2019.12.12
モヤモヤが溜まって、少し疲れている「働くママ」にオススメの本
日々、家事育児仕事をぐるぐる回していると、終わりがないし、切れ目もないし、いろいろ溜まってしまうものがあります。
本日紹介するオススメの本は、そんな気づかぬうちに溜まってしまった自分の中の「モヤモヤ」にピンポイントで共感してくれ、代弁してくれ、勇気づけてくれるものばかりです。
最近、ちょっとお疲れのワーママさん、機会があれば手にとってぱらぱらと読んでみて下さい!
柔軟な生き方や考え方に刺激を受ける
中野円佳『なぜ共働きも専業もしんどいのか-主婦がいないと回らない構造-』
こちらは『育休世代のジレンマ』で一世を風靡した中野円佳さんの新刊です。
『育休世代のジレンマ』は、彼女が日経新聞記者時代の育休中に大学院に入り、修論として書き上げたものがベースになっていますが、その中では「育休復帰後は日本経済新聞社を内側から変えていく!」という力強い宣言をされていました。
ですが、復職1年で別会社に転職され(!)、その後、夫のシンガポール赴任に帯同するためにフリーライターになり(!)、現在は2人のお子さんを現地の幼稚園や英国系インターナショナルスクールに通わせつつ、駐妻(専業主婦)コミュニティにどっぷり浸かっているそうです。わずか数年で、起伏に富んだ興味深い人生を送ってらっしゃるなあと思いつつ、今回の本は「ワーママも専業ママもどちらの立場も大変だよね。それってなぜ?」ということをご自身の経験も踏まえながら、インタビューを通じて解き明かそうとした意欲的な1冊になっています。
専業・兼業含めて、あらゆる立場のママさん、パパさんが出てくるので、読めばどこかしら共感できる点があるのではないかと思います。
仕事を辞めたくなった時に読むと頑張れるかも・・・
周燕飛 『貧困専業主婦』
この本のスゴイところは、「仕事と家庭の両立がしんどすぎ。もう仕事やめたい!!」と、ちゃぶ台をひっくり返したくなった時に読むと、ぐっと思い留まることができる点です。
実際に、初期のつわりがひどくてしばらく休みを取り、このまま退職するかどうか悩んでいた友人に何冊かの本と一緒にプレゼントしたら、私と同様に彼女もかなりの刺激を受けて、現在は(つわりも治まり)復職して仕事を続けています。というくらい説得力のある本です!
かいつまんで本の内容を説明すると、かつて勝ち組の象徴だった専業主婦家庭の貧困率が増えていることが豊富なデータやインタビューをもとに分かりやすく書かれています。男性労働者の生涯賃金が下がり続けていること(賃金カーブが緩やかになり、企業が退職金を大幅に減らしたり福利厚生費を削ったりしている・・・)、教育費が高騰していること(この分野だけハイパーインフレ)、平均寿命の延びにより老後の生活費が増えていること(人生100年時代)などがその原因として紹介されており、「結婚して出産したらとりあえず3歳まで(もしくは小学生になるまで)は専業主婦」という選択が急速に難しくなっている現状がよく分かります。
その上で、この本のポイントは、「しんどかったら一旦仕事を辞めて戻ってくる、でなく、とりあえずしんどくないように工夫して仕事を続けてみる、今働いてなかったら気軽にお試しで働いてみる、にはどうすれば良いか」という視点で、現状分析と改善提案をしているところかなと思います。
全ての女性に読んで欲しい(全ての夫にも)
チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』
読後にツーっと静かな涙が出た本でした。働きながら子育てをしている人、子育てのために仕事をやめた人、全てのママにとって、いえ、全ての「女性」にとって、読めば感情が揺さぶられる1冊だと思います。
ちなみに私は82年より前の生まれなので、「82年生まれなんて若いわ~、感覚合わないかも~、しかも韓国だし~・・・」と思いながら友人に勧められて読み始めたのですが、淡々とした書きぶりなのに、読んだ後に(時間差で)いろいろ心に突き刺さってくるスゴイ1冊でした!
日韓でベストセラーになるわけだ・・・・。
韓国在住の友人に聞いたところ、特に20~30代の若い世代から絶大な支持を受けているそうです(日本の女性も生きづらいけど、韓国の女性はもっと生きづらい気がしました・・・)。
先日、新たに映画も封切られて、短期間で動員数が300万人を超えるなどの社会現象にもなっているそうです(「コーヒープリンス1号店」や「トッケビ」などで主役を演じ、日本でも人気がある俳優のコン・ユ氏が夫役を演じているそうです。映画も観てみたいなあ・・)。
家庭での躾や教育の章が秀逸!
鶴光太郎『人材覚醒経済』
なんだかすごくカタいタイトルだな、ぜんぜん読む気しないな・・と思いつつ、図書館で手にとって目次を見たら、なんとなく面白そうなので読んでみました。そしたら、タイトルの予想を裏切って面白かったです。
フルタイム同士で子育てをする場合、「金で解決する(家事育児の外注)」か「親(祖父母)に頼る」の二者択一が殆ど。でも実際には、「金」や「親」などの解決策がある夫婦はほんの一握りで、大多数はそうじゃないよね・・・結局のところ、たいていは妻が働き方を制限して、夫が無限定・長時間労働になっている現状だけど、それってどうなの?国としても無駄が多いよね・・・という現状を俯瞰しながら、誰もがムリせず、家事や育児に関わりながら働ける共働きを前提にした就労環境や社会・税制制度へ切り替えていくために何が必要なのか、といったことを様々な角度から考えています(じゃないと日本がもたないという筆者の危機感から)。
個人的に面白かったのは、「労働市場で役に立つ人材の育成」という観点から、かなりの紙面を割いて「幼少期の家庭・学校教育のポイント」について書かれている点です。例えば、学校でも職場でも重用されるのは、1「好奇心・創造力・審美眼を持った”開放性”」、2「自己規律・粘り強さ・熟慮がある”真面目さ”」、3「積極性・社交性・明るさを持った”外向性”」、4「利己的でなく協調的に行動できる”協調性”」、5「不安・イライラ・衝動性が少ない”精神的安定性”」の5つの性格スキルをバランスよく併せ持つ人間だそうです。これはいわゆる「非認知能力」といわれる分野の話なのですが、幼少期は、特にこの能力を高める家庭での躾が大切だということなどが内外の実証研究をもとに書かれていました。また具体例も挙げられており、「蔵書の多い家庭で育った人は高賃金労働者になりやすい」、「中高等で無遅刻だった人は、初職や現職で正社員になりやすい」、「運動系クラブでキャプテンをしたり、生徒会に所属してリーダーシップを発揮していたりした人は社会に出て成功しやすい」ということなどが書かれていて、興味深かったです。
他人の子育てを垣間見られる!
ブレイディみかこ『僕はイエローでちょっとブルー』
日本の貧困家庭出身の筆者が、飛び出していった先のイギリスで、アイルランド出身のトラック運転手(元は金融マン)の夫との子を育てながら、イギリスの超格差社会の中で、アジア系ハーフとして生きる息子さんの学校生活を鋭く観察しています。とてもテンポよく気軽に読める“軽さ”もいいなあと思います(多分1時間で読み終えるくらいの軽さです)。
それにしてもいろいろな人の子育て関連の本を読むと、人が変われば、ところが変われば、こんなにも子育ての内容が違うんだ!と毎回驚くと同時に、ぱっと視野が広がる感じがします。
このほかにも、廣津留真理『世界に通用する一流の育て方』、ボーク重子『世界最高の子育て』など、いろいろなママさんが独自の子育てについて本を書かれていますが、読む度に「ひゃースゴイ・・・」「こんなこと考えているんだ」と何かしらインスパイアされます。
というわけで、相変わらず雑食にいろいろ紹介してしまいましたが、いかがでしたか? 移動時間や就寝前などぜひ手にとって読んでみてくださいね。