2018.07.28
不妊についてを考える。不妊とはいったい何か?不妊治療についての情報も交えながら不妊症についてをまとめてみました。
不妊症という言葉が最近急に気になり始めた・・そもそも「不妊」ってどんな状態のことをいうの?
結婚して、好きな人との穏やかな暮らしが始まって、仕事も順調で、でもなんとなく落ち着かない……互いの両親も、周囲の人々も、「そろそろ赤ちゃんは?」と訊きたそうなそぶり。
そんなとき、ふと「不妊症」という言葉が気になったことはありませんか。日々忙しく生活しているとあっという間に時は過ぎてしまい、同じぶんだけ年齢も重なっていきます。
最近は妊娠・出産に対する関心も高まっており、多くのカップルが事前に「不妊の可能性」や「よりよい環境での妊娠」についてインターネットを中心に調べています。たとえば「葉酸を事前にたくさん摂っておいた方がいいらしい」「男性なら亜鉛不足は良くないらしい」など、さまざまな情報をチェックしています。
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妊娠を意識する年齢の女性の多くが、「不妊」について気にしていることがわかりますね。
ではそもそも不妊って、どんな状態のことなのでしょうか。
不妊症に悩む人は3組に1組という日本の現状
不妊は、日本産科婦人科学会によって「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないもの」と定義されています。
一定期間の実質的な時間は、数年前まで2年とされていました。でも現在では1年になっています。つまり、赤ちゃんが欲しいと夫婦で願ってから1年経っても授からない状態、それが「不妊」です。
日本のカップルのうち、3組に1組は「自分たちは不妊症かもしれない」と悩んだことがあるというデータがあります。そしてその半数、6組に1組が、実際に不妊治療を受けているのです。
先ほど「1年間赤ちゃんができない状態が不妊」とご紹介しました。でも、もっと早く対策をスタートするカップルもいます。
女性に子宮内膜症や生理不順、卵巣嚢腫、子宮筋腫など女性器系の病気がある場合や、男性に大人になってからの高熱の経験など、精巣の機能に不安がある場合は「もしかしたら私たちは赤ちゃんができにくい体質かもしれない」と考え、産婦人科を訪ねることも少なくないようです。
平均初婚年齢の上昇も不妊の原因の1つ
前項でご紹介した不妊の原因の中に、男女ともに「老化」が入っていることに気付いたでしょうか。
男女ともに、高齢になってから妊娠を希望することも不妊の原因のひとつとなっており、その割合は少ないものではありません。年齢を理由に不妊治療を断念するカップルもたくさん存在し、高齢での妊娠を選択する人の増加、不妊や少子化などに大きな影響を与えているとされています。
現在、日本産科婦人科学会では、35歳以上の初産について「高齢出産」と呼んでいます。ひと昔前までは30歳以上の初産が高齢出産と呼ばれていましたが、現在は結婚年齢が30歳を超えています。そのため、35歳からの出産が「高齢出産」と呼ばれるようになりました。
国際規格では35歳以上の初産に加え、経産婦さんの40歳以上の出産を高齢出産と呼んでいます。
なぜ「高齢出産」と呼んで一般的な出産と差別化しているかというと、それだけリスクが高くなるからです。妊娠自体しにくくなってくるとともに、男女とも体力や精力などが衰え始めます。ともに健康であれば出産することは可能ですが、不妊に悩むカップルの数も増えてくるのです。
ではなぜ高齢での妊娠に踏み切ろうとするカップルが多いのでしょう。
近年、平均初婚年齢が上昇していることは、ニュースなどで見たことがあるのではないでしょうか。2017年の男性の平均初婚年齢は31歳。女性は30歳というデータが出ています。
約40年前の1975年には男性が25歳、女性は24歳でした。しかし2000年には男性が28歳、女性は27歳となり、2006年には男性が30歳を超えます。そしてついに女性も30歳を超え、男女ともに「平均的に30歳前後で結婚する」時代が到来しました。
平均初婚年齢が高くなっている理由は、いくつか考えられます。
・女性の社会進出が盛んになり、社会的に自立している人が増えた
・雇用形態の多様化で収入に高低差ができ、結婚する経済的余裕のない人が増えた
・価値観が多様化し、結婚する人生を選ばない人が増えた
・医学の進歩とともに高齢出産が多くなり、そのため結婚に焦りを感じなくなった
それぞれ「あー、わかるわー」と思われるのではないでしょうか。社会的に自立し仕事に打ち込んでいる女性は、誰かに扶養してもらう必要がありません。また自由な時間が多いほど、仕事にかける時間も増えるので、結果的に出世に結びつきやすくなります。
その一方で企業間、正社員と派遣社員など、収入には大きな高低差がつき、家族を扶養する余裕はもちろん、引越しや結婚式などの費用が用意できない人々も増えています。男女共働きで結婚後も暮らしていければよいかもしれませんが、時代がどんなに進んでも出産をするのは女性です。いずれは女性が産休や育休をとって、世帯の収入がガクっと減ってしまう時期がやってきます。それを考えると不安で結婚できないという人が少なくない時代となっています。
また価値観も多様化しています。
「パートナーはいるけれど結婚はしない」
「ひとりで仕事に打ち込む」
「子どもは産むけれど結婚はしない」
「同性同士のパートナーなので結婚できない」
など、さまざまな人生模様が当たり前になってきています。個性的な人生を送ることは珍しいことではなく、自分の考えを貫いて生きることは当然の権利と認められるようになってきました。昔のように「一般的な」という言葉でくくれる人生を送る人が、少なくなっていると言えるかもしれませんね。
不妊症は原因がはっきりしていないこともあるため検査が重要
不妊と診断されたカップルのうち、11%、つまり10組に1組のカップルは「原因がわからない」というケースです。男性にも女性にも、不妊を引き起こす明らかな原因がないのに、なぜかなかなか妊娠しないというケースです。
そのほかにも、不妊を引き起こしている病気はわかっても、その原因がわからないということもあります。
原因がわからないと、治療ができるのか不安になりますよね。でも、現在ではさまざまな治療方法があり、さまざまな妊娠方法が研究され続けています。
産婦人科では原因がわかるまでさまざまな検査を行います。基本的な検査は「6大検査」と呼ばれています。不妊治療の最初の一歩です。
・基礎体温
・頸管粘液検査
・フーナーテスト
・子宮卵管造影検査
・経腟超音波検査
この5つが女性側の検査です。
女性の場合は月経周期に合わせて検査を受けなければなりません。排卵前に受ける検査・排卵期に受ける検査・生理中だと受けられない検査などいろいろあるので、だいたい1ヶ月ほどはかかります。仕事をしていてなかなか受診できないという女性の場合は、検査だけで何ヶ月もかかってしまうことがあります。不妊治療の負担は女性の方が重いとよく言われますが、検査ひとつとってもこんなに差が出てしまうのです。
次の章で不妊検査について詳しくまとめていきます。
不妊検査ってどんなもの?不安や疑問を解消して夫婦で受けに行こう
不妊症かもしれないと不安になったら、まず思い浮かぶのは「不妊検査を受けた方が良いのかな」ということではないでしょうか。不妊検査は、その名の通り不妊症かどうかを判別するための検査です。といっても、インフルエンザや他の病気のように、粘膜や血液を採っただけでは不妊かどうかはわかりません。
不妊検査とはどんな検査なのでしょうか。多くの人が不安に感じている不妊検査の実態と、不妊検査にかんする時間とお金の話、そして基本的な不妊検査の受け方、いつどこで受けるべきかなどをご紹介します。
不妊検査ってどこで受けるの?
不妊検査はどこで受けるのかご存知でしょうか。多くの方が産婦人科、と答えると思いますが、正解です。といっても産婦人科だけで行っているわけではなく、現在は不妊外来という不妊専門の治療を行っているクリニックもあります。不妊検査はどこの病院でも受けられるというものではなく、また自治体の健康診断などでわかる病気ではありません。
まずは婦人科系の病気の診断や検査ができる医師がいるクリニックを探さなければなりません。さらに婦人科系の検査には内診用の超音波検査機器など特殊な機器が使用されるため、産婦人科を訪れることをおすすめします。女性の不妊検査は長く時間がかかってしまうこともありますし、そのまま不妊治療に移行することも考えられます、口コミなどを参考に、通いやすく相性の良い医師やクリニックを探すとよいでしょう。
不妊検査は女性だけが受けるものではありません。男性側が受けなければ意味のない検査もあります。男性は産婦人科や不妊外来でも不妊検査を上受けることができます。男性が単独で検査を受ける場合は、産婦人科にはちょっと行きづらいですよね。そんな時は、泌尿器科や男性専門のクリニックなどでも検査を受けることができます。事前にクリニックや病院に連絡し、不妊検査を受けることができるかどうか確認しておくと安心です。
不妊検査の基本「6大検査」を詳しく解説
不妊検査には、基本の「6大検査」と呼ばれるものがあります。一般的なものなので、それぞれを詳しくご紹介します。
基礎体温
基礎体温は、朝起床する前、目覚めてすぐに身体を動かさずに測った体温です。普通の体温計ではなく、婦人体温計というメモリの細かい体温計で測る必要があります。今は管理アプリや体温計にデータが蓄積できるものもありますが、病院でチェックしてもらう時には昔ながらの紙に書いた折れ線グラフの方が見やすいそうです。
基礎体温表では、きちんと排卵が行われ、その後黄体ホルモンがしっかり分泌されているかなどの重要な情報を知ることができます。
基礎体温は少なくとも生理から生理までの1周期分は必要です。できれば2~3周期分合った方が診察に役立つため、できるだけ早く、できれば普段から基礎体温を付けておくことをおすすめします。月経前症候群が重い方などは、排卵の時期を知ることで不調の兆しをチェックすることもできます。
超音波検査
産婦人科で行う超音波検査は、内診と外診に分かれ、この場合は内診、つまり経腟超音波検査になります。膣に挿入する特殊な超音波検査機を使って、お腹の中から子宮や卵巣の状態を詳しく検査します。
卵胞がしっかり発育しているかどうかや子宮内膜の厚さを調べるほか、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの病気が隠れていないかチェックします。
子宮頚管粘液検査
子宮頚管という子宮の細長い部分には、子宮頚管粘液という粘液が分泌されています。精子が子宮へ泳いでいくことをサポートする粘液ですが、バイオリズムで粘液の状態や量が変化します。排卵の数日前に検査を行い、粘液の状態を調べます。粘液の状態から、卵巣の状態や排卵時期などを推測できます。
子宮卵管造影検査
子宮から卵管へと造影剤を注入して撮る特殊なレントゲンです。子宮に奇形がないか、卵管が詰まっていたり癒着していたりしないかなどが分かります。この検査で痛みを感じる人もいますが、卵管に造影剤を通すため通りがよくなり、この検査だけで妊娠しやすくなる人もいます。
フーナーテスト
3~4日間禁欲したあと、医師に指定された検査日の朝に性交渉を行ってクリニックへ行き、受ける検査です。子宮頚管にいる精子の動きをチェックすることで、妊娠のしやすさを確認します。検査のタイミングが合わない場合は、何度か受ける必要があるケースも出てきます。
精液検査
男性が受ける検査です。数日間禁欲したあと、マスターベーションによって採精します。精液の量をはじめ、精子の数や奇形率・運動率・どのくらい質の良い精子がいるかなどを検査します。
これが基本の6大検査と呼ばれるものです。病院によっては必ずしもすべてを行うわけではありません。またすべての検査が1日で終わるわけではないので、だいたい1ヶ月、タイミングが合わないと数か月間通って検査を受けるケースもあります。その他に、必要であればさまざまな検査を行います。次項ではその他の検査をご紹介します。
基礎検査以外のさまざまな検査
クリニックや病院によっては、6大検査のほかにもさまざまな検査を行っています。
通気検査
子宮卵管造影検査の代わりに炭酸ガスを卵管の中へ通し、卵管の詰まり具合などをチェックする検査です。やはり卵管の通りが良くなり、妊娠しやすくなるメリットもあります。
血液検査(ホルモン検査)
血中のホルモンを調べるための血液検査です。
卵巣から分泌される卵胞ホルモンと黄体ホルモンが、排卵や月経などをつかさどっています。これらのホルモンの働きのほか、甲状腺系のホルモンや、性腺刺激ホルモンなどの検査も行います。
抗精子抗体検査(血液検査)
何度かフーナーテストを行っても良い結果が出ない場合に行う血液検査です。女性の身体に精子を外からの侵入者として攻撃する抗体があると、精子をうまく受け入れることができません。そのため、抗体の有無をチェックします。
尿検査
尿の中に出る黄体化ホルモンをチェックすると、排卵時期を予測できます。
クラミジア・感染症検査
クラミジアなどの性感染症などがないか調べる検査です。
ほかにも医師の判断でさまざまな検査を行う可能性があります。最初に受診するときに、不妊検査についてクリニックがどのような考えを持っているか、きちんと説明を受けましょう。
不妊検査は夫婦で受けましょう!
不妊検査は、夫婦で受けることが大切です。女性の方がたくさん検査を受けなければならないのですが、WHOの調査では、男性にも不妊原因がある夫婦は全体の5割近くにのぼります。女性だけが検査を受けても、男性側の不妊原因の有無や特定ができません。
また不妊検査を夫婦で受けることにはいろいろなメリットがあります。まず、最初に一緒に検査や不妊・不妊検査に関する説明を受けることで、これから長く通うことになるかもしれないクリニックの方針を夫婦で共有することができます。妻が「この病院はちょっと合わないな、ここで不妊治療はしたくないな」と感じた時も、その気持ちを夫に伝えやすいですよね。
また、万一「不妊ですね。治療が必要です」と診断を告げられた時、ひとりでは茫然としてしまったり、パニックになったりして冷静に話を聞くことができない場合もあります。そんなとき、二人で話を聞くことで、今後必要になる検査のことや、不妊治療の方針・計画など、医師と冷静に話ができる可能性が高くなります。
なにより、不妊だと告げられた時の気持ちを共有することで、これから互いに励まし合い、頑張ることができるようになるでしょう。二人のきずなを強めるためにも、不妊検査は初回と、検査結果が出る時は夫婦でクリニックを訪れることができると良いですね。
といっても、男性と女性では受ける検査の量が違うため、結局女性の方が何度もクリニックに通わなければならないケースがほとんどでしょう。検査の中には痛い思いをするものや、性交渉後そのままの膣の中を見られる検査など、女性にとってつらいものもいろいろあります。男性はその気持ちを慮って、メールでも良いので「一緒に行けないけれど、気持ちはひとつだよ」という思いを伝えてあげてくださいね。
不妊治療とはいったいどんなことをするのか段階的に知っておこう
不妊治療と聞いて、みなさんはどんなイメージを抱くでしょうか。「時間がかかる」「お金がかかる」「痛みや不調を我慢しなければならない」など、怖いイメージがある方もいるでしょう。確かに人によっては時間がかかり、お金もかかりますし、痛みをともなう治療もあります。
でも不妊治療には段階があり、すべての治療が高額なものというわけではありません。さらに助成金などもあり、社会の理解も進んできています。今回は不妊治療についての詳しい知識と、それを乗り越えるための夫婦の協力の仕方などをご紹介します。
不妊治療の基本について詳しく知ろう
不妊治療の第一歩は、夫婦で検査を受けることです。検査を受けなければ不妊の原因は分かりません。検査を受けることで原因がわかることもありますし、検査自体が女性の卵管の詰まりなどを改善し、それだけで妊娠可能になることもあります。基礎体温を付け始めることで排卵の時期がわかるようになり、妊娠しやすいタイミングがつかめるようになることもあります。
不妊検査はまず基本的な6大検査というものを受けることが多いでしょう。
・基礎体温…朝一番、動く前に毎日体温を測る家庭での検査
・子宮卵管造影検査…子宮から卵管へ造影剤を通すレントゲン検査
・子宮頚管粘液検査…精子の運動を助ける子宮頚管粘液の検査
・経腟超音波検査…特殊な経腟検査機器で子宮や卵巣の状態を診るエコー検査
・フーナーテスト…性交後の精子の動きを見る検査
・精液検査…マスターベーションで採取した精液中の精子の様子をみる検査
男性側の検査はひとつだけですが、女性側は5つあり、バイオリズムに合わせて検査する必要があるため1ヶ月以上はかかります。タイミングによっては2~3ヶ月かかってしまうこともあります。さらに詳しい状態を知るために、血液検査やホルモンの検査、感染症や性病などの検査も行われます。
検査で女性器や男性器にかかわる病気、ホルモン異常などが見つかった場合や、問診で性交困難などが発見された場合は、それらの治療からスタートします。女性の子宮筋腫や卵巣嚢腫などの病気や、男性の精索静脈瘤、EDなどの病気は不妊症の原因になることがあります。それらの病気の治療を行うことで、妊娠しやすくなるケースもあります。
またタイミング法を試してみることも多いでしょう。排卵の時期を正確に測り、そのタイミングに合わせて性交を行うという方法です。何度かタイミングを合わせても妊娠しづらい場合は、排卵誘発剤など薬の力を借りることもあります。この段階で妊娠するカップルもいます。
しかし、治療が完了しても女性側が妊娠しづらかったり、男性側の精子の状態が良くならなかったりすることもあります。その場合、最初に行われるのは「人工授精」という方法です。
人工授精
人工授精は、採取された夫の精液の中から、運動率の良い成熟した精子を回収し、女性の排卵後、妊娠しやすい時期にチューブなどを用いて女性の子宮内に送り込む方法です。ほとんど自然妊娠と変わらない方法とされています。この方法で妊娠したカップルのうち8割は、7回目以内に妊娠するというデータがあります。平均的には3~5回で妊娠することが多いようです。
人工授精でも赤ちゃんが授からなかった場合は、生殖補助医療と呼ばれる「体外受精」「顕微授精」へと移行していきます。
体外受精
採卵手術を行って排卵前の卵子を取り出し、やはり採取した精子を体外で受精させ、2~5日ほどかけてある程度発育し、「胚」という状態になったら、女性の胎内に移植します。すでに世界で400万人以上の子どもが体外受精で誕生しており、珍しい治療ではなくなっています。
顕微授精
体外受精を行っても受精しない場合、顕微授精に移行します。状態の良い精子と卵子を選び、精子をガラス管の先に入れて、卵子の中に注入する方法です。実はこの方法でも受精率は5割から7割とされています。かなり高度で特殊な不妊治療と言えます。
不妊治療専門の神谷レディースクリニックによれば、生殖補助医療によって年間4万人以上の赤ちゃんが生まれています。成功率だけを見ればそんなに高くないと感じるかもしれませんが、実際に多くのカップルが我が子を胸に抱く喜びを手に入れているのです。
不妊治療が有効なのは何歳くらいまでなの?
生殖補助医療とされる体外受精や顕微授精を何度行っても、受精しなかったり、移植した胚が育たなかったりして、妊娠できないことも少なくありません。その原因のひとつは、精子と卵子の質の低下です。そしてその大きな要因のひとつが、加齢です。精子も卵子も、加齢によって老化するのです。
精子も卵子も非常に細胞分裂が盛んな細胞です。そのため健康で元気な精子と卵子を得るためには、細胞の新陳代謝やDNAのコピーなどが正常に行われる必要があります。しかし活性酸素や糖化などによって、人の身体は傷つきダメージを受け続けます。それが老化です。新陳代謝は時間がかかるようになり、DNAのコピーにもキズがつくなどさまざまなトラブルが起こり始めます。
女性は30歳を過ぎると、卵子が老化し始めます。男性も35歳を過ぎると精子に老化がみられるようになります。そしてどちらも40歳を過ぎると、卵子・精子・そして受精卵を育てる身体自体が老化し、妊娠しづらくなってしまいます。どんなに医療が発達しても、卵子と精子に「受精する力」「受精させる力」がなければ妊娠は成立しないのです。
そのため、不妊治療にはタイムリミットがあります。だいたい40歳を過ぎると成功率はかなり低くなってきます。日本生殖医学会によると、体外受精・顕微授精を行っても45歳以上になると妊娠の可能性はほとんどなくなってきます。つまり、不妊治療のタイムリミットは45歳までと言えるでしょう。
それでもトライし続ける人はいます。しかし不妊治療にはお金がかかり、体力も精神力も大きくそがれます。今度こそ赤ちゃんが授かっていますように、という願いが砕かれる瞬間は、どんな女性でも胸を引き裂かれるような思いを味わうのではないでしょうか。何度もトライするということは、この胸の痛みを何度も味わうということです。
不妊治療のなかでも生殖補助医療と呼ばれる体外受精や顕微授精は、非常に高額です。そのため、近年は条件付きですが助成金が出るようになりました。大きな条件のひとつが、「年齢」です。女性の年齢によって、助成金が受けられるかどうかが決まります。そのため、助成金を受けることができる年齢をタイムリミットと考える夫婦も少なくありません。次項では、不妊治療にかかるお金と助成金について詳しく見ていきましょう。
不妊治療にかかるお金と助成金について
不妊治療にかかるお金は自費診療が多く、クリニックによっても治療内容によっても大きな違いが出ます。ここでご紹介するのは、ごく一部の例に過ぎません。目安にして、通っているクリニックにあらかじめ料金を訊いておくと安心して治療を受けることができます。
人工授精…15000円前後~55000円前後
体外受精…10万~30万程度
顕微授精…45万~ 55万円前後
こうした不妊治療には、助成金が出るケースがあります。人工授精に関しては、東京都など多くの都道府県・市町村で、不妊検査・人工授精までの一般不妊治療に対して1回に限り、5万円までの助成金が出ます。
さらに体外受精と顕微授精に関しては、やはり多くの都道府県・市町村で助成金が出ます。
・東京都の場合…初回の助成上限30万円
・宇都宮市の場合…初回の助成上限45万円
不妊に関する特定治療支援は各都道府県・市町村によって限度額や適用される治療が異なります。男性不妊に関する手術に適用される場合もあるので、お住いの地域の官庁・役所の窓口で詳しく説明を聞いてみてくださいね。
また、多くの場合夫婦の年収や助成される回数・女性の年齢に制限があります。特に女性の年齢制限は「タイムリミット」と大きく関係します。多くが40歳~45歳の間にリミットが設定されているため、不妊治療は一刻も早くスタートすることをおすすめします。
不妊治療を早くスタートするためには、不妊検査を一刻も早く受ける必要があります。不妊検査を受けるタイミングには「早すぎる」ということはありません。結婚前にブライダルチェックという形で受ける人もいますし、30歳前後で不妊に不安をおぼえて検査を受ける人もいます。
検査の結果、子宮内膜症や子宮筋腫・卵巣嚢腫といった女性特有の疾患や、男性の精索静脈瘤などの病気が見つかった場合、まずその治療に時間がかかります。完治してからの不妊治療や妊活になるため、一日でも早く検査を受け、妊娠に向けて動き出すことはとても重要なことなのです。
今赤ちゃんが欲しいと思っていなくても、いずれ「欲しい」と感じる時がくるかもしれません。また、子宮頸がんなど思わぬ病気がひそんでいることもあります。夫婦互いの健康のためにも、まだ見ぬ未来の可能性のためにも、少しでも早く検査を受けましょう。
女性のための妊活のススメ!どんなことをすればいいの?
これまで不妊検査や不妊治療についてご説明してきました(記事はこちらから)。でも、実際にどんな生活を送ればいいのか、妊活のための暮らし方や、具体的な妊活方法が良く分からない……という方も多いのではないでしょうか。
そこで、女性のための妊活生活でおすすめしたい具体例をご紹介します。妊活中に身につけたい生活習慣や、食生活習慣、やっておくといい趣味や、妊活中は控えた方が良いことなどをご紹介します。
妊活おすすめ生活習慣
妊活中の生活では、どんなことに気を付ければよいのでしょうか。授かり体質へと変わっていくために、気を付けておきたい生活習慣や、やっておきたい事にについて考えてみましょう。
一刻も早く不妊検査を夫婦で受ける
これまでに何度もご紹介させていただいていますが、まずは妊活の前に夫婦で不妊検査を受けることが大切です。不妊検査を受けることで、どちらにどんな要因があり、どんな対策を集中的に行っていくべきなのかが分かります。
最初の検査は必ず夫婦で受け、最終的な検査結果も夫婦で受け止めましょう。夫婦で説明を受けることで理解が増しますし、冷静に受け止めることや、今後夫婦で話し合う際に同じ目線に立つことができるようになります。
定期的に夫婦で妊活について話し合う
夫婦で妊活について話し合ったことはありますか?まずは互いがどれくらい赤ちゃんを欲しいと願っているか、その温度差を知ることが必要です。どちらかの気合に押され、どちらかは引っ張られているだけというケースもあります。
妻は「どうしても赤ちゃんが欲しい」と思っているのに、夫は「別にまだいらない。夫婦の生活を楽しみたい」と考えているかもしれません。
そういう場合には、夫にいつくらいなら赤ちゃんを授かっても良いと思っているのかを明確化してもらいましょう。
さらに子どもが手を離れるまで、子どもの進学先や性格にもよりますが、長くて高校卒業、短くても中学生くらいまで、10数年かかります。
その時、夫婦の財政状況はどうなっているのか、その先に大学の学費も支払っていけるのかも考えなければなりません。
さらに3歳くらいまでの育児は体力勝負。今より数年後、もっと体力が衰えた状態での子育ては想像を絶するかもしれません。
こういった「子育てのリアル」について話し合い、不妊検査の結果が良かったとしても、タイムリミットまであまり時間は残されていないことを実感してもらいましょう。
子育てのシミュレーションをしてみる
子育ては育児雑誌やテレビ番組で取り上げられているほどキレイ事ばかりではない、ということは近年知られるようになってきました。
特に夫の仕事が忙しすぎてまったく育児に参加できない「ワンオペ育児」や、頼る人がいないまま、一日中誰とも顔を合わせず声を掛け合うこともない孤独な「カプセル育児」が問題視されるようになっています。
行政も動きつつありますし、ママ同士のつながりでこういったママのお悩みを解決しようとする動きもありますが、それでも充分救われているとは言えない状況です。
こういった状況を防ぐためにはまず、子育てのシミュレーションを夫婦で行っておくことが大切です。
妊娠したら妻の仕事はどうするのか、夫は出産に立ち会うのか、育休は夫婦でどれだけ取り、夫はどれくらい育児に参画するのかなど、きちんと話し合っておくと、妻も妊娠・出産に不安を感じずに済むようになります。
軽い運動をする習慣をつけよう
冷え症に悩む女性は大変多く、その原因は不妊の原因とも関わっていると考えられています。冷えは体内の血行が悪くなり、末端まで行き届かない状態で、さらに深部体温も低下していると考えられます。女性は貧血になりやすく、それも原因のひとつでしょう。また骨盤のズレや下半身の血行の悪さによるむくみなども、妊活の大敵といえます。
こうした冷えは食べ物やサプリでアプローチする方法もありますが、これまでにいろいろご紹介してきましたので、ここでは生活習慣でアプローチする方法に触れていきましょう。
みなさんは定期的に運動をする習慣がありますか。お仕事が忙しい方や、二人目不妊でお悩みの、子育て中の女性などは忙しすぎてできないという方も多いでしょう。
でも、筋肉を動かさなければ体温はなかなか上がってくれません。逆に筋肉を一定期間動かすことで、血行が良くなり、ある程度体温の上昇が続きます。筋肉は代謝を促す役割ももっていますし、血管のポンプの役割もあります。最初はふくらはぎを伸ばしたり縮めたりというストレッチでもよいので、生活に取り入れていきましょう。
また少し時間に余裕が出てきたという方は、代謝アップと筋肉を動かすこと、深い呼吸で隅々まで血行を良くすることを目指してヨガなどをスタートしてみてもいいですね。
冷えは薄着によって悪化することもあります。また冷房のかかりすぎも冷えの原因になります。特に下半身は靴下をはく・お腹を出さないといったことを守り、冷えからしっかり守りましょう。
夫婦の愛情をもっと高めるコツ
夫婦の愛情がなければ、妊活はうまくいきません。でも日本人はなかなか相手に「愛している」と伝えることが難しいですよね。
そこで、毎日の挨拶から始めてみましょう。朝起きたら必ず目を合わせて「おはよう」を言い、出かける時も目を合わせて「行ってらっしゃい」「行ってきます」を言うようにします。こうした挨拶を続けることで、互いに目を合わせ、近づくことが恥ずかしくなくなってきます。
だんだん挨拶に慣れてきたら、挨拶をするときに軽く手に触れるなどボディタッチを増やしていきます。そして今度は帰宅時や感謝を伝えたい時などに「ハグ」をしてみましょう。ハグに慣れたら軽いキス、という風に、少しずつボディタッチを増やしていきます。
現在、日本ではセックスレスが社会問題になっています。若い世代でも仕事のストレスなどでレス状態が続いているというカップルは珍しくありません。
いきなり性行為に及ぶことは難しくても、挨拶、ボディタッチ、ハグ、キスと段階を踏んで相手に触れることに慣れていくと、触れ合うことすら難しいという状態を避けることができます。
不妊治療では、女性の排卵に合わせて機械的なセックスを行わなければならないこともあります。その気分ではないのに「しなければいけない」と考えると、どうしても萎えてしまったり、面倒に感じてしまったりしますよね。
でも普段からボディタッチが当たり前になっていると、相手に態度で「大好きだから、触りたい」ということを伝えられるようになってきます。
「排卵日だからセックスをしなければならない」ではなく「たまたま仲良く触れ合っていたら排卵日だった、ちょうどいい」にシフトしていければよいですね。
不妊治療の限界と妊活中止を決める時…二人で今後を話し合う
不妊治療をやめるとき
不妊治療や妊活をやめるとき、私の知人は夫婦でよく話し合ったそうです。そしてお互い仕事との両立が難しい、このままでは二人とも共倒れになってしまうということで、不妊治療をストップしたそうです。
不妊治療を「やめよう」と感じる瞬間は、カップルによって、そして男女それぞれによって違ってくるでしょう。男性が妻のつらい様子を見続けることに耐えられなくなって「やめないか」と持ち掛けることも、女性が更年期障害と不妊治療のダブルの重荷に押しつぶされそうになって「もう限界かも」と泣き出してしまうこともあるのではないでしょうか。
不妊治療をやめる「時期」は、夫婦が決めることです。もちろん夫婦で決断できないときは、主治医や両家の両親など、夫婦のことを考えてくれる信頼できる人に助言をお願いしても良いでしょう。どうしても思いきれないなら、身体と心、資金に限界がくるまで続けても構わないのではないでしょうか。いずれにしても、他人が「もうやめなさい」と止めることではありません。
最も悲しいのは、不妊治療に関することで夫婦の関係が崩れたり、両家の意見が割れたりして、夫婦が互いに愛情を失ってしまうことです。愛情の証として我が子が欲しかったはずなのに、そのための努力に疲れていつしか愛情を感じられなくなってしまったら、意味がありませんよね。
不妊治療に迷いを感じたり、不安や疑問、相手や医師への不信感を覚えたり、両家の両親からのプレッシャーなど、とにかく「つらい」と感じることがあったら、二人でたくさん話しましょう。答えが出ず、愚痴の言い合いで終わってしまっても、慰め合って終わっても良いのではないでしょうか。ひとり溜め込んで、大好きだった人への愛情を失うくらいなら、どんどん話して互いの思いをもっと理解しましょう。
「諦める」のではなく「二人で生きる」選択
不妊治療は「諦める」のではありません。諦めるのではなく、「今後の人生を、二人で生きていく」選択をすることです。
子はかすがいだけれど、愛情が無い夫婦をつなぎとめることは難しい
不妊治療を続けるうちに仲違いが続き、愛情を感じなくなってしまったけれど子どもだけは欲しい……そんなカップルもいます。でも、子どもが欲しいからという理由で、愛情のまったくない二人が性交渉だけを行い、赤ちゃんを授かったとしても、冷戦状態が続いていたら赤ちゃんにとって幸せな家庭とは言えません。
赤ちゃんさえ生まれれば夫婦の仲は元に戻ると考えている方がいるのなら、それは間違いです。赤ちゃんが生まれた後に、夫の育児への協力不足などが原因で夫婦仲の悪化が急速に進む「産後クライシス」も問題となっています。夫婦仲は夫婦で愛情を育てようと気持ちをひとつにし、互いに歩み寄る努力がなければ修復できません。赤ちゃんを産んだからといって、すべてが丸く収まるわけではないのです。
だからこそ夫婦でたくさん話し合い、触れ合うことをやめずに愛情を育て続けることがとても大切です。そのうえで赤ちゃんを授かることができれば、ラブラブで互いを尊重し合う両親がいる家庭は、赤ちゃんにとってとても素敵で幸せなゆりかごとなるでしょう。全身に愛情を浴びて成長し、安心して巣立ちの日を迎えることでしょう。
そして、もし不妊治療をやめると二人で決める日が来た時、夫婦の間の愛情が大きく育っているのであれば、「不妊治療をやめる」決断はそのまま、「二人の人生を生きていく」決断となります。
妊活を「二人の幸せ長生き活動」へ
そして不妊治療をやめて夫婦二人で生きていく決断をしたとしても、妊活をやめてしまう必要はありません。妊活は、栄養バランスのよい食べ物を三食きちんと食べたり、夫婦で軽い運動習慣をつけたり、タバコやお酒をつつしむなど、健康に良い事ばかりです。また夫婦で触れ合う機会を増やすなど、夫婦の愛情を育てることにもつながります。
不妊治療をストップし、妊活の必要性を感じなくなったら、今度は「二人で幸せに長生きする活動」として続けてみてはいかがでしょうか。二人の幸活のはじまりです。夫婦二人で生きていくとき、互いの健康状態は何よりも大切なことです。そして、健康な身体と冷めることのない愛情を維持していれば、もしかして近い未来に思わぬ奇跡が起きるかもしれません。ヒトの身体には、不思議なことが起きるものです。
そんな奇跡が起きても起きなくても、愛する人とずっと一緒に仲良く暮らす人生はとても幸せで穏やかなものではないでしょうか。この夫婦で生きていくと決めたなら、どうすれば健康に、優しい気持ちで生きていくことができるのかを、夫婦でたくさん話し合ってみませんか。
【不妊(不妊症)について】
どういう状態を不妊症というの?(1)
どういう状態を不妊症というの?(2)
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