2021.11.12
脳の活性化と五感の刺激は切っても切れない関係!?子どもの五感を鍛える感性教育とは?
「元気に育ってくれればいい」と願いながら、つい「頭のいい子に育ってほしい」と思ってしまうのが親心。「頭がいい=勉強ができる、知識が豊富」というイメージですが、脳は健康や心のバランスもつかさどる、いわば人体の「司令塔」です。その脳を育てるためには、「五感からの刺激」がとても大切になってきます。
今回は、子どもの五感にいい刺激を与える「感性教育」について、分かりやすく解説したいと思います。また、五感の中でも表現するのに一番あいまいだといわれている「嗅覚」を育むためのイベントについても紹介します。
脳を育てるのに必要な五感とは?~脳のしくみのお話~
そもそも五感とは、「味覚」「聴覚」「嗅覚」「視覚」「触覚」の五つの感覚のこと。五感は持って生まれるものですが、最初はどれもぼんやりしたものです。五感は成長とともに、外からたくさんの刺激を受けながら発達します。逆をいえば、刺激がなければ発達できません。たとえばいろいろなものを見ることで視覚が、話しかけたり読み聞かせたりすることで聴覚が、抱っこしたりたくさん触ってあげることで触覚が刺激され、発達していきます。
では、脳の働きと五感はどう関係しているのでしょうか。赤ちゃんの脳細胞の数は大人とほぼ同じですが、「ニューロン」(情報処理を行う神経細胞)同士はつながっていない状態です。ニューロン同士が結びつくとき、「シナプス」という接続点を作っていきます
。シナプスが増えることで言葉を覚えたり、さまざまな動きができるようになったりしながら成長していくのですが、シナプスを増やすために必要なものこそが、五感からの刺激。五感から受けた刺激が電気信号となってニューロンに送られ、その信号を他のニューロンに伝えようとするときにシナプスができます。「脳は五感の刺激なしでは発達できない」といっても過言ではないようです。
子どもの五感を育てる方法(感性教育)とは
昨今よく聞く「食育」も、五感を育てるための取り組み(感性教育)といえます。
・味わうことで「味覚」
・食事の香りで「嗅覚」
・食材の彩りで「視覚」
・食材の舌触りで「触覚」
・食事中の会話で「聴覚」
を育めるといわれています。何気ない日常の食事時間でも、五感はしっかり育まれているのです。そのほかにも、日常の育児の中で簡単にできる「感性教育」を紹介します。
【いろんなものをぐしゃぐしゃ】
生後半年くらいからは、目にするものをつかみたくなる時期です。子どもの手に収まる程度の大きさの新聞紙やティッシュや布などを「ぐしゃぐしゃ!」「まるまる」など声がけしながら一緒に丸めたりちぎったり、投げたりします。ものの形の変化を見る「視覚」、触り心地やぐしゃぐしゃにする感覚「触覚」、声がけで「聴覚」が育まれます。口に入れてしまわないよう気をつけましょう。
【はい、どうぞ】
1歳手前になると、手も少し器用になり、上手につまんだり左手から右手に持ち替えたりできるようになります。おもちゃや洗濯物などで、「〇はどれかな?」「はいどうぞ」「ちょうだい」「ありがとう」など声がけしながら、やり取りします。いろいろな大きさ、柔らかさのものをつまむことで「触覚」、探してつまむことで「視覚」、やり取りの声がけで「聴覚」が育まれます。
【簡単リサイタル】
子どもが好きな音楽を聴きながら、一緒に歌ったり、踊ったり、身近なもの(ティッシュボックスや空き缶、椅子などなんでもOK)を叩いて音の違いを楽しむなど、簡単親子リサイタル。歌ったり踊ることで「聴覚」、叩いて音の違いを楽しむことで「触覚+聴覚」、親が歌ったり踊ったりする表情や姿を見て「視覚」が育まれます。
【外遊びはすべての五感が研ぎ澄まされる】
屋外は五感を刺激するものであふれています。砂や泥遊びをすれば手触りや匂いを感じるし、木の多いところは鳥の声や虫の音が聞こえ、葉っぱや幹など触って楽しむものもたくさんあります。近くの公園に連れて行くだけで、実は五感はしっかり育っているのです。
パパやママに聞いた、子どもの五感を育てていますか?
「五感を育てよう!!」と意識しているわけではないけれど、たくさん刺激を与えてあげようと思っている(実はこれがしっかり五感を育てています)パパやママたちに、どのようなことをしているのか聞いてみました。
・なるべく裸足で過ごす
その昔、私が通っていた幼稚園が「裸足保育」だったそうです。屋内はもちろん、園庭でも裸足。母に聞いたところ、「足裏は第二の心臓といわれ、足裏を刺激することは健康だけじゃなく脳の記憶にも良い」という方針だったそうです(母もよく覚えてたな)。子どもが小さい頃から、家の中はもちろん、芝生の公園や駅ビルの屋上(安全なゴムシート)などでは裸足で遊ばせています。効果は?と聞かれるとパッとは答えられませんが…人の家で靴下を脱ぎ始めると焦って履かせています(笑)〔Hさん、子ども3歳〕
・触れる絵本、音の出る本
毎週末公園に行ったり、少し遠い広場に行って思いっきり体を動かしていましたが、コロナ禍はそれがなかなかできず。代わりに、触って感触を楽しむ絵本や、太鼓やピアノ機能がついた本などを何冊か買って、それで遊んでいました。感触を楽しむ絵本は色々な種類があって、いろいろな動物の毛(それに近づけた偽物ですが)が特にお気に入りで、「ふわふわ」「ちょっと硬いね」と感触を言葉にしたり、動物の名前もたくさん覚えました。
〔Tさん、子ども4歳〕
・家が汚れてもいい!
保育園で絵の具遊びや泥遊びが大好きな娘。「家ではやらせてあげられないな」とずっと思っていましたが、週末過ごすネタが尽きてきて…(苦笑)覚悟を決め、部屋にブルーシートを敷き、絵の具を直接手につけて画用紙にペタペタしたり、スライムづくりをしたり。コロナ禍はベランダで砂遊び(飛び散りにくい家遊び用の砂を買って)、夏は水遊びをしました。
振り返ると、けっこう五感を刺激する遊びをしていたなーと。後片付けがいちいち大変でしたが…〔Sさん、子ども5歳、3歳〕
「香り」を使った子どもの感性教育イベントとは
人間の五感の中で、言語化しようとすると曖昧になりがちなのが「嗅覚」と言われています。
確かに香りはあいまいで捉えにくいもの、「どんな匂い?」と聞かれると一瞬考えてしまいますよね。また、言葉がけや触る、味わったりすることで育まれるほかの五感と違い、「育むハウツー」があまりないのも嗅覚といえます。
今回BRAVAは、SCENTMATIC株式会社(以下「セントマティック」)の「香り」に関するラウンドテーブル取材に参加。セントマティックは、五感の中でも最も未知な領域である「嗅覚」に着目し、香りを言語化する AI ツール 「KAORIUM(カオリウム)」を開発しました。ビジネスなどさまざまな場面で「香り」を活用した取り組みを行う中、カオリウムを取り入れた感性教育イベントも行っています。
これまで、ロスフラワー(廃棄されるはずの花)や柚子を使って、香りで子どもたちの「嗅覚」を刺激し、創造性を活性化させるオンラインイベントを行っています。嗅ぎ方や触ったりすることで香り方が変わることを実感したり、さまざまな問いかけを通して香りから想起されるイメージを広げるなど、子どもの創造力を最大限引き出していきます。
その中で子どもが自由にイメージした要素をつなぎ合わせ、一つの物語として文章・絵で表現し作品を完成させていく、という内容。
「香りを意識しながら嗅ぐ体験は、右脳・左脳の両脳を活性化させる」という研究結果も出ています。参加した保護者や子どもたちからも、「本当に楽しい学習で、子どもたちの感性がさらに広がったと感じている」「香りだけで、文字や絵に表現できるとは思わなかった」など、満足度の高い評価を得ています。
「今日から五感を刺激しなきゃ!」「そのためにはまず〝視覚″はこれ、〝触覚″はこれ…」なんて、どうか難しく考えないでください。普段の子育ての中で、五感は十分刺激されています。その中に「あ、これちょっとできるかも」「子どもと一緒に楽しめそう」と思うものをできる範囲で、あるいは気が向いたときに少しだけ取り入れたり、イベントに参加してみる、などでいいと思います。
子どもは大人が思っている以上に、ひとつの行動からさまざまなことを学んだり、想像したり、興味を持ったりするものです。そこに大人がほんのちょっと声がけしたり手を加えるだけで、さらに子どもの五感が刺激され、世界が広がっていきます。子どもの行動を観察したり一緒に遊ぶだけで、実は大人の五感も刺激されているかもしれませんね。
参考:SCENTMATIC 株式会社ホームページ香りの超感覚体験をつくる SCENTMATIC(セントマティック)
田崎美穂子
mamaライター