2020.11.27
<医師に聞いた>ママになったら疲れがまったく取れない!原因と対処法は?漢方に注目!
育児に家事、そして仕事…。時間に追われながら毎日を目まぐるしく過ごすママたちからは、「寝ているのに疲れが取れない」「1日中だるい」といったお悩みがたくさん挙がっています。それと同時に「漢方薬を飲み始めて体がラクになった」など生活に漢方を取り入れているという声も、最近では多く聞くようになりました。漢方ってどんなもの?忙しいママに合う漢方はある?疲れが取れない原因や対処法、漢方との付き合い方について、たまきクリニック院長の玉木優子先生に話を伺いました。
ママの疲れは肉体疲労、頭脳疲労、感情疲労のトリプル疲労が大きな原因!
西洋医学にも漢方医学にも精通している玉木先生によると、近年ママは圧倒的な過重労働の状態にあるそう。
「特にワーママは、子育てと仕事を両立しながら家事までこなしています。家事は労働時間にカウントされないことも多いですが、かなりの重労働ですよね。子育てと家事は年中無休なので、疲れをとる暇がありません」
さらに見落としがちなのが、心の疲れ。
「肉体的な労働以外に、考える頭脳労働、不安や心配等でエネルギーを消費する感情労働も、ママの大きな負担になっているといえます。体が疲れていると頭の回転も鈍くなるし、やることを間違えたり無駄な動作が出てしまったり。感情労働は子育てに対する不安、周囲との比較、思い通りにならないストレス、イライラで肉体労働以上に疲れてしまうことも少なくありません。しかも、寝ている時以外はずっと続くというのも厄介です」
保活、コロナ禍、SNS、リモートワーク、子どもの成長、ママ友との付き合いなど、ママが抱えるストレスや心配事はさまざま。特にワーママには仕事をもっと頑張りたいけどできなかったり、子どもにさみしい思いをさせたりしているかもしれないと自己嫌悪に陥り、仕事にも育児にも100%専念できないというストレスまでありそうです。
「真面目な人ほど自分を追い詰めてうつに近い状態になったり、罪悪感を感じてしまったりしていますね。家事は夫とシェアしたり、外部サポートを利用したりすることもできますが、育児はなかなかそうもいきません。そういったつらい気持ちを整えて、いつもの元気な自分に戻すためのひとつの方法として漢方はとてもおすすめです」
「快食・快便・快眠できていないな」と感じたら、漢方の出番かも
とはいえ「疲れが取れない、ストレスを感じているくらいで病院に行くのはちょっと…」と躊躇するママも多いはず。でも、もし体がいつもと違うと感じたら、それはもう自力でなんとか回復できるレベルを超えているのかもしれません。
「心身の健康のバロメーターになるのは、快食・快便・快眠。やはりこの3つが基本です。だから食事が摂れなくなったり、逆に過食が止まらなかったり、下痢や便秘が続く状況は体が発している危険信号です。快眠も大事。強いストレスや疲れを感じていると自律神経が乱れて寝つきが悪くなる、深夜に何度も目覚めてその後眠れない、熟睡できないということもあります。人間の体は就寝中に疲労回復や機能修復をしているので、しっかり眠れないと余計に疲れがたまってくるのです」
子どもを寝かしつけてそのまま一緒に寝てしまい、真夜中に起きてから寝付けずそのまま朝になってしまうという経験をされている方もいるのではないでしょうか?
「睡眠時間をしっかり確保してすっきり目覚めているなら、それほど心配しなくてもいいかもしれません。むしろ“よく寝られていないかも”と思い込んで不眠に囚われてしまうほうが問題。布団の中で横になり、瞑想するだけでも心は休まるものです」
心の不調は、西洋医学の観点で考えると「体に異常(病気)はない」と診断されてしまうことも。漢方ならその前のいわゆる“未病”の状態で体を助けることができるのが大きなメリットです。最近では、心療内科等で漢方薬を処方するクリニックも増えているそう。
漢方薬は保険適用だから続けやすい! 病院の診察で自分に合うものを処方してもらって
漢方薬はドラッグストアや通販などで気軽に買えるイメージがありますが、医療機関を受診し、処方してもらった場合は健康保険が適用されるケースがほとんど。(※)
※医療機関によっては、健康保険が適用されない場合もあるので、事前にご確認ください。
「148種類もの漢方薬が保険適用になっているので、幅広い診療に処方することができます。成分も市販のものとそれほど変わらず、自己負担をかなり減らすことができます。症状や体質に合わせて適切な漢方薬を服用することが最も大切なので、医師の診察は重要です。私のクリニックでは問診、腹部を触れる腹診、舌診(舌を観察)、脈診などで心身の状態をしっかり確認してから漢方薬を処方しています」
処方される漢方薬は症状の程度や体質により異なりますが、疲れやすい方のストレスによる心身の不調には「加味逍遙散(かみしょうようさん)」、足腰の冷え症には「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、体力低下の改善には「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」、精神的な不安や緊張緩和には「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)や「加味帰脾湯(かみきひとう)」、心身疲労で眠れない時には「酸棗仁湯(さんそうにんとう)、イライラや興奮で眠れない時には「抑肝散(よくかんさん)」、もともと虚弱体質で緊張しやすい人には「小建中湯(しょうけんちゅうとう)」などがよく使われているそうです。
「小建中湯や抑肝散は子どもの精神安定の為にも処方されています。苦くない漢方薬や、赤ちゃんから飲めるものもあります。母児同服といって、親子で同じ漢方薬を服用することも場合によってはおすすめしています。子どものストレスが親に伝染したり、親が感じているイライラを子どもが察知したり…。身近な存在であるほど、お互いに影響し合うことが多いんです。だからこそ、専門クリニックでの診察が重要になってくるというわけです」
また漢方薬は体に負担が少ないと言われていますが、飲み合わせや体質によっては副作用が起こることもあります。自己判断で中身を混ぜ合わせたりするのは危険なので、注意が必要です。
「漢方薬は天然物がベースになった生薬が混合されたものなので、西洋医学のいわゆる化学薬品を飲むのに抵抗がある人にはオススメです。例えば、よく眠れないけれど睡眠導入剤や安定剤はちょっと怖いという方は、医師の診察を受けたうえで、必要に応じて漢方薬で治療していくことも可能です」
楽しく子育てできるように、ゆとりや気持ちの余裕を持つことが大事
漢方医学では足りないものは補い過剰なものは減らしバランスをとることを考えます。漢方は無理やり疲れをとりテンションを上げるのではなく、その人を正常な状態に戻すよう作用します。あなたが今の日常に疲れやストレスを多大に感じているのなら、やるべきことをただこなすだけで精一杯になってしまっているのかも。長い目で見れば、子育てに追われる期間は意外と短いもの。本来、子どもと過ごす時間はとても貴重で楽しいはずです。気持ちを整え、ほんの少しでもゆとりを持って過ごすために、漢方はママの強い味方になってくれそうです。
玉木優子先生
東京・自由が丘のたまきクリニック院長。西洋医学と東洋医学を融合させ、心療内科を中心に保険診療による漢方薬処方などを行なっている。
<たまきクリニック>
東京都目黒区自由が丘1-7-14 ドゥーブルビル3F TEL 03-5731-7216
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