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2021.07.01

コロナ禍での「障害児の困りごと」乗り切るためにママたちが行った対応と工夫



このコロナ禍で今まで普通に送っていた生活は一変、マスク着用、外出自粛、リモート授業など、制約の多い暮らしにくい日常となってしまいました。そんな中、障害を持つ子どもはなかなか適応できず、辛い思いをしている親子も多くいます。
今回は、障害を持つ子どもとその保護者が感じている「コロナ禍での困りごと」と、それに対する対応や工夫などを紹介します。

障害も持つ親子がコロナ禍で感じる困りごととは?

マスクが着けられない
マスクが顔に触れただけでむしり取ってしまっていた息子。緊急事態宣言で休校中のときは、どこにも行けずひたすら引きこもっていました。通っている療育に相談すると、
・触覚過敏があるので、まず『触られても平気』という感覚を身につけさせる
・家でも家族全員がマスクをする姿を見せれば、流れで着けてくれるようになるかも
という2本立てで訓練することに。家では、隙あらば手や布でワシャワシャーと顔を触ったり、お風呂で顔に水をつけたりして、顔に何かが触れても嫌がらない練習を重ねました。あとは主人と私も食事以外は常にマスク。
1か月ちょっと経ったある日、療育からマスクをつけて帰ってきたんです!その日から、スクールバスと学校、お店や療育でマスクをつけられるようになりました。なぜか道を歩くときだけ外してしまうので注意が必要でしたが…でも、屋内でマスクができるようになっただけでも本当にありがたかったです。〔Tさん、子ども7歳、5歳〕

いろいろな所を触ってしまう癖が抜けない
道を歩いていると、看板や手すり、壁、電柱など、いろいろなところを触ってしまう息子(たぶんほぼ無意識)。もちろんコロナ禍前から「触らないよ」と言ってはいましたが、聞くわけもなく…コロナ禍になって「触ったらダメ!!」と強く言ったら、パニックを起こしてしまい、大変なことになったので、今は消毒液と除菌ウェットティッシュを持ち歩き、触ったら手を拭くという毎日です。外に出る日も少なくなりました…〔Yさん、子ども6歳〕

週末は必ずお出かけ、というルーティーンにこだわる
週末は車でショッピングモールに行く、というのがルーティーンだったのですが、緊急事態宣言下で人混みにはなかなか行けず。「今日は近くの公園やスーパーに行こうね」と言っても納得してくれず、車の前でずっと待っていたり、「〇〇(いつも行くショッピングモール内のフードコート)でご飯食べる!」と何度もつぶやいたり、ときに癇癪を起したり。とりあえず車に乗って延々ドライブしたり、そのまま近くの大きめのスーパーに(空いた時間に)行ったりしていました。通っている療育でも「いつもと違うパターンをやってみる」というこだわりを崩す練習しているのですが、家庭内ではなかなか難しいです…〔Eさん、子ども9歳〕

・休校や分散登校が理解できない
特別支援学校に通っている小学5年生の娘。毎日同じ時間に同じポイントからスクールバスに乗り、楽しそうに学校に行く姿に親も安心して過ごせていたのですが、コロナ禍で休校や分散登校になった時、「なんで土日じゃないのに学校ないの」と連日泣きじゃくっていました。「コロナで、学校がお休みなんだよ」と言っても理解できず…学校がなくても、朝一緒にバスポイントまで行き、1時間近くバスを待つ、でも来ないから何とか諦め、そのまま1~2時間歩く、という生活を送っていました。クラスの中でもパニックになる子が多かったようで、先生がリモートで何コマか授業をしてくれるようになってから落ち着くようになりました。〔Sさん、子ども11歳〕

障害を持つ子どもの特性とは


発達障害や知的障害には自閉症、ADHD、アスペルガーなどがありますが、それぞれにさまざまな特性や特徴があります。しかし、そのすべてに共通する特性や困りごとも多くあります。どんなものがあるのか、コロナ禍でどのような形で表れやすいのか、いくつか紹介します。

・こだわり
「この洋服以外は着たくない」「この道じゃないと行きたくない」など、日常生活の中で強いこだわりを持ちます。また、特定のおもちゃでしか遊ばない、回転するおもちゃを延々と見ているなどの行動面で強いこだわりが出る場合もあります。
ゲームの勝ち負けにこだわりすぎて、友達とトラブルになってしまうことも。
「学校には毎日行く」「週末は必ず出かける」というこだわりが強いため、コロナ禍で苦労する親も少なくありません。マスクがやっと着けられるようになったけど、今度は「取りたくない」というこだわりにつながってしまった、というケースもあるようです。

・反射
正確には「原始反射」といって、赤ちゃんが条件反射的にオッパイを飲んだり、目の前にあるものに手を伸ばす行為のこと。それが、成長しても残ってしまっている状態を「反射が出る」といいます。ほとんど無意識の状態で「目の前にあるから触る、叩く、あるいは口に入れてしまう」「そこにあるから掴む」といった具合です。歩いている最中に街中の電柱や手すり、ガードレールなどを触ったり叩いたりする行為は「反射」から来ています。

・適応できない
突然のことになかなか適応できない。これは障害のある子どもほとんどに当てはまるといえます。特に今回のコロナ禍(「マスクをする生活」が受け入れられない、など)、あるいは災害時(「家じゃないと嫌だ」と避難所に行くのを拒否したり、静かに落ち着いて過ごせない、など)は、「障害を持つ子どもの親にとって〝最大のピンチ″」という方も少なくありません。

・気持ちの切り替えが難しい
「こだわり」に通じるものがありますが、集中してやっていたことを中断したり、いつもと違う方法で行うことを嫌がるなど、「自分の気持ちを切り替えて次の(あるいは他の)行動に移る」ことがとても難しいという特性があります。
「今はこれができないから、他のことをしよう」「出かけるから、それ(今やっていること)はやめようね」という言葉掛けに応じなかったり、反抗してパニックを起こすなど、気持ちを切り替えて対応するのが難しいようです。コロナ禍のさまざまな制約やルールになかなか対応できないことも、この特性からきています。

周囲の理解が大切だけど…


「マスクを着けて生活」「いろいろな所を触らない」「給食は前を向いて静かに食べる」など制約だらけの生活の中、障害を持つ子どもは順応するのが難しい状況になっています。
普段の生活の中でも困りごとをたくさん抱えているため、障害を持つ子どもたちが安心して成長していくためには、周囲の理解が必要です。
とはいえ、さまざまな考えを持つ人がいる世の中、全員に「理解して」というのは無理な話。ましてやいつどこで感染するか分からない状況下で、マスクをしていない人を見ると、ついイラっとしてしまうことも…
障害を持つ子どものママやパパの多くは、「周りに迷惑を掛けないように」と一生懸命に、そして心の中でハラハラしながら対応しています。「理解」とはいかなくても、障害を持つ子どもの特性や困りごとを「知る」だけでも、状況は少しずついい方向に変わっていくのではないでしょうか。

ワクチン接種が進んでいるとはいえ、今後もまだまだ続きそうなコロナ禍。早く全員がコロナ前の「普通の生活」に戻れることを願うばかりです。

田崎美穂子

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