2020.11.07
育児と介護「ダブルケア」の現実!体験談と今から備えておくべきこととは?
ワンオペ育児という言葉は多くの人に浸透しつつあります。では、ダブルケアという言葉はどうでしょう。
ダブルケアとは、育児と介護、両方を担う女性(時には男性)の立場を言います。
介護問題は「うちの親70歳過ぎたけど、どっちも元気よ」という人も多くて、実際に我が身にふりかからないと、正直なかなかその大変さがわかりません。
介護、というと寝たきりの身内を在宅で看病するようなイメージが強いかもしれません。こうした介護が本当に大変なのはもちろんですが、実はもっと多いのが「母親が入院した」「父親が自転車で転んで骨折して家にいる」深刻な状況ではないけれど、身近なサポートが必要な場合、です。
こうした「突然の出来事」は誰にでも起こりうることなんです。突然ふりかかってきた「ダブルケア」体験者のリアルな声を、今知っておくのはひとつの心がまえとして必要なのではないでしょうか。
育児と介護ダブルケア体験談
早くに母を亡くしましたが、その後も現役を退いたものの趣味に地域行事に元気に過ごしていた父が、昨年暮れに突然倒れました。まだ60代ですし青天の霹靂で、夫と一緒に救急病院へタクシーを飛ばし、それから3日ほど意識朦朧としている父に付き添い会社も休みました。
やがて症状が落ち着き、大学病院から小さな病院へ移ったんですね。この時期から本当の意味でダブルケア(育児と介護の両立)の大変さが身に染みました。
保育園は延長しても1分たりとも遅れられないし、でも病院に行けば看護師さんから話があったり洗濯物をとりまとめるだけでも30分はかかります。しかも土日のどちらかは半日、病院へ行き細々とした用事をしないとなりません。平日も仕事、病院、保育園とギリギリで常に私は走っている状態で、ずるずると子どもを引っ張りながら途中のコンビニで買い物し、パックのままの総菜を出した横で倒れるようにソファーで寝てしまう始末。子どもの話をゆっくり聞いてあげる気力もわいてきません。夫は普段は帰宅が遅く、頼れるのは週末だけ。それも毎回となると口には出しませんでしたが、夫は夫で「週末くらい、ゆっくりしたい」のは態度でわかります。だけどお互い、その理由が病の父親のためですから「責める」場所がないんですね。
この頃「ずっとこのままならどうしよう」と父親に対して辛く当たってしまいそうになる自分がいます。もうどれだけお金払ってでもいいから全部面倒見てくれる介護サービスのとこに入れて、たまのお見舞いだけにしたい、そんなことをふっとリアルに考えている自分がいます。
と同時に、育ててくれた優しかった父に対して「中途ハンパな病状だから困るんだ」と平然と考える自分にハッとして、死ぬほど落ち込みます・・・。
(Nさん/38歳・父親69歳)
母が自転車で転倒し、骨折した時に介護ってほんとに大変なんだと実感しました。両足の骨折で車いすで自宅に戻りましたが、退職している父親は家のことが何もできないんです。
頭はしっかりしていて体が言うことをきかない母は、それまでの穏やかな性格が一変したようにイライラしており、常に父親とケンカ状態。何かと言えば母や父から電話があり、その都度、会社から家へ駆けつけたり、30分以上も話してなだめたり。子供はひとりで既に小学校4年生でしたから、留守番もなんとかできたからまだマシでしたが、カリカリしたり落ち込んだりする私に子供なりに気を遣っていた様子で、今思い出すと、とても可哀想だったなと感じます。もし保育園時代だったら、たぶん仕事辞める判断を迫られていたでしょう。
母の足はほぼ治りましたが、元通りというわけにはいかず、今でも私は週に1度は実家に行き、ゴミ出しや力が必要な家事を手伝っています。あれ以来、夫とどちらの両親に関しても「介護は人ごとではない」と話し合うようになりました。
(Yさん/41歳/父75歳 母74歳)
夫婦関係にも影響してくる「続く介護」の重さ
命に関わるような病気でなくても、ほんのちょっとしたことがきっかけで親は一気に老けます。そうなると、いわゆる寝たきりの介護と違った意味で、側にいる身内が日々サポートしないと生活が成り立たないんです。
もともと父親は心臓が悪く、元気な母が世話をしつつ、時には私の子どもの面倒まで見てくれていたのですが、その母が目の手術をしてから生活が一変しました。片目がほぼ見えなくなり、少し呆けも始まっています。介護サービスは利用していますが、日常生活を誰かが手伝わないとやっていけないんです。
ゴミ出しや布団干し、洗濯、ちょっとした家事ですが数日行かないと家の中が大変なことになってるんで・・・結局、ほぼ1日おきに通いました。時短勤務、子どもは1歳10ヶ月でしたから、保育園とファミサポも使いましたが、これで子どもがちょっと風邪引いたりするとアウト。夫も毎回有給をとって協力してくれたのですが、なんていうのかな、これが育児分担ならいいんですが、自分の親の介護でしょう、申し訳ない気持ちで負い目ばかりがふくらんで、なんだか夫婦関係もギクシャクしてしまって。
この時に親の経済状況も初めてわかりましたが、年金生活ですし、様々なサービスをフルに受けるのは難しい。結局、夫に内緒で私の給料から負担して、外注サービスをお願いしました。少しはラクになりましたが、生活費は夫が、私の給料から子どもの教育費貯蓄や習い事などをまかなっている状況なんですが、現在は積立もストップ。せいぜい半年くらいだろう、と思っていましたが、結局、2年たった今、少しずつ母の呆けがひどくなっているので、もう本当にそろそろ親の介護をどうするか判断しなくてはなりません。
調べ始めましたが、介護付き老人ホーム探しだって大変なんですよ。自宅を売却すれば・・・とか思うんですが、遠くにいる兄が反対。正月くらいしか帰宅しない兄に何がわかるんだと、兄弟仲も一気に冷え込みました。介護は身近にいる人々とも難しい関係になりがちです。いろいろな意味で辛さが増して、時々ワケもなく泣き出してしまいます・・・。
(Eさん/39歳/父72歳 母75歳)
介護のために「今できること」は
●親が元気なうちに上手に「もしもケガや病気になったら」と介護についての話をしておく
●親の家の実情(経済面や処理してよいもの、親戚への連絡等)を把握しておくこと
●夫とも互いの両親の介護について多少なりとも相談しておく
●いざとなったら「お金ですむこと」は多い、と割り切って考えておくこと。
最近、テレビでは「終活」が話題になっていますね。でも、子どもに迷惑をかけないつもり、くらいは考えていても、なかなか実際には「まだまだ元気、まだまだ現役」と思っているので、両親もまさかの事態を想定して準備しているケースは少ないんですね。
それに「もし寝たきりになったら」なんていう話はなかなか両親に切り出しにくいものです。でもいざという時のために、少しずつ何かの折りに「お母さんが倒れでもしたら、家のことはどうしたらいいの」となにげなく話を持ち出してみましょう。
介護で一番辛いのは、期間が長引けば長引くほど、ダブルケアの負担がより増していくことです。しかし一般的に介護を要するような状況は「まったく前と同じような状況に戻る」ことは少なく、結果として「いつまで続くんだろう」と決して口には出せない焦りや不安も生まれてきます。
「介護がスタートすると、先が見えない」その疲れがたまってきて、もういいや、と親を見捨てたくなるような気持ちを一瞬でも持ってしまうことの辛さ。そのことに対する激しい後悔や自責の念が、ダブルケアを担うひとりの肩にのしかかってきます。介護には体力的・経済的な問題の他に、見えないうちに積もる精神的な疲労が実はとても大きいのです。
「まだまだ先のこと」ではなく、起こりうる現実として多少なりとも心構えをしていおくことが必要なのでは、と、実際に介護を経験し、親を見送った私としては思います。
※この記事は2018年6月に公開されたものです。
大橋 礼
ライター
年の差15歳兄弟の母。DTP会社勤務後、フリーで恋愛・料理・育児コンテンツを執筆中。今や社会人長男のママ仲間とは「姑と呼ばれる日」に戦々恐々しつつ、次男の小学校では若いママ友とPTAも参戦中。飲めば壮快・読めばご機嫌!本とお酒があればよし。