2016.02.11
【夫ってどんな顔してたっけ?】芥川賞受賞作「異類婚姻譚」を読みました!
夫という存在を独特の距離感で見つめられる
シュールな話題作
「異類婚姻譚」
本谷有希子著
作品とともに、女性としての人生を見つめる
本著で芥川賞を受賞した作家の本谷有希子さんは、最近ご出産した一児の母。
BRAVA読者のみなさんと同世代のママでもあります。
本谷さんは、「劇団、本谷有希子」の主宰を務める劇作家でもあり、独身時代は、「女性の自意識」を毒々しく描く作品を得意としてきました。
小説に出てくるのは、突飛で、奇怪で、不器用で愛らしくて、どちらかと言えば生きづらい女性たち。
そんな女性たちにひそかに共感し、わたしはすっかり本谷作品のファンになりました。
すべての小説をリアルタイムで読んできて感じたのは、ご結婚されてからはすこし作風に変化があったのかなぁということ。
2013年に発表した「自分を好きになる方法」では、女性の「本当の相手を心の底から求める女性の気持ち」を長いスパンで描いており、「結婚に意識がむいていたのかな」と感じました。
たまたまわたし自身の結婚・出産とも時期が近く、本谷さんの作品に、女性としての人生を重ねて読んできたものです。
…と、前置きが長くなりましたが、本著はそんな本谷さんがご出産を経験し、芥川賞を受賞された記念すべき作品!
しかもテーマが「夫婦」だというから、手元に届く前からとても楽しみにしていました。
夫って、どんな顔をしていたんだっけ…?
日々子育てと仕事に追われ、「夫婦」について深く考える時間が減ってはいないでしょうか。
本著は、毎日を気ままに暮らす専業主婦が、夫と一体化してしまうような感覚に陥る、夫婦の「ミステリー」を描いた作品。
本の書き出しは「ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた。」
この時点で既に、ギクッとなる女性も多いのではないでしょうか。
結婚生活が長くなるとたまに言われる「夫婦似てきた問題」。
かくいうわたしも結婚4年目にして何度か「なんだか似てきたね」と言われたことが…。
夫婦とは、毎日(ほぼ)同じものを食べ、会話をし、寝床をともにすると、どうしてか似てきてしまうもの…そんな風に考えていたけれど、実はそうじゃないんです。
もっと問題は根深いんです。
次回は「子ども」の作品に期待!
夫という「他人」が、当たり前に生活のなかにある違和感。
それは、一度感じてしまったらもう拭えない「違和感」になります。
奇妙な展開を追いながら、「わたしの旦那って、どういう人だっけ?」「そもそもわたしって、どういう人だっけ…?」と、結婚前と結婚後の自分の本質を探るように読んでいました。
衝撃のラストを受けて思ったのは「で、夫ってどんな顔していたっけ?」ってこと。
目の前で横になってテレビを見ている旦那をそっと覗き見て、「夫婦」って不思議だなぁとしみじみ感じました。
そしてとっても個人的な思いですが、本谷さんの次回作は、ぜひ子どもをテーマにしてほしい!
出産・子育てを経験した本谷さんの作品が、今からとっても楽しみです。
《おすすめしてくれたワーママ》
独身時代から本谷有希子さんの大ファンのママ。
自意識過剰な田舎ムスメだったわたしには、キリキリとした「毒」にあふれた本谷作品にハマりました。
好きな作品は、「乱暴と待機」や「グ、ア、ム」など。本作は、読み終わったあとに不思議な読後感が。良い作品だけど、夫には内緒にしておこう…となぜか思ったのでした。
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浦和ツナ子
ライター/編集