていただきたいおすすめの妊活と、夫婦仲をより深めるためにふたりで取り組んで欲しいことなどをご紹介していきたいと思います。
妊活おすすめ生活習慣
妊活中は、とにかくストレスを溜めないことと、身体を毎日きちんとリセットすることが大切です。それは、いつの間にか乱れてしまっている体内時計を整えることにもつながります。体内時計は生まれながらに備わっているものではありません。生まれたばかりの赤ちゃんは、授乳の時間をはさんで短い睡眠と覚醒を繰り返します。そのため、生後すぐは昼夜逆転などを起こします。
でも成長していくにつれ、体内時計も24時間に合わせてリズムを刻むようになってきます。しかし深夜まで仕事をしたり、休みの日にダラダラと寝て過ごしてしまったり、という生活を続けているうちに、生活のリズムは乱れ始めます。
生活のリズムが乱れると、ホルモンの分泌に大きな影響を与えます。そのため、まずは睡眠のリズムをしっかり整えましょう。
朝日を浴び、朝食を抜かない生活をする
朝起きて朝日を一番に浴びると、精神を安定させポジティブにしてくれるため幸せホルモンと呼ばれているセロトニンと、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンが生成されます。このふたつのホルモンはとても関係が深く、セロトニンから日没後、メラトニンが生成されます。
セロトニンは朝日を浴びた時から日没まで、そして夕方から深夜12時ころにかけてメラトニンが盛んに分泌されます。セロトニンには覚醒作用があり、メラトニンには催眠作用があるので、朝日を浴びるとしゃっきり目が覚め、夜にはきちんと眠くなるのです。
セロトニンとメラトニンは、トリプトファンという炭水化物・タンパク質などさまざまな食品に含まれるアミノ酸から生成され、朝食べれば夜にかけて脳へと届くと言われています。だからこそ、朝日を浴びて、きちんと朝ご飯を食べる生活を習慣づけることが、妊活の第一歩になるのです。
お腹の調子を整える
セロトニンは脳に存在していると思われがちですが、実はその9割が腸に存在しています。腸の健康は、睡眠にも大きく関わっているのです。腸はホルモン生成の材料を作るため、ホルモン工場と呼ばれていたり、免疫に大きく関わっているため免疫工場とよばれていたりし、第二の脳と呼ばれることもあります。腸の調子が整わないと健康そのものに影響が及びますし、腸が丈夫だと病気にかかりにくく、健康な身体を維持しやすくなります。
セロトニンとメラトニンは起床と睡眠をつかさどりますが、それが妊活にも大きく関わります。
男性の妊活は、運動率の高い精子をたくさん作り出すことが重要です。そのためには細胞分裂を盛んにし、DNAのコピーを正常化させ、精液に亜鉛や男性ホルモンの一種であるテストステロンを満たすなど、さまざまなことが必要になります。
そこで睡眠や腸の調子がポイントになるのです。きちんと睡眠のリズムを整え、深夜にしっかり熟睡できるようになると、成長ホルモンがきちんと分泌されるようになります。
成長ホルモンの分泌を意識する
睡眠リズムを整えることも、お腹の調子を整えることも、身体の健康を維持するためには欠かせません。そして、非常に重要なのが成長ホルモンの分泌を促すということです。
成長ホルモンは大人になっても分泌され、細胞分裂や活性化を促します。質の高い精子をたくさん生成するためには、細胞分裂の活性化が重要だということは何度かご紹介しました。
また成長ホルモンは他のホルモンの調整も行います。
夜きちんと寝ることと、お腹の調子を整えること、それは母が子どもに注意することのように思えるかもしれませんが、実は大人にとっても、妊活にとっても非常に大切なことなのです。
ストレスを溜めない
ストレスを溜めると、どうしても活性酸素が発生しやすくなります。ストレスを簡単に発散させる手法としてお酒やタバコに手を出す男性もいますが、一瞬気持ちが落ち着いても、体内では活性酸素が一層増えています。
そこで、普段からストレスを溜めないことを意識してみましょう。ひとりでなんでも抱え込むのではなく、夫婦でつらいことや苦しいこと、職場の人間関係についてなどを話し合ってみましょう。男性と女性では人間関係の見方や視点が違うので、妻のアドバイスが思わぬ助けになることもあるかもしれません。
また、休みの日は疲れをとるためにダラダラしてしまう方も多いかもしれませんが、逆に疲れが取れにくくなります。朝はいつもと同じ時間に起き、きちんと3食を食べて、適度に身体を動かし、脳を休めて早く寝るように心がけましょう。
メタボリックシンドロームを防ぐ
男性の場合、年齢が上がるほど妊活に暗い影を落とすのがメタボリックシンドロームです。生活習慣病は、精子の質を低下させます。また糖尿病などはEDの原因にもなります。酸化した油分をたっぷり含む食事が多いと、それだけ活性酸素も増えやすくなります。
運動をする時間がなかなか取れない場合は、一駅分多く歩く・社内では階段を使うなど、できるだけたくさん歩くことを心がけましょう。
適度な運動は筋肉を動かして血行を良くします。勃起障害の原因のひとつは血行不良なので、その改善のためにも血行促進によい運動をしてみましょう。
カウンセリングを受けてみる
お酒やタバコ・暴飲暴食以外にストレス発散の方法が見つからなかったり、どうしても妻と性行為をする気になれなかったりという場合、自分ではどうしたらよいか分からなくなってしまったら、恥ずかしがらずにプロの妊活・不妊カウンセラーのカウンセリングを受けてみましょう。不妊カウンセリングは不妊専門外来などで申し込むことができます。妻に知られたくない場合は、まずひとりで受けてみると良いですね。妊活に責任を感じるあまり、妊活そのものが「ストレス」になってしまう男性は少なくありません。「排卵日」と聞いただけで萎えてしまう、生理が来て泣いている妻を慰める言葉が見つからないなど、つらい気持ちをどうすればよいか分からない時は、カウンセラーに相談してみてくださいね。
赤ちゃんとの暮らしをシミュレーションしてみる
男性のみなさんは、妊娠することがありません。そのため身体の変調や体形の変化、お腹を蹴る感覚などを24時間感じながら十月十日を過ごす女性とは、かなり感覚に違いが出ると言われています。
そこで、できれば赤ちゃんのいる同僚や友人と話をして、赤ちゃんがいる生活をシミュレーションしてみましょう。男性のための不妊・妊活セミナーに参加してみることもおすすめです。実際に、赤ちゃんがいるお宅に遊びにいき、赤ちゃんがいると暮らしがどう変化するのかを見せてもらうことも重要です。
我が家の主人の同僚が、昔遊びに来たことがありました。まだ赤ちゃんだった長男とたくさん遊んでくれたのですが、その時「結婚しよう」と強く心に決めたそうです。
「自分は本当に赤ちゃんを熱望しているんだろうか。妻に引きずられているだけではないのか」と疑問を抱いている方もいるかもしれません。そういった方も、実際に赤ちゃんに触れてみることはおすすめです。
こんなに小さな、頼りない、しかも自分のDNAを確かに引き継ぐ存在がやってくるんだ、その子を20年近く養い、育て、守っていくんだと気持ちを新たにすることで、大きな気分転換につながるかもしれません。
それでは、次の項では逆に妊活中控えてほしいことについてご紹介します。これまでなんの疑問もなくやっていたことでも、妊活中だけでもやめてみることで、変化が見えてくるかもしれません。
妊活中は控えてほしいこと
妊活中に控えてほしいことをご紹介します。そんなに難しいことではありませんが、中には医師の協力が必要なこともあります。
タバコ
タバコを吸うと、精子の数が減るという研究結果が出ています。精子の数と質は、妊娠の可能性を大きく左右します。さらに副流煙は妊婦さんにも赤ちゃんにも悪影響しか与えません。乳幼児突然死症候群の原因のひとつとも言われています。
タバコは健康に害をなすものです。妊活を機に禁煙をしましょう。自分ではできないという方は、クリニックの禁煙外来を受診しましょう。
お酒
適度なお酒は人間関係を円滑にし、ストレスを発散してくれます。しかし肝臓の限界を超えて飲むと、その分解に活性酸素がたくさん発生してしまいます。妊活中、お酒をひかえている女性は少なくありません。お酒を我慢しているパートナーと良好な関係を築くためにも、お酒は適度に、控えめにしておきましょう。
熱すぎるお風呂やサウナ
男性の精子は熱に弱いという特性を持っています。そのため精巣は深部体温から精子を守るために、身体の外にぶら下がって温度を下げていると言われています。でも熱すぎる湯船に長時間つかっていたり、サウナに長時間入ったりしていては意味がありません。高温が精巣や精子にダメージを与えることもあります。妊活中はやめておきましょう。
自転車こぎ
多少の距離を乗るくらいなら問題はありませんが、ジムで自転車をこいだり、長距離走ったりすることは、やはり精巣にダメージを与える可能性があると考えられています。
膝の上のパソコン操作
パソコンやタブレットは、使用中かなり高温になります。そのため膝の上で操作することを日常化していると、精巣にダメージを与える可能性があります。テーブルで操作する、膝の上に断熱シートを敷くなどしてダメージを防ぎましょう。
それでは、次に夫婦ふたりで取り組んで欲しいことについてご紹介します。二人だからできること、二人の間でして欲しいことをチェックしてみましょう。
夫婦ふたりで取り組めること
妊活は、夫婦ふたりで取り組むべきことです。することや積極的に摂るべき栄養はちょっと違っても、目指すものは一緒ですよね。そこで、夫婦ふたりで取り組んで欲しいこと、二人の間でして欲しいことをご紹介します。
不妊外来へ妻が行くときは、必ず励ましを
できれば一緒に行って欲しい不妊外来ですが、仕事の都合などを考えるとかなり難しいですよね。そんな時は、必ず日時をチェックしておき、朝出る時に「気を付けていってね」「つらいかもしれないけれど、俺も気持ちは一緒だよ」など、声をかけてあげましょう。
できれば昼食時や休憩時など、ひとことでもいいのでメールをするだけで、とても嬉しい気持ちになるものです。
妻の基礎体温を自分もチェックし、排卵日や生理のリズムを知る
妻が毎朝眠そうにつけている基礎体温表。大変だなあと思ったら、その気持ちを素直に伝えましょう。また寝室にカレンダーをかけて体温を記入し、排卵日や生理のリズムを自分も把握するようにします。直接「今日がその日だから」と言われると萎えてしまうかもしれませんが、自分でも把握していれば雰囲気を崩さずに済みますよね。
妻とたくさん話をする
妻ととにかくたくさん話をするようにしてみましょう。「あまり話すことは得意じゃない」という方もいるかもしれませんが、話さなければ気持ちや感謝は伝わりません。もちろん、いたわりの心も。
妻が話をしたがっているなら、スマホを置いて聞く時間を作りましょう。妻と信頼関係を築き、愛おしいな、可愛いなと感じる時間を増やしていくことも、大切な妊活の一環です。
妻によく触れるようにする
妻を一日に一度はハグしていますか。キスはしていますか。セックスレスに陥りそうな夫婦でも、触れ合いを絶やしてはいけません。触れ合うことが一切なくなってしまった夫婦がセックスレスを解消することはとても大変です。でも、普段から触れることが当たり前になっていれば、階段を一歩ずつのぼっていくことは不可能ではないでしょう。
よく耳にするのが「友だちのようになってしまったので、仲は良いけれどセックスをしなくなった」という話です。そこで、友だちとは決してしないこと……ハグやキス、一緒に入浴する、裸で抱き合って眠るなど、少しずつ肌と肌で触れ合う機会を増やすよう、妻をリードしていくよう心掛けてみましょう。
妊活は夫婦関係を顧みる良い機会!もう一度妻に恋をしよう
妊活を始めることは、結婚してから顧みることもなく日々の生活に埋没してしまった、「夫婦の関係」について立ち止まって顧みてみる良い機会といえます。これから家族が増えるかもしれないこの時、ふたりきりの時間はもう1年を切っているかもしれません。
逆にこれからずっと二人きりの時間が続くかもしれません。それは、誰も知り得ない未来です。しかし、いずれにしてもこの時期に夫婦間に信頼関係を築き直すことは、今後の二人の人生に大きな希望の種を蒔くことにつながるはずです。
赤ちゃんを授かれば、そこからは過酷な育児生活が始まります。その時、夫婦の絆が、育児に疲れ果てた妻を支え、二人で乗り越えることにつながるでしょう。
二人きりの生活が続く場合も、いつか不妊治療をやめ、妊活をやめ、二人で生きていくことを自覚する日が来ると思います。その時も、夫婦の間に信頼関係があれば、また新しい二人の関係をよりよく構築していくことができるのではないでしょうか。
妻と一緒に妊活に取り組むことを通して、もう一度妻に恋をしてみませんか?初めて彼女にメールをしたとき、初めて触れたときのときめきを、もう一度胸に灯してみてください。
久しく「好きだ」と言えていなかった方も、素直に愛情を伝えられる勇気が、生まれるのではないでしょうか。
河野まちこ
ライター