2015.06.25
【雨の日には】声に出して読み聞かせたい、世代を超えた名著〜ワーママBook shelf〜
獣医ママが教える、読んでよかった~
「雨の動物園ー私の博物誌」
舟崎克彦著
外の世界への想像力を育む
都会のなかで暮らしていると、動物との関係が希薄です。イヌやネコなどのペットとしての動物は身近にいても、カエルやコウモリ、トカゲやヤモリなどはほとんど見かけることがありません。そんな小さな動物たちから、生命や自然、季節の移ろいを教えられる機会は少ないでしょう。
でも、自分の子どもたちには、想像力を持ってほしいと思います。この地球にはたくさんの動物たちが、それぞれいろいろなところで、いろいろな想いをもって、必死に生きているのです。
本著は、“鳥博士”とも言われる野鳥に詳しい少年が、自然のなかで出会った様々な動物たちとの交わりを描いた自叙伝的作品。著書は「ぽっぺん先生シリーズ」など数多くの童話や絵本を手がける舟崎克彦さん。1974年に刊行されて、サンケイ児童出版文化賞や、国際アンデルセン賞などを受賞しています。
この博物誌は、舟崎少年の目線で語られています。舞台は昭和20年頃の東京。舟崎さんは7歳で母親を亡くしており、話が進むにつれて、彼の感情の変化や心の成長も窺えます。少年は通り過ぎていく小さな動物たちから、生き物に対する深い愛情と、別れを学ぶのです。
小さな動物から感じ取る、生きるということ
本著では、小さな動物たちが生き生きと描かれています。ヒキガエルは伯爵に、トカゲとヤモリは哲学者に例えられるなど、独特なユーモアを交えて観察されています。たとえば、こんな風にです。(以下、引用)
「彼はまるで(中略)、伯爵かなにかのようにどうどうと、雨にぬれた庭をよこぎっていく。この伯爵は、ばか陽気なパーティーや、心の底まですっきりするようなお天気がすきではない」、「だから彼は自分の住所も電話番号もだれにも教えず、だれもふみこまないようなしげみの、しめっぽい下かげにひっそりと暮らしている」(ヒキガエル)
「この年老いた哲学者がおでましになるのはいつも、おてんとさまが高くなってからだ」(トカゲとヤモリ)
目を閉じてゆっくりと情景を思い浮かべれば、自分が縮小されてまるで動物たちと一緒にその場にいるような、不思議な感覚を味わえる描写ばかり。
「もう、いそがしくっていそがしくって、人間なんかに会っているひまはないのである」(モグラ)
自然のなかで動物と会話する少年の観察目線から、動物たちの小話をひっそり聞いているような気分も味わえます。
梅雨の日は、家でゆっくり読書を
わたし自身も中学生のときにこの本を読みました。大人になって子どもを産んでから再度手に取ったとき、この本には「生きる」ことのすべてが詰まっていると思ったのです。
小さな動物たちには、愛情と好奇心をもって接してほしい。仲間はずれやけんか、別れなど悲しいことに対峙したときに、それを乗り越える心を持ってほしい。そう思って、自分の子どもたちにも何度も読んで聞かせました。
雨がしとしと降り続くこの季節。お外へ遊びに出かけられないときは、家のなかでゆっくり読み聞かせはどうでしょうか? 子どもと一緒に、自然にとけ込んでいくような気持ちで、この本を読んでほしいと思います。大人も子どもも楽しめる、世代を超えた名著です。
〈薦めてくれたワーママ〉
小学生と中学生の女の子を育て、獣医師として働くアラフィフママ。「雨の動物園」をはじめ、気に入った本は何度も何度も読み返すという。動物の本はもちろん大好きで、これまでに一番読んだ本は、マンガ「動物のお医者さん」(佐々木倫子著)
<お薦めされた本>
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浦和ツナ子
ライター/編集