2019.08.15
妊娠・出産がきっかけで起こる「セックスレス」を乗り越える!
妊娠や出産でめっきり夫婦の営みがなくなってしまった…第2子を考えているのにセックスレス。どうしたらいいの…「第1子セックスレス」ということばが巷でよく聞かれます。第1子の妊娠、出産が契機でセックスをしなくなってしまう夫婦が増えているのです。日本家族計画協会の調査によると16歳~49歳の夫婦のなかでセックスレスの割合は「47.4%」。その理由として「出産を機になんとなく…」というのが「約3割」あげられていました。
妊娠・出産の山をいかに乗り越えるかが、第2子への夢を閉ざさず、夫婦の愛の営みを続けていくためにとっても大切になりそうですね。
妊娠や出産をきっかけに起こるセックスレスにどう立ち向かっていくのか、一緒に考えていきましょう。
妊娠する側としない側の違いは絶対的!
この時期に大切なことは、お互いがお互いの状況を知り、配慮しながら、2人でバランスのよい性生活を模索していくことです。
妊娠によってからだに大きな変化があるのは女性だけです。ただでさえ違うことばかりの男女ですが、さらに妊娠する側・しない側ができることでその違いは著しくなります。男性側はもちろん、女性が妊娠によってさまざまな身体的変化、精神的不安を感じているのを知ろうとしなくてなりません。ただもうひとつ大切なことは、女性側が「男性側は妊娠しないという現実に配慮すること」です。
男性は妊娠による直接的な影響を受けない立場です。そのため、普段とは大きく変化しない日々を過ごすことになります。もちろん性欲はありますし、妻と触れ合いたい感覚もあります。
女性は妊娠のことで頭がいっぱいで性欲が湧かず、男性のそのような立場を考える余裕がない場合があります。(逆に性欲が強くなってくることもしばしばあります。)お互いがお互いを理解しようとコミュニケーションを積極的にとることは、男女の差が大きいこの時期だからこそとっても重要です。
溝を埋めながら、性生活を続けていく方法を模索していく必要があります。
まずセックスは、挿入するだけがすべてではないことをお互い認識していなくてはなりません。もしお互いの性欲がすれ違っているときも、挿入にこだわらず抱き合ったり、手を握り合ったり、お互いが求めている触れ合いの度合いをすり合わせ、変化を楽しんでいきましょう。
妊娠で生じる女性のからだの変化
妊娠するとセックスできないんじゃないか、となんとなく思われている方がいます。その答えは、「NO」セックスは続けることができます。
ただし前置胎盤などの場合は妊娠中のセックスは禁忌!となるため、基本的に妊娠中にセックスを続けてもいいかは一度医師に確認するのがいいと思います。さて妊娠によって生じるからだの変化が性生活に影響を与える場合がありますので、お伝えしたいと思います。
妊娠中は妊娠を維持するためにプロゲステロンという黄体ホルモンが増加します。そのためエストロゲンという卵胞ホルモンのバランスが相対的に低下していきます。エストロゲンは通常、性的に興奮したときに、膣の細胞を充血させ濡れた状態をつくる働きをすると同時に単にしぼんだ空間であった膣に長さと幅を持たせるような働きがあります。このような膣の状態になることで、挿入する準備をするのです。
エストロゲンの分泌が少なくなると膣が伸びにくくなったり、興奮しても膣の細胞がうまく働かず濡れないなと感じたりするので、痛みが生じることがあるのです。
女性は痛みを感じると性欲がとたんに冷めてしまいます。妊娠によるエストロゲンの低下でこのようなからだの変化があることを知らずにいると、急にセックスができないからだになってしまった!と勘違いしてしまうことになります。
女性は自分の変化がどうして起きるのかを知って、相手に伝えることが重要です。なんだか入れにくいな、痛みが強いなと思ったら我慢は禁物。潤滑剤を使用したり、前戯を長くしてもらったり、工夫することができます。
出産後に大きく変化する女性のからだのことを知る
出産後挿入しようとすると痛くて入れられなかった、という声をよく聞きます。これはよくあること。出産や母乳育児がホルモンの分泌に影響を与え、それが性生活にも影響してくるのです
なんだ、これは自分のからだのあたりまえの変化なんだ!と知っているのと知っていないのとでは、まったく変わってきます。知らなかったことで、自信がなくなり、お互いがなんとなく避けはじめ、セックスレスに至ることは往々にしてあるのです。
ぜひ女性は自分の体の変化に知識持ち、男性にも伝えてあげてください。
・膣が乾く、挿入するとき痛くなる。
海外の研究によると授乳中に「膣の潤滑が減った」と感じている方が半数以上いることが分かりました。これは母乳育児がエストロゲンの分泌に大きく影響を与えているからです。授乳に関連する代表的なホルモンは“プロラクチン”と“オキシトシン”です。簡単にいうとプロラクチンは母乳をつくるホルモン、オキシトシンは射乳するホルモンです。
母乳栄養の場合も混合栄養(人工乳と母乳の混合)の場合もとにかく授乳をしていることでプロラクチンは分泌されます。(詳細の作用機序はまだ解明されていませんが)プロラクチンは視床下部という脳の大切な部分から出る性腺刺激ホルモン放出ホルモンを抑制し、その結果エストロゲンの分泌を抑えてしまうのです。
エストロゲンは上記でお伝えした通り、膣が伸び、濡れるのに大切な作用を果たします。授乳と痛みへの影響は産後3か月程度と研究結果でいわれていますが、授乳と痛みに関連があることをぜひ覚えておいてください。
・ 性欲がさがる
性腺刺激ホルモン放出ホルモンが低下すると、アンドロゲンという男性ホルモンの分泌も低下します。女性から出ているこの男性ホルモンは性欲をつかさどってくれている大切なホルモンです。産後の疲労などさまざまな要因が重なり、性欲がさがってしまうことがあります。
無理に相手の要望に応えることはありません。今はそういう時期なのと挿入以外の触れ合いを提案してみましょう。
・乳房・乳頭に敏感になる
授乳中の女性はセックスによる乳房の刺激や快感によって射乳が促され母乳が漏れたりすることがあります。授乳中のおっぱいはとっても敏感で、前戯でべたべた触られると逆に不快と思うこともあるくらいなのです。
もし触られることでいやな感じがしたら、遠慮せず伝えましょう。優しく手で包むだけにしたり、口はつけないようにしてもらったり、工夫できます。
・そもそも触られるのが嫌になることがある
母乳育児をしていると赤ちゃんと常に身体的な接触があるため、もうこれ以上体に触れられたくない!!と触れ合い過多現象が起きてくることで、うろたえる女性もいます。こんなことが起きるなんてとびっくりされる方がおられますが、これは一般的に起こること、と知り、相手にも優しくこうしてほしいと伝えることが大切です。
自分の体の変化を知って、相手にもつたえていくことが大切!
ここまで妊娠や出産・授乳がきっかけで起きるセックスレスについて考えてきました。知らなかった内容もたくさんあったのではないでしょうか。
妊娠・出産は女性にとって大きなからだの変化がある大切なイベントです。性生活への影響ももちろんあります。女性が自分自身の変化を知り、相手に思いを伝えていくことは、妊娠・出産によるセックスレスを乗り越えるためにとっても大切になることを、少しでもお伝えたら嬉しいです。
(参考文献)
「性機能不全のカウンセリングから治療までセックスセラピー入門」 日本性科学会編著 2018 金原出版
宮本さよ
ライター/看護師