2018.05.03
不妊症という言葉が最近急に気になり始めた・・そもそも「不妊」ってどんな状態のことをいうの?
結婚して、好きな人との穏やかな暮らしが始まって、仕事も順調で、でもなんとなく落ち着かない……互いの両親も、周囲の人々も、「そろそろ赤ちゃんは?」と訊きたそうなそぶり。
そんなとき、ふと「不妊症」という言葉が気になったことはありませんか。日々忙しく生活しているとあっという間に時は過ぎてしまい、同じぶんだけ年齢も重なっていきます。
最近は妊娠・出産に対する関心も高まっており、多くのカップルが事前に「不妊の可能性」や「よりよい環境での妊娠」についてインターネットを中心に調べています。たとえば「葉酸を事前にたくさん摂っておいた方がいいらしい」「男性なら亜鉛不足は良くないらしい」など、さまざまな情報をチェックしています。
妊娠を意識する年齢の女性の多くが、「不妊」について気にしていることがわかりますね。
ではそもそも不妊って、どんな状態のことなのでしょうか。
不妊症に悩む人は3組に1組という日本の現状
不妊は、日本産科婦人科学会によって「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないもの」と定義されています。
一定期間の実質的な時間は、数年前まで2年とされていました。でも現在では1年になっています。つまり、赤ちゃんが欲しいと夫婦で願ってから1年経っても授からない状態、それが「不妊」です。
日本のカップルのうち、3組に1組は「自分たちは不妊症かもしれない」と悩んだことがあるというデータがあります。そしてその半数、6組に1組が、実際に不妊治療を受けているのです。
先ほど「1年間赤ちゃんができない状態が不妊」とご紹介しました。でも、もっと早く対策をスタートするカップルもいます。
女性に子宮内膜症や生理不順、卵巣嚢腫、子宮筋腫など女性器系の病気がある場合や、男性に大人になってからの高熱の経験など、精巣の機能に不安がある場合は「もしかしたら私たちは赤ちゃんができにくい体質かもしれない」と考え、産婦人科を訪ねることも少なくないようです。
不妊は女性だけの問題ではない!男性不妊にも注目を
不妊は女性の悩みというイメージがあるかもしれませんね。実際は、女性だけが原因となっているわけではないのです。
WHOの調べでは男性のみに不妊の原因があるケースだけでも24%もあるのです。また男女ともに原因を抱えているカップルも同じく24%。合わせれば、男性に不妊の原因があるケースは48%にも及びます。そう、不妊の半分は男性側にも原因があることがわかっています。
不妊で悩んでいるカップルのうち、実に5割近くが男性側に不妊原因があるにもかかわらず、男性が不妊対策を真剣に考え始めるのは、パートナーの女性に促されてからということが多いのではないでしょうか。
一般的に、不妊の検査や不妊治療は産婦人科で行っているというイメージが強いですよね。そのため、男性はなんとなく「自分がメインになる問題ではない」と考えがちになってしまいますし、実際にひとりで受診するにはかなりハードルが高いと言えます。
でも、男性不妊の検査は泌尿器科でも受けることができます。また不妊専門の外来も最近は多くなってきました。さらに男性不妊専門のクリニックも、東京など都市部には登場しはじめています。
そうはいっても、どうしても足が病院に向かない……という男性も少なくないのが現状でしょう。
現在ではWHOの発表にも顕著に表れているように、不妊の半分は男性側にも原因があることがわかっています。
もし女性が不妊に不安があって、妊活や不妊治療を考え始めたのであれば、かならずパートナーの男性と情報を共有し、たくさん話し合いましょう。初めて病院を受診することになったら、夫婦そろって検査を受けることをおすすめします。
昔、日本では不妊はすべて女性、つまり「嫁」に原因があると考えられていた時代がありました。しかし、古い考え方から抜けられない高齢の方などは、まだ不妊は女性に責任があると誤解していることもあります。
互いの両親や周囲の年配の方に「奥さん不妊症なの?」などと遠慮のない言葉を浴びせられたときは、「今は夫婦で乗り越える問題になっているんですよ。女性の病気というわけではないんです」など、角が立たない言い回しでやりすごし、つらい気持ちをきちんとパートナーに理解してもらうようにしましょう。
不妊症は病気ではない…「不妊」にさまざまな病気・原因がひそんでいる
ではもう一度、改めて「不妊」という言葉を眺めてみましょう。「不妊」と「不妊症」って何が違うのでしょうか。先ほどからご紹介している日本産科婦人科学会では、「不妊症」ではなく「不妊」と定義しています。
実は「不妊症」という、病気が存在しているわけではありません。
「不妊症」はひとつの病気として考えられているわけではなく、「赤ちゃんを望んでいるのにできない状態」を指しています。
さまざまな病気や体質・要因が重なって、「不妊症」という、自然な妊娠が難しい状態が起きているのです。
医療の世界では自然な妊娠が難しい状態が続いている期間のことを「不妊期間」、もしくは「不妊」と呼んでいるのです。
わかりやすく分類すると、こうなります。
・不妊症…妊娠が難しいさまざまな状態のこと
・不妊…妊娠が難しい状態が続いている期間のこと
では、具体的にどんな病気が不妊の原因になるのかを見ていきましょう。
女性側で不妊となるのはこういった要因です。
・卵巣機能不全
・子宮内膜症
・卵管のつまり
・子宮筋腫
・子宮の奇形
・女性ホルモン等ホルモン系の異常
・卵子の老化
男性側で不妊となるのはこういった要因です
・精巣炎
・前立腺炎
・精索静脈瘤
・精路閉鎖
・ホルモンの異常
・無精子症
・乏精子症
・精子無力症
・勃起障害(ED)
・精子の老化
その他に、原因がわからないケースも存在します。
平均初婚年齢の上昇も不妊の原因の1つ
前項でご紹介した不妊の原因の中に、男女ともに「老化」が入っていることに気付いたでしょうか。
男女ともに、高齢になってから妊娠を希望することも不妊の原因のひとつとなっており、その割合は少ないものではありません。年齢を理由に不妊治療を断念するカップルもたくさん存在し、高齢での妊娠を選択する人の増加、不妊や少子化などに大きな影響を与えているとされています。
現在、日本産科婦人科学会では、35歳以上の初産について「高齢出産」と呼んでいます。ひと昔前までは30歳以上の初産が高齢出産と呼ばれていましたが、現在は結婚年齢が30歳を超えています。そのため、35歳からの出産が「高齢出産」と呼ばれるようになりました。
国際規格では35歳以上の初産に加え、経産婦さんの40歳以上の出産を高齢出産と呼んでいます。
なぜ「高齢出産」と呼んで一般的な出産と差別化しているかというと、それだけリスクが高くなるからです。妊娠自体しにくくなってくるとともに、男女とも体力や精力などが衰え始めます。ともに健康であれば出産することは可能ですが、不妊に悩むカップルの数も増えてくるのです。
ではなぜ高齢での妊娠に踏み切ろうとするカップルが多いのでしょう。
近年、平均初婚年齢が上昇していることは、ニュースなどで見たことがあるのではないでしょうか。2017年の男性の平均初婚年齢は31歳。女性は30歳というデータが出ています。
約40年前の1975年には男性が25歳、女性は24歳でした。しかし2000年には男性が28歳、女性は27歳となり、2006年には男性が30歳を超えます。そしてついに女性も30歳を超え、男女ともに「平均的に30歳前後で結婚する」時代が到来しました。
平均初婚年齢が高くなっている理由は、いくつか考えられます。
・女性の社会進出が盛んになり、社会的に自立している人が増えた
・雇用形態の多様化で収入に高低差ができ、結婚する経済的余裕のない人が増えた
・価値観が多様化し、結婚する人生を選ばない人が増えた
・医学の進歩とともに高齢出産が多くなり、そのため結婚に焦りを感じなくなった
それぞれ「あー、わかるわー」と思われるのではないでしょうか。社会的に自立し仕事に打ち込んでいる女性は、誰かに扶養してもらう必要がありません。また自由な時間が多いほど、仕事にかける時間も増えるので、結果的に出世に結びつきやすくなります。
その一方で企業間、正社員と派遣社員など、収入には大きな高低差がつき、家族を扶養する余裕はもちろん、引越しや結婚式などの費用が用意できない人々も増えています。男女共働きで結婚後も暮らしていければよいかもしれませんが、時代がどんなに進んでも出産をするのは女性です。いずれは女性が産休や育休をとって、世帯の収入がガクっと減ってしまう時期がやってきます。それを考えると不安で結婚できないという人が少なくない時代となっています。
また価値観も多様化しています。
「パートナーはいるけれど結婚はしない」
「ひとりで仕事に打ち込む」
「子どもは産むけれど結婚はしない」
「同性同士のパートナーなので結婚できない」
など、さまざまな人生模様が当たり前になってきています。個性的な人生を送ることは珍しいことではなく、自分の考えを貫いて生きることは当然の権利と認められるようになってきました。昔のように「一般的な」という言葉でくくれる人生を送る人が、少なくなっていると言えるかもしれませんね。
不妊症は原因がはっきりしていないこともあるため検査が重要
不妊と診断されたカップルのうち、11%、つまり10組に1組のカップルは「原因がわからない」というケースです。男性にも女性にも、不妊を引き起こす明らかな原因がないのに、なぜかなかなか妊娠しないというケースです。
そのほかにも、不妊を引き起こしている病気はわかっても、その原因がわからないということもあります。
原因がわからないと、治療ができるのか不安になりますよね。でも、現在ではさまざまな治療方法があり、さまざまな妊娠方法が研究され続けています。
産婦人科では原因がわかるまでさまざまな検査を行います。基本的な検査は「6大検査」と呼ばれています。不妊治療の最初の一歩です。
・基礎体温
・頸管粘液検査
・フーナーテスト
・子宮卵管造影検査
・経腟超音波検査
この5つが女性側の検査です。
・精液検査
男性側は、精液を採取して精子の数や運動率・奇形率やどのくらいの時間ちゃんと動くか検査します。
女性の場合は月経周期に合わせて検査を受けなければなりません。排卵前に受ける検査・排卵期に受ける検査・生理中だと受けられない検査などいろいろあるので、だいたい1ヶ月ほどはかかります。仕事をしていてなかなか受診できないという女性の場合は、検査だけで何ヶ月もかかってしまうことがあります。不妊治療の負担は女性の方が重いとよく言われますが、検査ひとつとってもこんなに差が出てしまうのです。
不妊治療ってどんなことをするの?まずは性機能異常の治療から
こうした検査を受けて異常が見つかれば、まずその治療からスタートします。たとえば女性に子宮筋腫が見つかれば不妊の原因になるため、筋腫の治療を行ってから妊活をスタートします。
何も異常が見つからなければ、まずは排卵のタイミングで性交を行う「タイミング法」のような、薬などの力を借りない方法からスタートしていきます。
それでも結果が出なければ、さらに抗精子抗体検査やホルモン検査などを行い、なぜ妊娠しにくいのかを探っていく必要が出てきます。その都度、異常がわかれば治療や対策が必要となります。
男性側も、精索静脈瘤という精巣の血液が逆流してこぶができてしまう病気や、高熱・耳下腺炎などが原因になる造精機能障害などの異常が見つかることがあります。
また精子の通り道がふさがっているためまったく精子がいない無精子症など、さまざまな症状の存在がわかってきます。
検査をすることで「排卵障害」や「無精子症」「乏精子症」などさまざまな「不妊の原因」が明らかになってきます。しかし「なぜか排卵が正常にいかない」、「活発な精子が少ない乏精子症だが、原因はわからない」など、それぞれの不調の原因がわからないことは少なくありません。そのため、今の医療の限界まで検査をしても、結局自然妊娠は難しいという結論が出ることもあります。
そういった場合は、人工授精に切り替えていきます。
不妊治療といえばすぐに人工授精というイメージがある方も多いかもしれませんが、実はそこに至るまでにさまざまな検査や治療が行われているのです。
さらに人工授精にもステップがあり、一度失敗に終わったからといって、あきらめる必要はありません。
不妊は夫婦で取り組んで!あせらないためにも早めに検査を
実は、卵子は30歳、精子は35歳くらいから、少しずつ受精機能が衰えていくと考えられているのです。
それとともに自然妊娠できる可能性は低くなっていき、男女ともに40代に入るとかなり難しくなります。
そのため、不妊治療はできるだけ早くスタートすることが大切なのです。また、妊娠しやすい体をつくるための妊活は、もっと早くから意識しておくと良いですね。
今は赤ちゃんが欲しいと思っていなくても、来年は違うかもしれません。3年後にはどうしても欲しくなるかもしれません。
人生は、何が起きるかわかりません。
いつ赤ちゃんを迎えることになっても、いつ赤ちゃんが欲しくなっても大丈夫なように、まずは早めの不妊検査を受けてみることをおすすめします。
もし子宮頸がんのような病気が隠れていれば、早期発見につながります。また男性はめったに行くことのない「産婦人科」がどんな場所なのか、知っておくよいチャンスになります。本格的な不妊治療がスタートすれば、検査や治療項目の多さから、女性だけが産婦人科へ通う日も必然的に多くなります。男性に「今彼女は病院で頑張っているんだな」と思ってもらうだけでも、気遣いのメールを1本送ってくれるだけでも、女性にとっては嬉しいことですよね。
不妊の大きな原因となるのはストレスとも言われています。妊娠への焦りが不妊につながってしまうこともあり、不妊治療をお休みしたとたんに赤ちゃんができた、という話もよく聞きます。不妊治療は夫婦二人三脚で、互いの気持ちを思いやりながら、コウノトリのお知らせが来る日をのんびり待つことが乗り切るコツなのかもしれません。
【不妊(不妊症)について】
・どういう状態を不妊症というの?(2)
・どういう状態を不妊症というの?(3)
・どういう状態を不妊症というの?(4)
・不妊の原因って一体なに? (1)
・妊活ブログ
・不妊治療費用はいくらかかる?
・不妊検査って何をするの?(1)
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・2人目不妊について(1)
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・妊活の第一歩は、定期的な現状把握
・卵巣年齢を測定するAMH検査
河野まちこ
ライター