2015.09.24
パワフルで懐かしくて愛おしい!「未来ちゃん」を知っていますか?
ラボで働くデザイナーママの「読んでよかった!」
『未来ちゃん』
川島小鳥 著
懸命に生きる子どものパワーが炸裂する珠玉の写真集
専門学校で写真を学び、現在はラボ(現像所)でデザイナーとして働く私。今まで、好きな写真家やデザイナーの作品を集める……ということはあまりなかったのですが、一冊だけ、バイブルのように大切にしている写真集があります。それが今回紹介する「未来ちゃん」です。
最初はたしか、雑誌で取り上げられているのを見たのがきっかけ。被写体の女の子が発する強烈なパワーに目が離せなくなり、まだまだ見たいと思うほど引き込まれたのを覚えています。
普段は、あまり本屋にも行かないのですが、その後たまたま写真集コーナーで実物を発見。表紙のインパクトが絶大すぎて(笑)、やはり即買いしてしまいました。
その頃はちょうど長女が2歳を迎える目前で、本格化した育児にバタバタな毎日。独身時代~産後までの写真熱も冷め、復帰した仕事も両立の大変さにやりがいを見出せなくなっていました。でも、この本と出会ったことで気持ちがとても前向きになり、希望の光が見えた気がしたのです。
この「未来ちゃん」は、新潟の佐渡ヶ島に住むひとりの女の子を一年にわたり撮り続け、一冊にまとめた写真集。作者の川島小鳥さんは今年、あの木村伊兵衛写真賞を受賞した若手の注目写真家です。(のちに男性と知ってビックリしました!)
ちなみに、被写体となった女の子は実在するものの、「未来」は本名ではないとのこと。川島さんが「子どもの写真だから『未来』」=「未来ちゃん」というコンセプトで制作したものなのだそう。実際、写真の彼女は生命力にあふれていて、本当に「未来」の塊だと感じました。
この写真集の一番の魅力は、飾らない、本能むき出しの未来ちゃんの姿。鼻水を垂らして泣く、自然と一体になって笑う、一心不乱に食べる……毎日を精一杯生きている様子が伝わってきて、見ているこちらまで、ものすごいエネルギーを貰えます。
障子をやぶって覗く、押し入れにもぐる、雪を食べる、狭い木の幹にはさまる……子どもってこういうことやるよね~ということをとことんやってくれる未来ちゃん。そうかと思うと、ハッとするほど大人びた横顔を見せてみたり。クルクル変わる表情が愛おしくてたまりません。
また、彼女の住まいは木造平屋の昔ながらの日本家屋で、その他の背景も昭和を感じるノスタルジックな雰囲気。日本人なら誰でも懐かしいと感じる風景と、おかっぱ頭で赤いほっぺの未来ちゃんが本当にしっくりくるんです。
眺めていると、自分の中にある幼い頃の記憶や、いつかどこかで見たような景色がよみがえり、その時の気持ちまで思い出すような不思議な感覚になりました。
子どもの、この時しかない「今」を大切に味わいたい
実はうちの娘、体を動かして遊ぶのがとにかく好きで、じっとしているのが苦手。これがこの子の個性だと分かっていつつも、「他のおうちの子はあんなに静かにしているのに」「女の子なんだからもっとおしとやかにしなくちゃ」と、少し焦った気持ちがあったのも事実です。
しかし、この写真集で、生命力を爆発させている未来ちゃんを見て、「そうそう、これが本来の子どもの姿だよね」と、ものすごく安心できたんです。
目の前で、命を輝かせて生きている我が子を見て、素直に「これでいいんだ」と思え、育児に自信を取り戻した瞬間でした。
それと同時に、「この短い子ども時代をしっかり残さなきゃ」と、冷めかけていた写真熱が急激にあがりました。親心的には「この愛おしい『今』という時間を大切に味わいたい」、カメラマン的には「こんな魅力的な被写体が目の前にいるのに、撮らないなんてもったいない」という感じでしょうか(笑)。
それからは、“記念なんかなくても、日常を残すこと”を心がけるようになった私。これからも、この写真集のように、子どもの生きていく力強いエネルギーを撮り続けて行けたらいいなあと思っています。
<お薦めしてくれたワーママ>
5歳と1歳の娘を育てながら、フィルムメーカーのラボで働くママ。担当は、フォトブックのデザイン&レイアウト。学生時代から写真を撮り続けており、受賞歴もある本格派。
<お薦めしてくれた本>
『未来ちゃん』
川島小鳥
ナナロク社
定価:本体価格2,000円+税
発刊:2011年4月
ISBN:978-4-9042-9209-9
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横山香織
ライター/編集者