2021.08.25
秋も食中毒予防は万全に!キャンプでも人気なあの料理にも注意が必要
夏物のセールが終わり、秋冬のファッションや秋の味覚が店頭に並んだら、気分はすっかり秋ですね。秋は過ごしやすい季節になるため、キャンプやハイキングなど屋外で食事をする機会も増えます。
そして、食中毒への意識が薄れがちですが、実は9月、10月になっても食中毒の発生件数は、真夏の8月と大差がありません。さらに、つくりおきに便利でキャンプでも人気なメニューにも、食中毒予防でうっかりしがちな注意点があります。
・キャンプで楽しく食事をつくって食べたら、皆そろってお腹が痛くなった
・つくりおきの人気メニューを翌日に食べたら、具合が悪くなった
こんな悲しい事例を私は何度かみてきました。食中毒予防で秋に注意すべき点と、みんなが大好きな人気料理の食中毒予防法を、食育アドバイザーで食生活アドバイザー、幼児食インストラクターでもある筆者から紹介します。
秋も食中毒に気をつけるべき理由
梅雨から夏の暑くてジメジメした季節には、誰もが自然と食中毒対策を行っているでしょう。手づくりのお弁当やお店で買った食品の持ち運びに、保冷剤を使用している方も多いですね。
しかし、9月、10月には秋の気分になって、食中毒対策を忘れがちではありませんか。気持ちは秋になっても、まだまだ食中毒のリスクは多く残っています。地球温暖化の影響か、9月、10月になっても多くの地域で気温の高い日が続きます。また、夏の暑さや夏バテで体力や免疫力が落ちやすくなりがちなことも、食中毒のリスクの一つです。
さらに、ハイキング、ピクニック、秋の運動会のような屋外で食事をする機会や、キャンプでは屋外で調理することも増えます。食材や調理済みの料理を屋外に置く時間も長くなるので、食中毒の危険性が高まります。
9月・10月になっても油断せずに、食中毒予防の対策を続けましょう。
食中毒予防の三原則「つけない」「ふやさない」「やっつける」
まずは、食中毒予防の基本を確認しましょう。2020年に発生した食中毒の患者数によると、原因の65.9%が細菌、続いて25.3%がウイルスでした(厚生労働省「令和2年食中毒発生状況」より)。食中毒を防ぐ三原則は、食中毒の原因となる細菌を「つけない」「ふやさない」「やっつける」です。
【1】つけない
食材に食中毒菌をつけないようにします。
食材だけでなく、キッチンや調理器具、食器やお弁当箱もしっかり洗って、清潔を保ちます。調理前に、必ず手を洗いましょう。
【2】ふやさない
食材についた食中毒菌を増やさないようにします。
20~40℃で水分が多い状態のような、食中毒菌が繁殖しやすい環境を避けます。食材は低温で保存して、生鮮食品やお総菜を買って帰宅したら、なるべく早く冷蔵庫に入れましょう。お弁当を保管する環境も、保冷剤などを活用して高温多湿になることを防ぎます。
お正月が終わった頃から流行するノロウイルスのようなウイルスは食材の中では増えませんが、ごくわずかな量でも食中毒を引き起こします。食中毒の原因となるウイルスを食品につけないことを徹底するために、ウイルスをキッチンへ「持ち込まない」、食べ物や調理器具に「ひろげない」ことに注意しましょう。
【3】やっつける
食中毒菌は、加熱すれば死滅するものがほとんどです。食材の中心部まで、75℃以上で1分以上加熱します。また、調理器具も洗剤でよく洗った後に加熱して殺菌しましょう。
キャンプでも人気メニュー、これから食べたくなる煮込み料理に注意!!
キャンプでも大人気で、これから涼しく寒くなるにつれて食べたくなるメニューといえば、カレーやシチューなどの煮込み料理です。
煮込み料理はつくりおきしやすいメニューです。「一晩おいても、火を通せば大丈夫」と油断しがちですが、しっかりとした食中毒予防対策が必要です。
カレーやシチューは大きな鍋で一度に大量につくることが多く、鍋底は空気が少ない状態になります。そんなときに気をつけたいのが、空気を嫌う性質のウェルシュ菌です。
ウェルシュ菌には他の細菌とちがって加熱調理しても死滅しないことがあります。ウェルシュ菌は硬い殻を持った「芽胞(がほう)」をつくると、高温でも生き残ります。芽胞のままなら増殖せず、人体にも影響はありません。
カレーやシチューを鍋に入れたままにして温度が下がると、芽胞が「発芽」のように目を覚まして、ウェルシュ菌が増殖し始めることがあります。カレーやシチューの鍋底は空気が少ないから、目覚めたウェルシュ菌にとって増殖しやすいことが、「一晩寝かした」カレーが食中毒を引き起こす原因です。おいしくて安全なカレーやシチューをつくるには、どんな点に注意したらいいのでしょうか。まず、カレーやシチューをつくるときは、よくかき混ぜて鍋底まで空気を送りながら加熱して、ウェルシュ菌が生き残らないようにします。これは、三原則でいう「やっつける」ですね。一度につくる量が増えれば増えるほど、食中毒のリスクも大きくなるので注意しましょう。
つくったカレーを一度で食べきることが食中毒予防にはベストですが、忙しい毎日にはつくりおきのカレーはありがたい存在です。ただし、カレーを鍋に入れたまま室内に放置すると、芽胞からウェルシュ菌が増えてしまうかもしれません。
三原則の「ふやさない」を実行するために、つくったカレーは調理した鍋に入れたままにせずに、できるだけ小分けにして冷蔵庫に入れましょう。翌日に食べるのでなければ冷凍保存をおすすめします。食べる前に再加熱するときも、かき混ぜて空気を送り込みながら中心部までしっかり温めます。
キャンプでも常温のまま放置することは避けて、鍋に水をつけるなど短時間で冷ましたらクーラーボックスなどに入れましょう。
秋になっても油断せずに、食中毒予防の対策を続けよう
だんだん涼しく寒くなっても、食中毒には秋ならではの注意点があります。カレーやシチューのような、これから恋しくなる煮込みメニューにも、食中毒対策は必要です。
気持ちは秋になっても、暑くてジメジメした夏と同じように油断せず食中毒予防の対策を続けましょう。
大沢有貴子
家庭学習サポート専門家、ライター