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2021.12.13

バレエは小学生から始めたら遅いの?バレエを始めるべき時期を検証



幼児からバレエを始めると、衣装やレオタードを着て踊る・立つ姿には幼児期特有のかわいらしさ・楽しさがあり、サポートする保護者にも大きな喜びはあります。一方で、保護者のお手伝いも大変で金銭面の負担も大きいです(詳しくは「幼児からバレエを始めるために必要なアイテム・お金・保護者のサポートを知ろう!!」を参照)。

多くのバレエ講師が幼児期からバレエを始めることを勧めています。バレエ教室には幼児クラスが設置されていることも多いです。バレエは幼児から始めるべきで、小学生からでは遅いのでしょうか。

この記事では、運動能力の「ゴールデンエイジ」とモンテッソーリ教育の「運動の敏感期」を通して、幼児期に体を動かすことの大切さと、筆者の子どもの経験を通して考えるバレエの始めるべき時期をお伝えします。

5歳までに神経系の8割が完成・9歳~12歳頃が運動習得の黄金期


運動能力のゴールデンエイジとは、コーチの技を見るだけですぐできるように短時間でさまざまな動作を身につける「即座の習得」が可能な、9~12歳頃のことです。この期間は一生に一度だけある巧みな動作の習得に最も有利な黄金期といわれています。

ゴールデンエイジの前段階であるプレ・ゴールデンエイジは、4歳~8歳頃です。この時期には、神経系が大きく発達し、体内に様々な神経回路が張り巡らされていきます。神経系は12歳頃までにほぼ完成して、プレ・ゴールデンエイジにあたる5歳頃までに約80%まで発達するといわれています。ゴールデンエイジの「即座の習得」のためにも、神経回路が形成が重要です。

この5歳までに神経系の約80%が発達することが、幼児期に体を動かすことの重要性を説明する際によく紹介されます。幼児期からバレエを始めるべきと言われる理由の一つでもあります。

プレ・ゴールデンエイジには、さまざまな動作を経験することが大切です。この時期は骨も筋肉も関節もまだ発展途上のため、一つのスポーツに専念するよりいろいろなスポーツや動きを楽しむほうがよいとされています。プレ・ゴールデンエイジはまだ幼い時期のために長時間にわたって集中を維持することはむずかしいですが、興味のあることや好きなことには高い集中力を発揮するといわれています。

※ゴールデンエイジとプレ・ゴールデンエイジの年齢は、諸説あります。

モンテッソーリ教育の「運動の敏感期」


プロ棋士の藤井聡太さん、グローバル企業の多くの創始者が受けた教育としても注目を集めるモンテッソーリ教育でも、乳幼児期に体を動かすことを重要視しています。

モンテッソーリ教育は、イタリア人の女性で初めて医者になったマリア・モンテッソーリ博士が確立した教育法です。モンテッソーリ教育には幼稚園・保育園から高校までのプログラムがあります。日本では主に幼児教育として、専門教育を受けた講師と色鮮やかな教具がそろった専門施設で行われています。雑誌やウェブサイトでは家庭での子育てにモンテッソーリ教育を取り入れるヒントがよく紹介されているので、モンテッソーリ教育をご存知の方も多いのではないでしょうか。

モンテッソーリ教育では、乳幼児期の限られた期間にだけ起こる、特定の事柄に極めて強いこだわりを持って活動する時期を敏感期といいます。人間の敏感期には感覚、言語、数、秩序などとともに、「運動の敏感期」があります。運動の敏感期は、特定のスポーツが上達するためのものではなく、子どもが自分の体を思いどおりに自由に動かしたいと願って集中的に練習する時期を指します。

モンテッソーリ教育では、乳幼児期を0~3歳と3歳~6歳に分けて考えます。0~3歳は、生活するための動作の獲得を行います。その対象は、ハイハイ、モノをつかむ、座る、立つ、歩く、運ぶなど日常生活の全ての動作です。3歳~6歳では、それまでに獲得した動作をより洗練させ、組み合わせて実際の生活で役立てようとすると考えます。

階段を上り下りを繰り返しやりたがる子どもを、危ないからと抱っこして遠くへ連れて行った経験はありませんか。「飽きないのかな」と大人が不思議に思うほどに、立って歩く前の子どもが手をついて階段の上り下りを繰り返し行うことはよくあります。この階段の上り下りは、大人を困らせようといたずらをしているのではありません。「階段を上り下りする」という課題を子どもが自ら見つけて挑戦しているのです。

階段の上り下りだけでなく、「ぽっとん落とし」と呼ばれるような穴からものを落として遊ぶおもちゃに子どもが夢中になることもあります。落とす動作を通して、指先の動きを習得しようとしているのです。
子どもが道路の排水溝に枯葉やどんぐりを落とし続ける経験はありませんか。子どもは排水溝を詰まらせようといたずらをしているわけではなく、ぽっとん落としと同じく指先を思い通りに動かすために挑戦しているのです。この他にもよくあることには、バランス感覚を身につけようとして子どもは歩道の縁や道路の線の上を歩きたがることがあります。

動きを獲得するために全力で挑み手間を惜しまないのも、運動の敏感期の特徴の一つです。例えば、汁の残ったたくさんのお皿を片付ける際に、大人なら効率的に楽に片づけることを第一に考えます。運動の敏感期である子どもは、バランスを取って平衡に運ぶことに集中して作業効率は気にしません。
運動の敏感期は、子ども自身ができるようになりたいと思う動作を繰り返し全力で練習する時期です。運動の敏感期はバレエやスポーツのスキルの習得とは異なりますが、幼児期に体を動かすことの大切さには違いはありません。

バレエは幼児期から始めなくてはいけないの?


幼児からバレエを始めると、柔軟性を高めやすい、姿勢が良くなるなどメリットも多いです。バレエは幼児から始めるべきでしょうか。

プロのバレエダンサー全員が幼児期からバレエを始めたとは限りません。吉田都さんは9歳、草刈民代さんは8歳から、熊谷哲也さんは10歳からバレエを習い始めたそうです。スポーツ分野でも幼少時から競技を始めた選手が多い一方で、10歳前後から始めてオリンピックのメダリストになった方もいます。

わが子が幼児からバレエを始めてよかったと思っている私ですが、幼児クラスのレッスン内容に驚いた経験があります。実は、「バレエ教室よりも、幼稚園のおゆうぎ会のほうがレベルが高いかも」と感じたことは一度や二度ではありません。おゆうぎの練習は毎日できるけど、バレエ教室の幼児クラスは週1回の開催だから、そのまま比べては不公平かなとも考えています。
幼児なので、1時間弱のレッスン中ずっと集中することもむずかしいようでした。機嫌が悪くて突っ立ったままやメソメソしているだけでレッスン時間が終了するような子はよくいました。発表会でも、楽しそうに踊る子もいれば、まるで立ってるだけの子もいました。

幼児期からスポーツをしていた子に、小学校入学後から始めた子がすぐに追いつくことは、めずらしくありません。スイミングスクールの進級テストで、小学生から入会した子が幼児期からスイミングスクールに通っていた子にあっという間に追いついたケースはよくあります。

私もバレエ教室で実際に、そのようなケースを見たことがあります。小学校入学後に退会して、本人がバレエをやりたいとレッスンを再開したら、遅れをすぐに取り戻して同年齢のクラスで楽しく踊っていました。このように小学生から始めてすぐに追いつく理由には、コーチの指導を聞き取って理解する力や、理解したとおりに自分の身体を動かすボディコントロール力が、幼児より小学生が高いことが考えられます。精神的に成熟して、「早く進級したい」とやる気になりやすいこともあるでしょう。

一方で、幼児から水泳を始めると、体力がつく、風邪をひきにくくなるなど免疫力が上がる、呼吸循環機能が向上するなどさまざまな利点があります。理解力やボディコントロール力、やる気にも個人差はありますので、進級・上達のスピードはそれぞれ異なります。
幼児期からバレエに親しむことには、メリットが多いでしょう。しかし、子ども本人にバレエへの意欲がないなら、無理に始める必要はないとも私は考えます。

親子で無理なく始められるようになってからでも遅くない


幼児である子ども自身がバレエをやりたくて、サポートする家族の理解と時間とお金があれば、「まだ早いかしら」と躊躇することなく、すぐバレエを始めてよいでしょう。

しかし、小学生になってから本人がバレエへの意欲を持ち、家族がサポートする余裕ができてからバレエを始めても遅くありません。小学生になれば、送迎や発表会のお手伝いの負担も幼児期より軽くなります。幼児のときはバレエを続けられなくても、やる気になったら小学生から再開するのもいいでしょう。

幼稚園・保育園での活動や公園での遊びなど、幼児の普段の生活には運動の楽しさを実感する多くの機会があります。また、モンテッソーリ教育の運動の敏感期のとおり、幼児には日常生活や遊び、家庭のお手伝いでさまざまな動きを獲得することができます。

幼児期に体を動かすことは大切ですが、幼児からバレエを始めないと間に合わないことはない、小学生からバレエを始めても大丈夫だと私は考えます。

バレエには柔軟性が必要なので、体が硬くなる前ならスムーズにバレエを始められるでしょう。また、バレエは体のラインが出るレオタードを着用するため、思春期の前から着慣れておいたほうがいいと思います。いずれも、本人のやる気次第で克服可能です。

やりたいときが始めどき!!親子で無理なく楽しめるときにバレエを始めよう


体が柔らかくなりやすい、姿勢が良くなるなど、幼児からバレエを始めるメリットが多くあります。わが子がバレエに取り組む姿はいつでもほほえましいものですが、幼児期のバレエには格別のかわいさがあると私は実感しました。わが子の幼児期のレオタードを今はぬいぐるみに着せて、時折あの頃を思い出しています。

ゴールデンエイジ、プレ・ゴールデンエイジのような運動に適した時期があり、幼児期に体を動かすことが楽しいと感じることは大切です。しかし、バレエを始めるなら、本人とサポートする家庭が無理なく楽しめる時期が最良でしょう。

バレエ、ダンス、スポーツを通して体を動かすことは、健康維持に必要なだけではありません。達成感や爽快感を味わえるなど精神面に影響が大きく、毎日を楽しく過ごしたり人生を充実させたりするためにも大切です。子どもが体を動かすことを楽しめるように、無理なく楽しくサポートしてあげてください。

大沢有貴子

大沢有貴子

家庭学習サポート専門家、ライター

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